実は知らない?!ストライクゾーンの実態
ストライクゾーンといえば、『公認野球規則』によって定められた↓の画像のものを示すと思っている方がほとんどだと思います。
先に申し上げておきますと、これは”机上”のストライクゾーンで、現場で実際に使われているストライクゾーンとは異なります。
「いやいやいや、そんなはずないでしょ」
「え、どういうこと?」
そういった声が聞こえてきそうですので、この記事ではそんなみなさんの頭の上に浮かんだ「?」を解消すべく、ストライクゾーンの”実態”を解明してまいります。
ストライクゾーンの歴史
ストライクゾーンの定義
冒頭でご紹介した画像にみられる、一般に知られる”五角柱”の「ストライクゾーン」の根拠は、ルールブックにおいて以下のように定義されていることにあります。
ストライクゾーンの歴史と変遷
今ご紹介したのは、"今現在"におけるストライクゾーンの定義です。というのも、ストライクゾーンは時代とともに変化してきました。
野球というスポーツが生まれた当時、「ストライク」という概念は存在しませんでした。打者が自分の打ちたい投球にだけスイングを試み、3回空振り、かつ捕手がその第三スイング目の投球を捕らえればアウトになる、というルールでした。根拠は”最初の野球規則”として知られる、1845年に作られた『ニッカー・ボッカー・ベース・ボール・クラブ・ルール』の第11条にあります。
見逃しても「三”振”」、英語でも「”strike(=打つ)” out」)」と未だに呼ぶのは、元々三振がバットを振る行為なしには成り立たなかったことに端を発すると考えられます。ちなみに当時の原典には「strike-out」ではなく、「hand-out」と記されています。
余談になりますが、後段の「捕えられなければフェアとみなされ、打者は走らなければならない」は”振り逃げ”の直接的なルーツになります。なお、英語では"dropped third strike(捕球されなかった第三ストライク)"と呼ぶので、現在ではバットを振らなくても「”振り”逃げ」が成立しますが、このルールができた当初の「振り逃げ」という表現は適切だったことがわかります。
話が少し脱線しましたが、この三振のルールだと、打者のさじ加減次第では永遠に試合が進まないことも理論上は可能となります。無意味に試合を遅延することはなくても、例えば雨が降っている場合や日没が関わってくる際にリードしているチームがこのルールを悪用し、試合を故意に遅延させて勝とうとするシチュエーションは十分に起こりえます。
これを受け、全米野球選手協会(National Association of Base Ball Players)は1858年に採用した規則、『RULES AND REGULATIONS OF THE GAME OF BASE BALL』の中でこのような行為を取り締まるため、試合を遅延させる目的で打者が”好球”をあえて打とうとしていないと審判員が判断すれば警告が発せられ、それでもなお同様の行為を打者が続ける場合、スイングしなくても審判員がストライクと判定する、としました。
”好球”とは「good ball」の翻訳で、「いい投球」と訳していただいても構いませんが、あえて「いい”ボール”」としなかったのは、ストライク・ボールの区別と混同しないためです。ただし原文では「ball」となっており、これはこの1858年当時はまだストライク・ボールという意味合いでの「ボール」という概念が存在していなかったため。現在はこの区別をはっきりさせるため、投球はルールブックにおいて「pitch」や「pitched ball」と表現するようになっています。
それから5年後の1863年に、今度は守備側が同様の目的で投手があえて打者が打てる"fair balls"を投げないときに投手を罰するルールが作られました。ここで初めてストライク・ボールにおける「ボール」という概念が登場します。それと同時に現在でいう「四球(フォアボール」のルールも誕生しました。当時はボールが3つで打者には一塁が与えられていたので、当時の言葉を使えば「base on balls」となります。ちなみにこの用語は今でもルールブックに残っていますが、口語的には「ball four(四球、4つのボール)」もしくは「walk(アウトにされるおそれなく与えられた一塁に”歩いて”進むことから)」と表現されることがほとんどです。
ただここで、もうお気づきの方もおられると思いますが、”好球”や”妥当な投球(fair balls)”とは非常に曖昧な表現であり、ともすると球審が打者に対し「ストライク」と判定するのも、投手に対して「ボール」と判定するのも、その基準が曖昧なものであった、ということになります。
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