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【解説】守備側の優先権利 -Fielder Right of Way-

※訂正箇所のご説明

2024年2月8日に投稿した内容において、「送球に対する守備行為」に「守備側の優先権利」が適用されると読み取れる文章・構成となっておりました(画像↓)。

訂正前
訂正後

また構成については「送球に対する守備行為」を「野手と走者の接触」の中の「成り行き『ナッシング』となる例外」の項目の一部として再編しました(画像↓)。

野球はサッカーやバスケットボール、アメリカン・フットボール、ラグビー、(アイス)ホッケーやラクロスなどのスポーツと違い、攻撃側(オフェンス)と守備側(ディフェンス)が共有するスペースが限られるため、上記に挙げたような双方の接触が頻繁に起こるスポーツとは一線を画します。
しかし一方で、カテゴリー上はサッカーやバスケットボールと同じ「リミテッドコンタクトスポーツ」に位置付けられるため、テニスや卓球、バドミントンやバレーボールなど、互いが自陣から出ない、いわゆるノンコンタクトスポーツとも異なります。

野球においてオフェンスとディフェンスで接触が起こるのは、オフェンスとディフェンスの”共有スペース”である走路(ベースパス)上ですが、ルールを理解する際にこの走路をオフェンスの”陣地”と捉えると誤解が生まれてしまいます。というのも、走者が走路上にいてもそこでディフェンスが守備行為をしていれば守備側優先となるためです。

そのため感覚としては、オフェンスは走路をディフェンスから”間借り”をしていると覚えておくといいかもしれません。あくまでフィールドの土地所有権は守備側が有し、守備側がその土地を使うのに必要なときは借用している攻撃側は守備側にその土地を譲らなければなりませんが、守備側にその土地を使用する妥当な理由がないときには攻撃側がその間借りしている部分の土地を使う権利が与えられている、といったところでしょうか。

Photo by Eric Espada/Getty Images

では前置きが長くなりましたが、「守備側の優先権利」について具体的な例を用いながら解説してまいります。


打球に対する守備行為

1アウト走者二・三塁、打球は遊撃手方向へのゴロ。

映像のように、打球に対して守備行為をしている野手に走者が交錯すれば6.01(a)(10)を適用して走者を「守備妨害」でアウトとします。

ルールの根拠

(3) 走者が、送球を故意に妨げた場合、または打球を処理しようとしている野手の妨げになった場合。
ペナルティ 走者はアウトとなり、ボールデッドとなる。〔6.01a妨害に対するペナルティ〕参照。

『公認野球規則』5.09(b) 走者アウト

(10) 走者が打球を処理しようとしている野手を避けなかったか、あるいは送球を故意に妨げた場合。

『公認野球規則』6.01(a) 打者または走者の妨害

打球と野手との距離

冒頭で申し上げた通り、たとえ走者が走塁行為の最中に走路上にいたとしても、打球に対しては守備側優先となるため、「守備妨害」として守備行為を妨げたにアウトを宣告します。

またこの際、ボールと野手の距離は関係ありません

守備妨害発生時の妨害行為とボールの位置関係

常識的に見てその野手がその打球に対する守備者と認められれば、その野手には守備行為を終えるまで優先権利が与えられます。こちらは1アウト走者一塁、打球は一塁手への飛球。

フライの場合はある程度打球がどのあたりに落ちてくるかを把握しないと「守備行為にある野手」を認定できませんが、もし守備行為をするに相応しい野手が走者と交錯したりしてその守備を妨げられたら、たとえボールが空中にあっても「守備妨害」が宣告されます。

送球は「守備行為」に含まれるか

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