日本で一番詳しいロボット審判(ABS)解説①
2021年より、アメリカ・マイナーリーグで試験導入が始まった通称”ロボット審判”こと自動投球判定システム(Automated Ball-Strike System、ABS)。本記事ではABS導入に至った経緯と実際の運用方法、それにこれまでの進捗状況を、ときどき実体験に基づく私の意見をはさみながらみていきます。
ABS導入に至った経緯
野球人気の復活
先日の記事でも説明しましたが、ピッチクロックを皮切りとするあらゆる抜本的な改革は”野球人気の復活”という目的に端緒をなします。
2023年以前から取り入れられていた「マウンドに行く回数の制限(5.10m)」や「スリーバッターミニマムルール(5.10g)」は特に試験運用する必要がなかったため、先駆けとして2019年から導入されています。これらのルールができた背景には、MLBがこれまで行ってきたアンケート調査があり、その中でファンが「最も退屈な瞬間」として挙げたのが「マウンドビジット」と「投手交代」でした。
そして、同じ調査の中で浮き彫りになったのが、近年の野球におけるプレースタイルの変化(セイバーメトリクスの導入における出塁率重視や「フライボール革命」など)が奇しくも、野球人気の陰りが見え始めた時期とオーバーラップしていたことでした。
とはいっても、各チームが野球規則の第1章「試合の目的」にある
にならい、今ある野球で最も勝利を追求した形が結果として現代の潮流になったため、
「1試合2時間半で終わっていた60年代の野球スタイルに戻しなさい」
「ファンが見たがっているからどんどんバットを振って、盗塁も積極的にしなさい」
といったところで、それはチームが確立してきた理論に反するわけです。なのでこの流れを変えるには、60年代のプレースタイルを呼び戻すため、もっとファンが見たがっているプレーが起こるようにするために根本的に野球のルールを変えるしか方法はなかったのです。
そこで、かつての試合のペース(ペース・オブ・ゲーム)を再現するために考案されたのが「ピッチクロック」、そしてファンが観たいアクションを引き起こすために考案されたのが「大きいベース」「シフト制限」そして今回解説する「自動投球判定システム(ABS)」なのです。
ABSに課せられた使命
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