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ジョン・コッターによる変革を加速させる8ステップのプロセス

「変革をリードする8ステップのプロセス」をジョン・コッター氏が最初に書き上げたのが1996年。そこから時代は流れ、2018年になってこの8ステップは「変革を加速させる8ステップのプロセス」として公開されています。私が調べた感じ日本語で書かれている記事のほとんどは古いバージョンについて言及しているようです。この記事で新しい方の「変革を加速させる」8ステップを具体的に見ていきましょう。


1. 危機感を作り出す

変革は痛みが伴います。時間もかかります。なので、自分たちが変革しなくてはいけない状況にあることを組織全体の共通認識にしないと、必ず抵抗勢力にあいます。なぜなら、変革は少なからず既存の領域や権利に対しても変化を強いる(と思われる)からです。ですから、それすらも変える覚悟を求められるような「危機感」が変革のスタート地点として必要になります。この危機感は組織のトップから伝えられることが大切ですが、当然その層だけが持っていればいい感覚ではありません。組織全体に広がる危機感こそ一丸となり変革に取組むきっかけになるのです。

2. 変革をリードするチームを組織する

8ステップの変革をリードするには、中心となるチームが必要です。よくありがちな構成として各部門の長を中心としたチームが組まれがちですが、異なるレイヤーや役割のメンバーがいると良いでしょう。なぜか。それは組織の異なるレイヤーと役割における幅広い情報を集めることが出来るからです。このチームがないことには、今までのヒエラルキー主導の方法に頼ることになりますが、それだけでは組織に変革をもたらすこては難しいでしょう。

3. 戦略的ビジョンと計画を策定する

変革の先のビジョンと、それを達成するための目標となるマイルストーンを設定し計画を作りましょう。ビジョンは滅多なことで変えるものではありませんが、ビジョンを達成するための計画は最初に決めたものが絶対、とはしないほうが良いでしょう。今は不確実性の時代です。良い戦略的ビジョンは以下のような特徴を備えています。

・伝播しやすい
・望ましい
・口頭でもイメージしやすい
・適応性がある
・実現可能である
・シンプル

人を動かすには、データや事実は大切ですが、それだけではいけません。人がどう感じるか、何に心を動かされるか、それを追求しながらビジョンを作りましょう。人々にとって大きなチャンスであることにもリンクさせ、心を動かし人々をモチベートすることで行動を促します。

4. 大人数の協力者を募る

組織レベルの変革を起こすには、組織を変えうる大人数が同じ方向に向かって行動する必要があります。そのためにはその変革に必要なレベルの大人数の協力者が必要です。協力者を募るには人々に指示をするのではなく、関わり行動をしていく選択肢を与えます。「やるべきこと」と「やりたいこと」がうまく交差するような機会を提供できるとよいです。もし協力者が集まってきたら、彼らの力を認めてエンゲージメントを高めることを欠かさないように。

5. 障害を排除し、行動を取れるようにする

変革の推進に際し、古いプロセスや規範などの障害は排除しましょう。メンバーたちが自らの境界を越え真のインパクトを生むため、リーダーたちは障害の排除に真剣に取り組むべきです。イノベーションとは、新たなアイデアを生み出すということ以上に既存の壁や障害を壊しそれらアイデアを実現することが重要となります。それら障害を排除するにはまず障害に気付かなくてはなりません。気付くTipsとしては、理想の組織やプロセスを明確にし今の自分たちと比較する方法や、「その方法はやったことない」や「それは以前うまくいかなかった」といった言葉に注目する方法があります。

6. 短期的な成功を積み重ねる

最終的な変革の成功ははるか先のゴールであることが多いです。結果が生まれない、あるいは生まれているのに実感がないとチームは疲弊してしまいます。短期目標と、それに対する小さな成功を測り共有し称え合いましょう。可能であれば、成功が明確かつ可視化なものにできると、周りの人々はそれを参考にし適応することで成功を伝播させることもできます。また短期的な目標を運営することでものごとがアジャイルに検証できるというのも大きなメリットです。

7. 加速を維持する

小さくとも成功を積み重ねていくことで、変革推進チームに対して信頼が生まれ、連帯が強化されます。ビジョンが現実になるまでは学びとカイゼンを続け変化のスピードを加速し続けることが大切です。Kotter先生いわく、加速を途中で止めてしまった時に再加速することは最初の時よりも難しいそうです。それを避けるためには、小さな成功を収めた後でも、最初のステップで共有した危機感をチームで再度見つめ直しましょう。最初に感じた危機感はそのような小さな成功だけではどうにもならないことを思い出すはずです。そして、たえず協力者を募り続けることで加速を続けましょう。

8. 変化を知り定着させる

ステップ1から7までは変化を生み出すためのステップでした。ステップ8はそこで生まれた変化がどういったものか正しく見つめ、定義し、組織全体に伝えながら根付かせることです。その変化が一時的なものだったり特定の人々の間にしか存在しないものではなく、組織の文化に組み込まれているかを意識しましょう。そのために組織レベルで文化についてのコミュニケーションが取れているかを確認することも怠らないようにしましょう。

まとめ

私はこの8ステップがすべての正解とは言いませんが、昨今の状況を鑑みれば変革のための1つの最適な選択肢な気がしてなりません。2025年の崖、新型コロナウイルスの状況、IT後進国などと揶揄される状況、これらはこの8ステップのファーストステップの危機感を抱かせるに充分すぎるぐらい大きな課題です。2025年の崖から飛び落ちるのか、飛び上がるのかはそのファーストステップをどう活かせるのかに懸かっています。変わるなら今です。

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Takahiro Ito
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