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マインドセットってなんで大事なの?

マインドセットが大事であるという話はよく聞きつつも、それがなぜ大事なのかを踏み込んで説明されることは少ないのではないでしょうか。この記事ではあらためてどういうところでマインドセットが語られているか、マインドセットがなぜ大事なのか、そしてどうマインドセットを育てていくべきなのかを考えて行きたいと思います。

マインドセットが語られている例

弊社でもアジャイル研修の中で "Don't just do Agile, be agile" というフレーズで説明をしたり、UXデザインの研修で一番伝えたいメッセージとして「みんなが喜べるモノづくりをしたい」を繰り返し伝えたりしています。

UXデザインで有名なGoodpatchの新卒UXデザイン研修では、研修の目当てという一番最初の説明のところで以下のような説明書きがあります。

UXデザインに活用できるたくさんの手法を理解することも重要ではあるのですが、Goodpatchの研修では手法を伝えることよりも、まずはその土台となる GoodpatchのUXデザイナーとして必要なマインドセットを身につけることを大事にしています。

UXデザイナーのマインドセットを学ぶGoodpatch流の新卒UXデザイン研修

他にもDevOpsでDisneyやInfoQを経てSalesforceで働かれているAgile Devops Transformation ManagerであるShaaron Alvares氏は講演の概要に「DevOpsとはマインドセットです」という一文を冒頭に持ってきています。

DisneyのShaaron Alvares氏のイベントの講演概要

他にも、アジャイルの原典であるアジャイルマニフェストは価値と原則で構成されていますがこれはほぼマインドセットと同義ですし、スクラムガイドにおいても「5つの価値基準(集中、公開、尊敬、勇気、確約)」という形でチームのマインドセットがどうあるべきかが定義されています。

なぜマインドセットが大事なのか

マインドセットについて触れられるときによくあるのは、「プロセスも大事だけどマインドセットを持って取り組むことが大事」という話です。これがどういう話なのか見ていきましょう。

This is Lean: Resolving the Efficiency Paradoxを参考に作成

マインドセットを頂点として、そのマインドセットから働き方の原則があり、原則に合致したメソッドが有り、それに紐づくツールやアクティビティが存在します。これらがチームの中でトップダウンで連なり共通認識とされていることで、さまざまなアクティビティも共通の目的のために実行することができます。

これがマインドセット起因ではなく、プロセスであるメソッド・ツール・アクティビティから始まってしまうと、そのプロセスらを実施する理由がプロセスごとに異なる起点に繋がります。結果、異なる原則やマインドセットに従って各メンバーが動いたり、そもそもベースとなるマインドセットが存在しない「やらなきゃいけないからやる」プロセスに成り果ててしまうのです。 

マインドセットとはチームの価値観とほぼ同義だと私は考えています。これがチームで共有されて共通であるということは、各メソッドやツールを通してチームが本当に実現したいことがチームの中で統一されている状態であるわけです。そうなれば、メソッドを通してうまくいかないところは自分たちで修正してマインドセットや原則を実現する方向に向き直ることができます。

逆を言えば、マインドセットがない状態だと、メソッドやツール単体で少しでもうまくいかないと「この方法は合わない」と早々に判断してしまったり、あるいはUXデザインやアジャイルなどを単なるメソッドやツールとしてしか見れないなんてことが実際に起きてしまっています。

共通のマインドセットを育てていくには

共通のマインドセットを育てていくには何ができるのでしょうか。私が考える最も大切なことは、チームや組織でありたいマインドセットを明文化し、しっかりと教育していくことです。明文化の方法はなんでも良いと思います。Mission Vision Valueや企業理念、プロダクトレベルであればインセプションデッキでも良いですね。大切なのはそれがメンバーに浸透しているかどうかです。そのために教育は継続的になされるべきですし、それらに対してチームが心から共感している状態を作らなくてはいけません。

そのために何ができるかは、自分たちで考えていく必要があります。なんて言ってしまうと「丸投げかよ」という声が聞こえてきそうなので私が自分の立場でやってきたことを一つ例としてあげておきます。それは、マインドセットの重要性を理解したら自分がそのマインドセットを体現する行動を取り、自分の手の届く範囲からそれを浸透させていくことです。あなたが経営層のメンバーでも無い限り会社全体をドラスティックに変えるということは難しいはずですし、たとえそうでも反発を生むケースは多いでしょう。なので、まずは自分が手の届く範囲、仕事のチームやワーキンググループ・委員会活動など業務以外でも良いので行動を始めることです。

あとは、その行動を全部自分の力だけでやりきろうとしないことも大切です。たとえばUXデザインやアジャイルなどは大きなカンファレンスやイベントなどが開催され最近ではオンラインのものも増えてきたので参加のハードルは下がっています。それに一緒に参加してくれる人を募ったり、あるいは同僚に刺さりそうな発表を共有するだけでも効果はあるでしょう。今までのやり方以外の発見があったりポジティブに課題に取り組んでいる人の話を聞いて勇気をもらうことは多いはずです。

文化はマインドセットの集合から成り、そのマインドセットを作るのは人であり自分であるということを認識することが大切です。この記事が自分のマインドセットを作る一歩の助けになり、組織のマインドセットを意識するきっかけとして役立つことを願っています。

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Takahiro Ito
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