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組織は人でできている

書籍『組織を芯からアジャイルにする』4章にある「私たちは人と人とのあいだで仕事をしている」というフレーズを目にした時、とある考えが私の頭の中で渦を巻きはじめました。大きな仕事や大きな組織になればなるほど、その中にある小さい単位の組織を単なるインプットとアウトプットを期待される箱として見てしまっていないかという考えです。

チームに一定のインプットをすれば、期待したアウトプットが出てくる。そんな状況をフィーチャーファクトリー(機能製造工場)と皮肉を込めて呼んだりもしますが、まさしくチームがこう扱われるのを見てきたり、私自身が扱ってしまっていたこともありました。そんな状態が何をもたらすか、それを避けるために私たちは何をすべきかを考えていきます。

この記事は以下のマガジンへの寄稿です。

フィーチャーファクトリーの問題

フィーチャーファクトリーはその名の通り、フィーチャーを生み出すことが成果と捉えられます。この考え方において、成果はアウトプットでしかなく、フィーチャーファクトリーの中にいる人は自分たちの作業がどういったアウトカムに繋がるかまで見えないことが多いです。また、フィーチャーファクトリーのチームは大抵の場合、外部からの指示を受けて作業を実施します。多くの場合はその際にその指示の意図はともかく、プロダクトとしての意図や期待するアウトカムが伝えられていることは稀です。コミュニケーションは大抵、「これをいつまでにください」という話に留まります。

この状態が続いていると、チームはどうなるか想像してみてください。おそらく、自分たちの作業は言われたことを納期までに実現すること、喜ばせるのは発注者、という視点を持つようになるはずです。ですが、プロダクトとしてはそれは単なる一部品のアウトプットでしか無いのです。その一部品を開発していく中で顧客視点やアウトカム思考が育たなかったり、プロダクトに対するオーナーシップを持つことが難しくなったりするでしょう。

他にも、機能を延々と開発していくことによる燃え尽き症候群のような状態や、技術的負債の無視、品質への影響など様々なことが考えられます。これらは、フィーチャーファクトリーの中で人が作業していることから目を背け、フィーチャーファクトリーとして見て扱うことで状況が悪化します。私たちは、こういった組織も人で構成されているという認識をまず持つことが大切です。そうすることで、その人たちがプロダクトにオーナーシップを持ち生き生きと働くにはどうすればいいかという考えを持つことができ、そもそもフィーチャーファクトリーのような形は望ましいものではないと気づけるのです。

人を理解できているのか

「組織は人でできている」と書くと、とても当たり前のことに感じますが、上記のようにそれができていないことは多いです。フィーチャーファクトリーの他にも、例えば開発・営業・人事など組織単位での認識しかない人々の集まりが周りにないでしょうか。そのような状態だと、その組織を構成する人の一人ひとりに対する理解が追いついていないことは多々あると思います。この話については、先月にシン・アジャイルでLTしてきたのでその時の資料を貼っておきます。

上記の資料にもあるように、アジャイルの価値観の一つは、「関わる一人ひとりを理解しよう」というものだと思っています。これは組織アジャイル的な視点で見れば、組織をつなぐこと、サイロ化による分断を越境することにつながるのです。フィーチャーファクトリーの話でいえば、その中にいる人を理解しようとすることで、その形を変えようとするきっかけが生まれるようなことです。

関心をお互いが持つこと、関心を持つとは相手の優先事項を知ることでもあります。関心が完全にマッチすることは難しいかもしれませんが、理解することで接点は作ることができるはずです。これはNVC(非暴力コミュニケーション)の話にも近いなと感じています。むきなおりをしながらむきあわせをしていくプロセスは究極的には紛争解決と同じです。ただ、私たちは紛争レベルの極限の状況に置かれていないはずです。だからこそ気張りすぎず、組織間でうまくいっていない問題は、組織の人を理解する最初のステップから始めてみるのが良いのだと思います。

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Takahiro Ito
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