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スクラムチームのベロシティ: 5つのアンチパターン

スクラムでベロシティはよく使われるプラクティスですが、よく誤解されているプラクティスでもあります。この記事ではよくあるアンチパターンとそれに対する考え方や良いプラクティスを交えつつ、ベロシティを正しく扱う方法を記していきます。

結論:ベロシティは予測と計画のためだけに使う

あ、結論が出たからって帰らないでくださいね。胸に手を当てて考えて見てください。ベロシティを本当に予測のためだけに使っているか。自信があるならこのページは閉じてしまって大丈夫です。少しでも気持ちが揺らいだら落ち着いて記事の全体を読んで、心当たりがあれば「❤」を押していってください。

1. ベロシティを初期のスプリントから安定を求める

チームが組まれてからしばらくはタックマンモデルで言う混乱期にあたります。そんな状態のチームに対して安定したベロシティを求めても難しいでしょう。不用意なプレッシャーはチームのパフォーマンスに悪影響を与えます。

私の経験則的には安定までに3スプリントは最低でも必要です。ベロシティは計画のためのツールなので、そのチームでできることが見えてくるのに3スプリントかかるわけです。1スプリントが2週間以上のタイムボックスになると最低でも1ヶ月半を予測の具体化に要することになります。

2. 目標ベロシティをプランニング時点で高く設定する

よくあるのは「前回○ポイントだったから次は+1ポイントにしよう」という一見前向きな挑戦です。一見前向きなのですが、根拠があることは大前提です。なんとなくチームが良くなってきたからという漠然とした理由になっていませんか?

その場合はストーリーポイントのインフレーションに注意です。スクラムチームは心理的に自分たちをよく見せたい、あるいは良くなっていると感じたいがため、目標ベロシティを高めに設定し、それに収まるようストーリーポイントを多めに見積もる可能性があります。その結果がストーリーポイントのインフレで、ベロシティの意味がなくなってしまうリスクがあります。

もちろん、初期~中期にかけてはチームビルディングがなされベロシティが上がっていくことも当然あるので、それは素直に受け入れましょう。ただ、その場合は目標となるベロシティを高く設定するのではなく、前回と同じベロシティを設定し、チームに余裕があったらプロダクトバックログアイテムを追加し、結果的にベロシティが上がる、という形がおすすめです。

3. ベロシティをチームの評価指標として使っている

1つ前のアンチパターンにもありましたが、チームが自分たちをよく見せたくなるのは心理的に普通のことです。それが評価指標ともなれば、その傾向は加速し、ベロシティを高めるためにストーリーポイントを多めに見積もるようになってしまうことがあります。これは様々なレベルのスクラムチームで実際にケーススタディがあり、慣れているからといってこの罠にはまらないとは限りません。チームが相対的に自分たちの作業を見積もることが権限として与えられている場合、それは評価と切り離さないとどちらのコントロールもチームに与えてしまうことになります。ベロシティを予測以外に使うのは避けましょう。

チームを評価したい場合は、顧客に価値を提供できたかどうかで評価しましょう。それ以外の目標は大抵アウトカムではなくアウトプットです。

4. ベロシティがブレることを許さない

ベロシティとストーリーポイントはあくまでも予測と計画のためのツールです。大枠での見積もりをスピーディーに合意し、本質の開発に時間を割くためのものです。そこの細かいブレに対してこだわってしまうと、より厳密な見積もりと細かい計画を立てる方向に流れがちですが、私たちはそれをいくら頑張ってもブレることを経験から知っているはずです。だからこそアジャイルやスクラムに行き着いたのではないでしょうか。

ベロシティの上がり下がりに一喜一憂するのはやめましょう。一喜一憂したいなら、ユーザーのフィードバックに対してやチームの成長というところをしっかり見る方がユーザーとチームのためになります。

5. 異なるチームのベロシティを比較する

ストーリーポイントはそもそも基準に対する相対的な見積もりなので、基準がチームによって異なれば当然相対的な見積もりも変わります。ストーリーポイントは「作業量」をベースに付けますが、チームのスキルによっては同じようなプロダクトバックログアイテムでも作業量そのものが変わります。

この話を社内でした時に良いフレーズを教えてもらったので共有します。「一人でもメンバーが変わったらそれは新しいチーム」です。新たに基準を決め直し、そこから相対見積もりを始めましょう。

おわりに

スクラムガイドに記載がないことから誤解されがちなベロシティですが、この記事をお読み頂ければ自分が罠にハマっているか気付けるかと思います。もし気付いたらぜひ、どうやったらチームと抜け出せるか考えてみて下さい。

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Takahiro Ito
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