死にたいと思っているあなたへ。

僕は弁護士をしている。

でも弁護士イコール自分だなんて思ったことは一度もない。
ずっと弁護士になりたいと思って仕事をしている。

10代の時、弟が死んだ。
自殺だった。

地元の不良グループに恐喝され、弟はお金を支払うことをせずに、集団リンチに遭い、その夜自殺した。

その日から人生が変わった。

弟を救えなかった。

自分のせいだ、親のせいだ。全てを恨んだ。

自分で死のうと思ったこともあった。
薬をオーバードーズして死んでみようとしたり、首に紐をかけたこともあった。
でも死ねなかった。
怖かった。

死ぬ勇気がない僕は、死だつもりで生きることにした。
他人の目を気にせず、何を言われようが、カッコ悪かろうが、生きることにした。

体力に自信がなかった僕は、弟が集団リンチにあった多摩川の河川敷を毎日走り続けた。
そして、新聞を1記事ずつ読み始め、自分で料理を作りはじめた。
自分で確かにできることから始めようと思ったんだ。

多摩川の河川敷を走り、体力が付き、精神状態もやがて好転していった。
新聞は、社会を教えてくれた。
色んな疑問を社会に持った。

高校を中退して、友達0人だった僕は、入り直した新宿山吹高校でも、人に話しかけることはできなかった。声を発することができなかった。
全てが怖かったんだ。
高校で1人の先生に出会った。
耳が不自由な渡辺先生。
夜の教室で宙を見ながら、熱心に教えてくれていた。
教師なんか、どうせ人なんて見てないんだろ、小学校の時、先生から吃音を馬鹿にされていた僕は、そう思っていた。変なおじさんだよ。生徒が聴いているか、聴いていないかわからない閑散とした教室で、額に汗かきながら話している。
疑問に思ったことを質問しに行った。
渡辺先生は熱心に答えてくれた。
君は大丈夫だよ。あるとき、質問に行ったら不意にそう言ってくれた。
そのシーンは今でも忘れられない。
それを信じて、勉強をすることにしたんだ。

進路を考えたとき、弟を救えなかったことが頭をよぎった。
僕は僕の人生と向き合うしかない。
そう思ったんだ。
勉強は大変だったが、資格試験を通ることは出来た。
試験に落ちたら今度こそ死のうと思って勉強した。

僕は死ねなかった。

だから、全てを受け止めることにしたんだ。

新しい人生は、今から始まる。

あなたが抱えているつらさをわかってくれる人は社会にいるんだ。
だから向き合って欲しい。
そして勇気を出して声を出して欲しい。

あなたの声を待っている人がいるんだ。

僕も今日からまた人生を始める。

あなたの新しい人生を、僕とどこかで出会ったら教えて欲しい。

生きて欲しい。


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