ライブハウスがつなぐもの 【147/200】
楽しい夜だった。
2021年10月23日、下北沢LOFT。
■イツキ. 〜「今の私」を届ける初ライブ
1組目のイツキ. さんは、音源を使っての歌唱。
リハの時から緊張されていたようで、客入れ後の本番前に、ステージ周りの相談を受けて、そこで少し話をさせてもらった。
後悔した。
ライブハウスへの出演は今回が初めてということで、リハの時からもっといろいろお話をしてサポートをすべきだった。
僕自身、ソロでライブハウスに初めて出演した時、お作法もわからず、ステージもうまくできるか不安で、お客さんのことも気になって、ガクガクだったから。
初めてのライブというものの大切さと、そこにかける想い、緊張は痛いほどわかるはずなのに、直前までそれを察することができなかった。
彼女のリハの歌唱を聴いていて、とても初めてだとは思えないしっかりした歌声だったから、というのもあるけれど、そんなのは言い訳にすぎない。
共演者の方とは、もっとちゃんとお話をすべきなのだ。
開場時刻を過ぎて、続々とお客さんが入ってきていた。
それは、コロナ禍になってから見なくなった光景であり、とても懐かしい感じがした。
そして、イツキ. さんが初ライブでこれだけのお客さんを呼んでいる、ということに素直に感動した。
後から知ったことだけれど、イツキ. さんは元女子プロレスラーとのことで、今回「今の私」を観てほしい、ということで個人でブッキングされたそうだ。
ファンの方々が集まり、彼女の初ライブを見守る。それだけで胸が熱くなった。
若くして彼女が選手活動を引退した、ということについて、僕は何も知らない。
ただ、このライブは彼女にとってとても大切なもので、ファンの方々はそれをしっかり見届けに来られたのだ。それはよくわかった。
ライブ序盤、緊張の面持ちながら、しっかりと歌を届けていくイツキ.
歌唱するカバー曲に対する想いを語りながら「今の自分」を表現していく。
ステージやライブハウスの空気に少し慣れたからか、最後の2曲、尾崎豊の「15の夜」と「シェリー」はとても心震える歌声だった。
ライブを終えて話を聞いたけれど、彼女は歌をきちんと習ったことはないという。
しかし、感情をコントロールしながらしっかりと想いを声に乗せ、音程とリズムを意識して丁寧に歌うその姿は、確かに歌手そのものだった。
彼女が歌や音楽、そしてライブハウスのステージをリスペクトしてこの場に臨んだことがしっかり伝わってきて、僕はそれが嬉しかった。
そして、ステージ上での凛とした立ち姿。
それは、どんな種類の仕事でも、人に観られることに向き合ってきた人の姿勢だった。
美しくそこに立つ、ということ。
彼女のライブを通じて、そんなことを学ばせていただいた。
僕はいつか、彼女のオリジナル曲を聴きたい。
彼女の言葉で表現された歌を、聴いてみたい。
■Arch 〜若き才能のハーモニー
続いて、Archのふたり。
彼らとは4ヶ月前に同じ下北沢LOFTで共演している。
弱冠18歳と19歳の二人組。
彼らのステージは、とても清々しい。
若さという時限式の宝物のような貴重な時間を、音楽にいかんなく表現している。
ツインボーカルだが、上新晃主の中低音の効いたボーカルに竹田裕樹の伸びのあるコーラスがハマったときの気持ちよさが、個人的にはArchの最強の武器だと思う。
1st Album「Only」はアコースティックデュオとしてのアンデンティティをしっかりと打ち出した彼ららしい作品だが、特に僕は1曲目の「蒼きバラよ」が好きだ。
今回のライブでも1曲目に歌ってくれた。
彼らと話をしていて、ふたりがそれぞれ音楽の学校に通っていることを聞いた。
僕は18歳から音楽を始めて、一時期ボイストレーニングに通ったことを除いて、20年近く独学で音楽をやってきた。今になって、音楽理論を学び始め、ピアノを習い、ボーカルトレーニングを真剣にやるようになったわけだが、案の定「もっと早くから真剣にやっておけばよかった」と思っている。
そういう意味でも、僕が音楽を始めたばかりで何もできなかった18歳のタイミングで、すでにこれだけの作品をつくり、ライブハウスへの出演を行い、音楽を真剣に学んでいる彼らの姿は、本当に眩しく見える。率直に言って、羨ましい。
主に竹田くんが曲を書いている、ということだったが、僕は、上新くんが楽器を触り、曲を書くようになったらいいな、と勝手に思っている。
ただの僕の想いの投影に過ぎないので、彼には彼のやりたいことをがんばってほしいと思うのだけれど、彼らは、20年前の自分を見るような感覚があるのだ。
楽器経験もまったくなく、カラオケレベルの素人ボーカルだった僕は、相方であるフジモトヨウヘイに出会って、彼から音楽のことをたくさん学び、見様見真似で曲を作り始めた。
二人でライブハウスに出るようになった当時、一番お客さんに評価されたのが、僕が書いた「スターマイン」という曲だった。
これは、本当に嬉しかった。憧れで始めたオリジナル曲作成で、ちゃんと人に届く曲を書けるようになった、というのは、僕にとっての初めての大きな成功体験だった。
相方に対する音楽に関するコンプレックスも、ここから少しずつなくなっていき、共作も増え、どちらが書いた曲も、ふたりのものであるような感覚を持つようになった。
今、僕がソロで歌っている曲の中にたくさんフジモト楽曲が含まれているし、そもそもすべての楽曲アレンジは彼によるものだ。
Archのふたりがこれからどう成長していくのか、とても楽しみだ。
今後、ふたりの音楽性が重なり合って、高め合って、より素晴らしい楽曲とライブパフォーマンスを生み出してくれることを、20年後の僕が、勝手に期待している。
■ヤマカワタカヒロ 〜 励まされるということ
イツキ.そしてArchのステージを受けて、トリを務めるのは、なかなか緊張した。
それぞれのお客さんが最後まで残ってくださって、僕のお客さんと、LOFTのスタッフの皆さんも含め、みんなでこの夜のステージを笑顔で締めくくるためにも、下手なパフォーマンスはできない。
この場にいる人たちすべての気持ちを想像しながら、一曲一曲丁寧に歌わせていただいた。
10/23 下北沢LOFT
1. おいで、ここに。
2. ひとつだけ
3. ネイバーブレイバー
4. 街路樹
5. 真夜中とギター(The Bargains)
6. タッチ&ラン
7. 君が好き
今回、The Bargainsの「真夜中とギター」をカバーさせていただいたことについて触れたい。
The Bargainsについては、詳しくはこれらをご参照いただきたい。
大好きなThe Bargainsの曲をおふたりも大好きな下北沢LOFTで歌う、というのは、また格別なものがある。
「なんとかなるだろ いつものことさ」
このフレーズを聞くたびに、どれだけ励まされてきたことか。
イツキ.さんの尾崎豊もそうだけれど、名曲が人を励まし、その曲を他の人が歌い継ぐことで、さらに励まされる人が増える。
そういう幸せな連鎖を生み出せるのが、歌だ。
僕の歌が、聴いてくれるみんなの心に少しでも癒しや励ましを生み出せていますように。
■終演後に見たもの
終演後の物販で、イツキ. とファンの皆さんが笑顔でやりとりをしている。
Archのふたりが、自分たちのお客さんだけでなく、イツキ. や ヤマカワタカヒロのお客さんにも一人ひとり丁寧にお礼を伝えている。
本当に、素敵な光景だった。
僕よりも断然若い2組とも、とても誠実で、謙虚で、一生懸命だ。
コロナ禍になって、出演アーティストもお客さんの入りも減って、こういう光景を見たのは久しぶりだった。
イツキ. のお客さんたちは、終演後の物販まで、Archとヤマカワタカヒロのライブをリスペクトをもって観てくださった。
以前、別のブッキングで、僕の本番中に前の出演者とファンの方々がやりとりをされていることがあって(あれはつらかったけれど)、そういうこともある中で、昨夜の空間は、とてもありがたい、優しい空間だった。
Archのふたりは、コロナ禍になってからライブ活動を始めた、ということで、その前のライブハウスを知らない、と言う。
これから少しずつ、感染対策と両立をしたエンターテインメント空間が戻ってくると信じているが、彼らが満員のライブハウスで歌うあの喜びを感じられるその時が来ることを、心から願っている。
一期一会かもしれないし、これからも縁が繋がり続けるかもしれない。
いずれにしても、そういう素敵な縁を、ライブハウスが繋いでくれる。
素敵な夜を提供してくれた下北沢LOFTに、改めて心からの感謝を送りたい。
僕は、これからも、ライブハウスとともに生きていきたい。
※写真撮影時のみマスクを外しています。
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■ ヤマカワタカヒロのWork
<音楽活動>
■ 最新Single「タッチ&ラン」配信中
■ 直近の弾き語りライブ予定
■ バースデーイブ・ワンマンライブ 〜Sing and Live2021〜
日程 : 2021年12月26日(日)
会場 : 下北沢LOFT
開場 : 18:30 開演 : 19:00
ticket : 2,800円(1ドリンク付) ※定員25名
出演 ヤマカワタカヒロ、ヤマカワトリオ and more...
<社会活動>
〜すべての子どもたちへ「安心できる居場所」と「生きる力」を〜
特定非営利活動法人HUG for ALL
プロボノスタッフ、子ども支援ボランティア、寄付サポーター 随時募集中
noteを読んでくださりありがとうございます。 歌を聴いてくださる皆様のおかげで、ヤマカワタカヒロは歌い続けることができています。 いつも本当にありがとうございます。