見出し画像

SNS時代の写真について書いた本(共著)でます!

僕も寄稿者の一人として参加しているクリエイティブ集団XICOから、11月20日に本が出ます。その名も『SNS時代のフォトグラファーガイドブック』!

今日のnoteは、その宣伝告知ではあるんですが、「良い本やから買って!」なんて言うつもりはないです。なんせ、僕はこの本の一部を担当しているだけで、他の著者がどんなことを書いているか全然知らないから。もちろん、錚々たるメンバーが書いているので「多分面白いだろう」とは思うけど、読んでないものを絶賛したりするのは僕の性に合わないんですね。

画像1

1.今まであまり見かけたことのない本を出します

だから、今日は「宣伝のフリ」をしつつ、「まだ一部しか知らない本の全体像を素描し、その本を迎え撃つ準備をする文章」を書いてやろうと。なんでそんなことをするかというと、この本、多分、似た本がないからです。絶対に変で、絶対に奇妙で、なんの情報もなく出したら、買った人が戸惑うんじゃないかという予感さえする。これからも、多分こんな本はなかなか出ないと確信できる。それくらい、企画段階からして「これまじで出すの?」っていう本でした。だから「予告編」みたいな文章で、ちょっと地ならししておきたいなと。

本の内容、単純にまとめると、あの技術てんこ盛りのヒーコが出しているというのに、まったく写真の編集とか技術とかには触れてないです。なぜか。それは「写真技術を誰の手にも」というヒーコ主催者である黒田明臣あきりんの理念が色濃く反映しているからです。つまり、今や写真技術に関する情報は、ネットをちょっと探せばいくらでもあるし、ヒーコのウェブサイトの中にも初心者向きから高度なテクニックまで、かなりの情報が集積されつつある。そんな中で、紙の本で「技術本」を出すことの意味なんて、あまり大きくないんではないかと。少なくとも、我々はそう考えた。

では何を問うのか。それは「今の時代における、写真という文化の姿」あるいは「写真との付き合い方」なんだと思うんです。他の著者はわからないけど、少なくとも僕はそんな思いで原稿を書きました。

画像3

2.SNSからは逃げられない、ならば

特に問題は「今の時代における」です。今の時代とはなにか。それは、SNS時代ということです。この数週間で何度かSNSのことをこのnoteでも書いたんですが、その中で伝えたかったのは、「良くも悪くも僕らはもうSNSからは逃げられない」ということです。SNSは、インフラツールになってしまった。21世紀の序盤は、後世においてSNS時代と名付けられるようになるはずです。

現在SNSは、多少批判的な目線で語られることが多いんですが、それは実際には「SNS批判」というよりは、「社会批判」なんですね。考えてみてください。常にいつの時代も、「社会は悪い部分が多い(けど、そこで生きるしかない)」というのが社会のあり方でした。完全な理想郷なんて、有史以来、一度も人類は達成していない。ほら、SNSも同じでしょ。それはSNSというのが、実際にはネットワークによって可視化された、これまでの社会関係そのものだからです。「SNSは悪い部分が多い(けど、それを使うしかない)」という状況なんです。SNS社会に僕らは生きている。

ただ、これまでと一つ違うのは、これまでのあらゆる時代において、社会というのは僕ら個人にとっては「制御不可能な」空間でした。大きすぎるし、基本的には僕らは社会に従属するだけで、社会という巨大な空間は、僕らのような力の弱い一個人から働きかけることなんて、ほとんど不可能だった。しかしSNSが個人同士をつなげる今の「SNS社会」においては、その空間はこれまで同様「大きすぎる」空間ではあるけど、「双方向」です。そして、これまでの社会とは違って、ただの個人が、社会の一部を動かすことさえ可能になってきている。例えばある巨大なバズによって、一日にしていろんな情報を、ただの一個人が社会全体に流すことができる。

つまり、SNS時代において、僕ら個人は、ついに「個人」として本当に自分の足で立つという可能性を提示されたわけです。この可能性は極めてリスキーで、僕はそのリスクを「呪われた魔法の杖」と、本書の中で書きました。それを使えば、どこかで「呪われる」可能性があるような、絶大な力を持った杖。でも、容量用法を守って使えば、これまでアクセスできなかった場所や人に、自分の情報を届けることができる。そんな社会状況に「写真」という文化全体があるということなんです。

だから、好むと好まざるとに関わらず、SNSについて考えることは、人生や社会について考えることだし、そしてその状況における「写真」を考えることは、「写真と人生」「写真と社会」について考えることにもつながる

画像3

3.SNS時代の写真とは

実はこうした状況は、写真自体を写真から解放する状況も作り出してきました。これまで秘伝とされてきた技術や知識は、今や完全に白日の下に晒されています。これまで「写真家」になろうとすれば、どこかのスタジオなり師匠なりについて、勉強して、その基盤を引き継ぐような形で・・・という、いわゆる「徒弟制」システムが生き残っていたのがこれまでの写真でした。でもこれが解体されつつあり、「写真」はついに、個人の手に降りてきます。撮影、機材、現像、知識、技術。何もかも、全て自分でできる。そしてSNSでそれを発信さえできる。SNSがあれば、写真を中心とした「個人メディア」へとなることができる

でもそれは、同時に極めて困難な状況も作り出します。これまである程度守られてきた権威なり権益は、圧倒的にオープンな空間においては、何一つ「防御壁」としての力を持たなくなります。また、「誰にも開かれている」という状況は、つまり「才能のあるやつなら一瞬でのし上がれる」という、極めて過酷な状況も作り出します。

もちろん、「写真」自体のメディア的可用性の高さのために、写真を活用しようとする企業なり集団なりが増えて、全体として「パイ」は増えていはいるんですが、それでも、この開かれた空間においては、どこに向かって自分を出していけばいいのかというのは、今、多くの人にとっては五里霧中に近い状態だと思うんです。すでに巨大なインフルエンサーたちがいるSNS空間内で、どうやって「これからの人たち」が生きて行くのか。

そう、その「指針」を出すための「ガイドブック」として企図されたのが、今回の本です。単純に、「こうやったらフォロワー増えます」みたいな、怪しいネズミ講のような本ではありません。「SNSで生きるってのは、どういうことか」ということを、写真を通じて考えるような、そんな本になっていると思います。

何から何まで、まったくこれまであった写真の本とは違ったものになります。なると思います。他の著者も、多分ブリバリに頑張ってくれてるはずです。なので、皆さんぜひご期待ください!!

いいなと思ったら応援しよう!

別所隆弘
記事を気に入っていただけたら、写真見ていただけると嬉しいです。 https://www.instagram.com/takahiro_bessho/?hl=ja