暴力団の上納金はトップの個人所得
傘下組織から集めた上納金をめぐり約3億円を脱税したとして所得税法違反の罪に問われている特定危険指定暴力団トップに対する控訴審判決が福岡高裁であり、裁判長は懲役3年、罰金8千万円とした一審判決を支持し、被告の控訴を棄却しました。
争点となったのは、暴力団の「上納金」が個人の所得に当たるか否かです。被告は、地元の企業や飲食店から得たみかじめ料や違法薬物の密売で得た収入を、傘下組織の幹部らを通して運営費名目で納めさせ、そのうち約500万円を親族らの口座に送っていました。2010年から14年に集められた上納金のうち、約8億9千万円を個人の収入として得ましたが、税務署に申告せず、約3億1900万円を脱税していました。これに対し被告は、「口座の金は全て組織のもので、個人の所得ではない」と主張しました。
裁判長は判決理由で、建設業者から集めた上納金が被告など最高幹部に一定比率で配分されていたことなどをもって、「明確な目的や法則に沿って継続的に管理されていた」と指摘。その上で、現金を振り分けている姿を見たという関係者の証言も信用できるとして、「実質的には被告に帰属する(所得)と認められる」と一審の判決を支持しました。
暴力団の上納金システムは、覚醒剤などの違法収益や、歓楽街の飲食店の経営者から巻き上げたみかじめ料などがいったん配下組織に集められ、それらの金が上納される仕組みとなっています。会社や人格のない社団などであれば利益には法人税が課されますが、暴力団はそのどちらでもないため、脱税うんぬん以前にそもそも納税義務がありません。また個人の所得として見ても、上納金を不動産購入や飲食費として私的に使えば個人所得とみなされて所得税が課税されますが、運営経費として使われる限りは、町内会やPTAと同様に課税されることはないため、ここに裏社会特有の資金の流れの不透明さが重なった結果、暴力団の上納金は長年、国税にとっても簡単に手を出せない領域となっていました。
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