Jリーグ、クラブの損失補填は宣伝費
サッカー関係者がJリーグ開幕の1993年以来ひそかに抱き続けてきた疑問に、ついに明確な答えが出されました。国税庁はホームページ上で、Jリーグからの文書照会に回答し、「親会社が補てんしたクラブの欠損金は、親会社の損金に当たる」との見解を示しました。
税法には、スポーツチームにのみ認められた税優遇があります。国税庁が1954年に発遣した通達では、子会社である球団に生じた欠損金を親会社が補てんするために支出した金は、損失額を限度として、「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うとあります。例えばプロ野球団が大枚をはたいて積極補強をしたものの成績が振るわず、観客動員数が落ちて赤字決算になってしまったとします。そうした時に親会社である企業がその赤字を埋めると、その分は親会社の「広告宣伝費」として、損金に算入できます。この規定がなければ、親会社による赤字補てんは会社から会社への利益移転や寄付扱いとなり、様々な税負担が生じることとなります。
この通達では対象となるスポーツが「職業野球団」とはっきり書いてあります。すなわちJリーグは含まれていないとも取れます。この疑問に対する答えは、これまで明確化されてきませんでした。
しかし新型コロナウイルスによってJリーグが長期休止を余儀なくされ、観客収入がない各クラブの財務状況が厳しくなっていることを受け、ついにJリーグが文書照会による明確化を求めることとなりました。新たに国税庁から示された回答によれば、①親会社が子会社であるクラブに対して支出した額のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分は、損金の額に算入される、②親会社がクラブの欠損金を補てんするために支出した額は、欠損金額を限度として、特に弊害がない限り、広告宣伝費の性質を有する、③新型コロナウイルス感染に伴い、親会社がクラブに対して行う低利または無利息の融資は、正常な取引条件に従って行われたものとする――という3点が明確化されました。プロ野球と同じ扱いであることが、国税庁によって明文化されたということになります。