「木を建てる – 稲山正弘展 東京大学退官記念展」
noteに書き途中で日にちが空いてしまいましたがせっかくなので更新しました。
24/3/17(日)最終日、「木を建てる – 稲山正弘展 東京大学退官記念展」に行ってきました。
稲山さんの黒本、「中大規模木造建築物の構造設計の手引き」には実務でお世話になっているので、ぜひ行きたいと思ってきました。
最終日とあって、意匠設計者と思われる方、学生、私と同じような構造設計に従事されているのかなと思われる方が多くの方がいました。
どれも興味深いプロジェクトと構造計画なのですが、その中でも興味深かったディテール3点ありました。
1.木造ラーメンの柱脚金物
在来木造軸組構造では、rcの立ち上がり壁を設けてその上に木土台を流して、その上に柱を立てる納まりが一般的だと思います。
このディテールでは鉄骨の露出柱脚のように無収縮モルタル、ベースプレートを利用して、その上に木柱を立てる収まりでした。
木造では土台めりこみで耐力が決まることを踏まえると、この収まりでめりこみに対して有利に設計できます。
アンカーボルトABM490、M20を利用している点でも、在来木造では400級のM16を使うのが一般的の為、ここでは柱脚耐力が必要になったことが分かります。
2.トラス継手の接合部
在来木造の梁の継手は木材の弱点のなりやすく、継手を設ける位置に注意を払います。
木材の仕口や継手は一般的にモーメントを伝達しないピン接合とすることが多いのですが、継手や仕口が1点に集まると接合金物が混み合い頭を悩めす。
このデイテールは継手位置にトラスの束を設け、非常にシンプルなおさまりになっています。曲げモーメントを生じさせず、継手にかかる応力を小さくしているのかなと想像していました。
3.高耐力壁の柱脚金物
近年中規模木造が増えている中で、耐力壁も高耐力が進んでいます。
一般的には耐力壁の壁倍率は7倍までとされていますが、それでも耐力壁の柱脚金物は高耐力なものが必要になります。
稲山さんのディテールは、タナカの高耐力ホールダウンHi75.3kN、2個使い。単純に耐力を足し合わせると150.6kNになります。
金物の種類は引き抜き力から選定するのではなく、耐力壁の耐力から選定しているとすれば耐力壁の壁倍率はとても高いものになっていると推察されます。
このようなディテールは設計した経験はありませんが、金物の基礎への埋め込み深さが大きくなり、柱脚の引き抜きによる基礎の設計に苦労しそうです。
また機会があればnoteを書きたいと思います。