VIXインバースETNの悲劇
先週金曜の米国市場に端を発した株安ですが、恐怖指数と呼ばれるVIXも急上昇し、これがプログラム取引の売りを誘発し、相場の下落に拍車をかけるという状況のようです。
ところで、この恐怖指数VIXに関係した驚きのニュースが出ていました。今回のVIXの急上昇により、東証に上場されていたVIXインバースETN(証券コード2049)の価格が急落、規約に従い償還されることになったのです。
VIXインバースETNって商品ご存知でしたか?その名の通り、VIXと反対のリターンを得られるETNです。ETNはExchange Traded Noteと呼ばれるもので、詳細は省略しますがETFのようなものと考えて下さい。VIXと反対のリターンを得られるということは、以下の式で表されます。
VIXインバースETNのリターン=(1-VIXのリターン)
2月6日の米国市場でのVIXは株価が急落する中ほぼ倍になり、96%上昇しました。したがって、上の式によってVIXインバースETNの価格は、前日の4%(=1-0.96)まで下落してしまい、ETNの規約に従い償還ということになったのです。
下のチャートを見てもわかる通り、このETNは適温相場の中VIXの低下に伴い、その価格は当初の4倍程まで上昇し、時価総額で400億円を超えていましたが、一夜にして12億程度になってしまいました。償還の決定がなされたためなのか、値幅制限は適用されず、価格は3万円近辺から償還価格の1144円まで一気に落ちてしまいました。仮想通貨もびっくりのボラティリティですね。
このETNを保有していた投資家は、このようなリスクを十分承知していたのでしょうか。JPXのサイトにある商品説明には、そのような説明は見当たりません。また、このETNの価格推移をS&P500株価指数の価格推移と比較しているところをみると、商品の特性やリスクについての説明が十分でなかったような気がします。
© unknown
ちなみに、このETNとは反対、つまりVIXと連動するETFも上場されています。「国際のETF VIX短期先物指数」(証券コード1552)というものですが、こちらの方は2月6日は値幅制限のためにストップ高で、価格が2倍になりませんでした。今日2月7日の取引では、前日の米国の株式市場の上昇によりVIXが低下したため、結局価格が2倍になるチャンスを逃したような形になってしまいました。
値幅制限の問題はレバレッジ型のETFにも起き得ることです。仮に日経平均の構成銘柄がすべてストップ高になっても、日経レバの価格にも値幅制限が適用されるので、このような場合にはレバレッジの倍率に応じたリターンを得られないこともあるということを理解しておく必要があるでしょう。まあ、めったに起こることではないと思いますが。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26570280W8A200C1EAF000/