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株式の大衆化で新たな繁栄を~松下幸之助

日経で紹介された松下幸之助の論文

下の投稿は日経電子版の特集記事を取り上げたものです。

「株式市場の変質」について問題提起している記事は、以下の文章で締めくくられています。

50年あまり前、パナソニック創業者の松下幸之助は論文で「株式の大衆化を進めよう」と説いた。人々が株を持てば配当などの収入を得られる。株の大衆化こそが、富を社会に行き渡らせるひとつの解になる。

この中で取り上げられている、松下幸之助翁の論文は「株式の大衆化で新たな繁栄を」というものです。10ページほどの論文なので、是非皆さんにも読んで頂ければと思います。

論文は、下のリンク(マネックス証券のサイト)から読むことができます。

https://info.monex.co.jp/news/pdf/2019/20190327_02/voice.pdf

以下は、論文のポイントとなる部分を抜粋し、要約したものです。論文を全部読む時間のない方は、こちらをご覧下さい。

論文の書かれた背景

論文の冒頭では、それが書かれた背景、松下翁の問題意識について書かれています。それを要約すると以下のようになります。

戦後、経済民主化政策によって、財閥が解体されるなど、株式が一般国民の手で所有されることが多くなり、資本の民主化が進んできたが、ここにきて個人株主を軽視する風潮が出てきて、多くの会社が株主の安定化ということで、株式を個人から特定の法人のほうへ集めようとしている。このように、資本が一部に偏在してしまうことは資本主義の退歩している姿と考えられる。

松下翁は、国民の一人一人が株主として国の産業に参画して、会社の経営を見守り、時には叱咤激励し、その業容の伸展と利益の配当を享受することが、国家国民の繁栄につながるものだと考えました。

政府・経営者・株主・証券会社の責務

そこで、それを実現するために、政府、経営者、株主、証券会社が、それぞれの責務を果たす必要があると論じています。まずは、政府からです。

政府に望みたいことは、政府みずからが、株式の大衆化なり株主尊重の意義というものを正しく認識、評価することである。そして、その上に立ってすべての国民に株式を持つことを積極的に奨励、要望し、それを実現するための具体的な奨励策、優遇策というものを大いに打ち出すことが大事だと思う。・・・(中略)・・・また、一度買った株をできる限り手放さないように株主を指導していくことも大事であろう。

今だと、NISAがこれに沿った制度ということになるでしょうか。また、売買益や配当に対する課税を強化することも将来的には検討されるかもしれませんが、長期保有が有利となるような制度にして欲しいところです。

つぎに、経営者に望みたいことは、その基本の考え方においても実際の態度においても、株主は会社運営に必要な資金を出資してくれている、いわば自分たちのご主人であるということを、決して忘れてはならないということである。つまり、自分の主人である株主の利害に対しては、自分のこと以上に真剣にならなければいけないと思う。

経営者に対しては、株主重視の姿勢を求めながら、一方では株主に対しても、株主としての役割を果たすことを求めています。

株主は、株に投資することによって国家の産業に参画し、その発展に寄与、奉仕するといういわば尊い使命をもっているのである。そして、その使命を全うすることによって正当な利益の配当を受けるわけである。株主は、こういう株主本来の使命というものを正しく自覚、認識して、原則としては、いわば永久投資するという考え方から株を持つことが大事だと思うのである。

「永久投資」!いい響きですね。そして、最後に証券会社の使命として、以下のように述べています。

証券会社の使命というものは、一つには、今ここで述べているような株式の大衆化を実現するために大衆的個人株主をできるだけ多く作っていくことだと思うのである。・・・・(中略)・・・・もちろん、投機的な株主というものを絶無にすることはできないし、絶無にすれば株の相場も立たないので、それも困るが、いずれにしても証券会社は一つの良識をもって、そういう投機的な株主を最小限度にとどめていくことが大事である。

デイトレ、信用取引、HFT(高速取引)など、短期的な値ざや稼ぎをするプレーヤーに関して、市場に流動性を供給する役割を果たしているとして積極的に肯定する意見もありますが、松下翁はこれらは最小限に止めるべきと述べていますね。私もその通りだと思います。

「一粒で二度おいしい」株式の大衆化

そして、株式の大衆化を進めることによって、一粒で二度おいしい、二重の利益が得られるとしています。

株主は投資した株式から受ける利益だけでなく、投資することによって産業が興隆し社会が繁栄するところから起こる、いわゆる社会共同の繁栄による利益なり恩恵を受けることができる。つまり大衆は、株を持つことによって二重の利益を得られるわけである。

以上、松下翁の論文の要旨を紹介しました。50年余り前の論文で指摘されていることは、今なおもって解決されていません。

日銀が金融緩和政策としてETF(上場投資信託)を購入し、その保有額が28兆円にも上っていることについて、「日銀が株を買い支えている」という風に批評する方がいますが、28兆円は国民一人当たりにすると、23万円程になります。この位の金額は、本来家計で保有して然るべきではないでしょうか。

冒頭で紹介した投稿も、以下の文章で締めくくられています。

「株はギャンブル」――。日本ではこうした意識も根強く、ごく一部の人しか株式を購入したことがないことも事実。株式を通じて富を広く社会に行き渡らせるためには、一人ひとりが正しい知識を身につけて、認識を改めていく必要があるのかもしれません。

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