私の年金機構改革案
このような年金の事務処理ミスは、もちろんあってはならないことですが、闇雲に年金機構や年金事務所を非難するだけでなく、抜本的な解決策を考える必要があるのではないでしょうか。
私は、FPとして活動を始める前に、1年程年金事務所で契約職員として働いていました。社保庁時代の事は、ニュースを通じてしか知りませんが、いろいろ酷いと感じていました。しかし、私が働いていた年金事務所では、職員の皆さんは真摯に業務に従事しており、社保庁時代の延長線上で、昨今の事務処理誤りについて、年金事務所の職員が仕事をしていないと非難することは筋違いでないかと思います。
わずか1年程、しかも契約職員という身分で、抜本的解決策を語るのは分不相応だと思います。しかし、私の目を通して感じた年金事務所の現状や問題点を世間の皆さんにお伝えすることによって、年金の事務処理をなくすための実効性のある解決策の議論がされることに少しでも役立てば良いと思います。
端的に言うならば、年金機構は年金制度の適正な運営を行う上で必要なコストを惜しんではいけない、ということです。社保庁時代の経緯から、世間の批判を避けるためにコストを抑えることが最優先課題の一つとされており、結果として、年金制度の運営の品質が維持されていないという状況になっているのではないかということです。
具体的には、以下の通りです。
● システムが非常に古く、業務の効率性や正確性を妨げている。現在、システムを刷新中ではあるが、パッチワーク的な対応である印象が否めない。全国民に関する記録を保持する日本で最大の顧客データベースとして、最適なものをゼロから作り直す必要があるのではないか。また、その際には、外部のコンサルティングなども入れて、これまでの慣習や既成概念にとらわれずに、最適なものを設計すべきである。
● アニュアルレポートによると職員の給料は、国の平均給与より低くなっているが、業務の類似性を考慮すれば、銀行員並みの給料でも良いのではないか(おそらく、国の平均より高いはず)。年金事務所の業務は、社会保険加入適正化の促進、多種多様な国民からの年金相談、滞納保険料の徴収など、社会的意義や難易度の高い業務も多い。
● 正職員以外の契約職員の処遇の向上を図る。私が働いていた年金事務所では、全体の半数かそれ以上の職員が、契約職員として働いていたが、給料は最低賃金に毛が生えたくらいのものでした。中には、正職員と同じような業務をこなす人もいるし、契約職員といえど、世間の皆さんからは正職員と同じレベルの応対を求められることが普通です。正職員、契約職員問わず、適切な待遇をすることは、人材の確保にもつながります。
● 社会保険制度に関する広報活動の強化も必要でしょう。世の中の会社の中には、税金はきっちり払うけど、社会保険は加入逃れをしているところがあり、そのような会社に対して行っている調査、勧奨、指導にかかるコストは馬鹿にならないと思います。税金同様社会保険もきちんと納める義務があることを周知する必要があるでしょう。あるいは従業員の側からも、自分に関する社会保険の加入手続きなどが適正に行われているか、確認するように促していけば、広報にかかるコストを上回る効果が得られるのではないでしょうか。
私もFPとして、4つ目のポイントに関しては、一般の方に社会保険制度の理解を高めてもらうような活動をしたいと思っています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28584830W8A320C1EE8000/