負担の誇大広告に気をつけよう!
皆さん、こんにちは。年金界の野次馬こと、公的年金のミカタです。
昨日(3月29日)に子ども家庭庁は「子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について」を公表し、こども・子育てを支援する制度の拡充とそのための財源となる支援金制度について具体的な内容が示されました。
子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について (cfa.go.jp)
一方、これを報じる日本経済新聞の記事は、ほとんどが負担のことばかりで、給付の内容については詳しく述べられていません。
当初、「1人あたり月500円」と政府が公表したものが、加入する公的医療保険制度や収入によって異なるということですが、一定の収入のある会社員の拠出額が月1000円~2000円だからといって、そんなに大騒ぎするほどのことなのかと思ってしまいます。
この様に、企業も含め広く、かつ能力に応じて集められた支援金が、子どもや子育て世帯のために使われることは、喜ばしいことではないでしょうか。
さて、子ども・子育て支援金のことは、またの機会にあらためて取り上げることにして、今回は、日経の3月18日付朝刊の1面に掲載された次の記事を斬ってみたいと思います。
記事の内容は、見出しの通りで「税・社会保険料の負担が増えている」といういつもの論調で、「家計の負担率」として下のようなグラフが示されていました。
「家計の負担率」とは税・社会保険料負担を家計所得(雇用者所得、財産所得等)で除したものです。この元データで内閣府が公表する国民経済計算から、試算に使われている税・社会保険料負担と家計所得の金額の推移を日経の「家計の負担率」と合わせて表したのが、下のグラフになります。
これを見れば、負担率が上昇しているのは、税・社会保険料の負担が増えていることよりも、分母の家計所得が30年もの間ほとんど増えていないことだと分かります。
これまで散々言っていますが、現役世代の手取りが増えないのは、税・社会保険の負担が増えているからではなく、賃金自体が増えていないからです。
そして、この記事には以下のような解説もされています(太字による強調は筆者によるもの)。
この日本総合研究所の牧田氏の試算は、3月24日のフジテレビ「日曜報道THE PRIME」でも下のようなグラフで紹介されていました。
しかし、これも負担が重いということをアピールするために都合のいいデータを出しているにすぎません。
この負担率は、令和4年国民生活基礎調査で公表されている、年齢階層別の平均所得と平均可処分所得を使って計算されたもので、計算式は以下の通りです。
計算式によって計算された負担率は、下の表の通りで、日経やフジテレビで紹介されているように、29歳以下の負担率が突出して高くなっています。
しかし、この調査のデータをもっとよく調べてみると、29歳以下の負担率が高いのは、データの問題が原因ではないかと思われるのです。
下は、29歳以下の平均所得と平均可処分所得の基になっている所得と可処分所得の分布です。
この分布より、以下のことが分かります。
平均所得のサンプル数は322であるのに対して、可処分所得のサンプル数は239しかなく、両者のサンプル数に大きな差がある。
可処分所得のサンプルが欠落しているのは、比較的所得が高い階層である。
したがって、可処分所得の平均は実態より低く出てしまい、29歳以下の負担率が実態より高くなってしまっていると推測される。
ということで、日経もフジテレビも、データに問題があり過大に計算された負担率を、よく調べずに報道することは、大きな問題です。
まあ、元の資料は日本総研が作成したものなので、一番の問題はそこなのでしょう。給与所得者で、年収が額面で377万円であれば、さすがに手取りがその7割しかないというのはおかしいと思わなかったのか、大きな疑問です。
このように、今はメディアも政治家も「社会保険料負担が重い」といえば注目を浴びるので、このような負担の誇大広告があちこちで見られます。
見つけたらJAROに通報しましょう!(ウソ)
それでは、今回はおしまい。みなさん、ごきげんよう!
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