社会保障教育も重要だ

金融経済教育というとイコール投資教育という風に考えられていないだろうか。投資教育も子供や若者たちにとっては重要だが、それと同等かそれ以上に社会保障教育が重要であるということをFPとして強調したい。

記事で紹介されている高校生に対するアンケート調査で、複利という言葉を「聞いたことが無い」と答えた割合が50.9%と半数を超えていることをもって金融教育が十分でないと懸念しているが、これは単に言葉の問題であって、複利とは資産や借金が雪だるま式に増えていくことであると説明すれば、すぐに理解できる類の事柄である。

一方、国民年金という言葉については、「聞いたことがあり、内容もほぼわかる」と答えた割合は64%と高くなっているが、筆者は正しく理解している割合はそれほど高くないのではと疑っている。そうでなければ、街頭インタビューなどで、「年金は自分が保険料として払った分が将来返ってこない」とか、「年金はどうせもらえないのであてにしていない」と不安を口にする若者の姿をそれほど目にすることは無いはずである。あるいは、あるマネーセミナーでは、一家の大黒柱が万一亡くなった場合にもらえる遺族年金について尋ねられると、参加者の多くは本来もらえる金額よりはるかに少ない金額を答えたということもあった。このように、社会保障制度の一部である国民年金をとっても、一般の生活者の理解は怪しいと言わざるを得ない。

FPがライフプランニングの相談受けた場合、まず公的保険と公的年金でどれだけカバーできるかを説明し、それで足りない部分を民間の金融機関が提供している商品で補うというアプローチが一般的である。つまり、公的保険と公的年金といった社会保障制度はライフプランニングをする上で土台となる部分なのである。そこをしっかり固めずに、投資の勉強をしましょうというのは本末転倒ではないだろうか。

社会保障制度は私たちの生活に潜む様々なリスクに備えるものであり、しっかり理解すればライフプランニングにおいても、より多くの選択肢を与えてくれる。人生100年時代においては、教育・仕事・引退という画一的な3ステージモデルから、多様なマルチステージモデルへの転換も予測され、ライフプランニングが多様化する中、社会保諸制度の正しい理解と活用の重要性がより一層高まってくることだろう。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO26179480W8A120C1PPE000?channel=DF280120166591

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