投機的な市場参加者の存在意義は?
今回のトルコリラ急落の原因の一つが、「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる外国為替証拠金取引(FX)を行う個人投資家のロスカットであると、日経の記事で紹介されています。ちなみに、私は為替レートの変動によって利鞘を稼ぐことを主にしている参加者に対しては、投資家という呼び名は相応しくなく、「個人投機家」と呼ぶべきだと思っています。
さて、投資家なのか投機家なのかという区別はともかく、ミセス・ワタナベという市場参加者は、一般的には逆張りをする傾向があり、それによって市場のボラティリティ(変動率)を抑え、安定性を保つことに寄与している、というような解説をしばしば目にしますが、これはFX業者による宣伝文句でしかなく、今回のトルコリラ急落は、ミセス・ワタナベが市場のボラティリティを高めるかく乱要因になるということを示したものでしょう。
また、FXに限らず、株式市場においても短期の値ざや稼ぎを目的とする投機家の存在は無視できず、株価の行き過ぎた動きの一因になっています。このような投機家の存在は、市場に流動性を供給するので、長期保有を目的とした市場参加者にとっても利益となっていると、その存在意義を積極的に肯定する意見もありますが、私はそのような見方に対しては懐疑的です。
市場の流動性が高まっても、単に取引量が増えるだけで、適正な価格で取引できなければ意味がありません。投機的な市場参加者によって株価が急落すれば、それは長期保有の市場参加者にとっては安く買える絶好の機会であると言う人もいますが、長期保有した株を現金化して何かに使おうとしていた市場参加者にとってはいい迷惑です。
投機的な市場参加者に対して、市場に流動性を供給するとか、ボラティリティを抑え安定性を高めるとかいう存在意義を積極的に認めることはできません。どうせなら、そんな建前を言わずに堂々と「博打で儲けて何が悪い」と言うくらいに開き直ってくれた方が気持ちがいいですし、短期間の値動きで鞘をとるゼロサムゲームで儲けたいなら、仮想通貨市場で思う存分やってもらえばいいのではないでしょうか。そして、それが現在の仮想通貨市場の存在意義にもなるのではないかと思います。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34278370X10C18A8000000/