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在職老齢年金廃止の是非

公的年金の財政検証で示された制度改革案の中で、働きながら年金を受給する際に収入と厚生年金の合計が一定額を超えると年金が減額されてしまう、在職老齢年金制度(在老)の廃止についての記事です。

記事では、在老の廃止は一部の高所得者に対して年金を支給するコストを低所得者を含めた加入者全体で負担しなければならないこと、減額が廃止されて年金が支給されるようになると、それは企業に対して従業員の給与を低く抑える口実を与えることにならないかということを挙げて、在老廃止に慎重な姿勢を見せています。

私も、特に前者の高所得者優遇という点については、その通りだと思っていましたが、最近は「公的年金は保険」という原則に照らし合わせると、在老の廃止は理にかなっているのではないかと考えています。

なぜなら、就労によってしっかり稼いでいる間は年金に頼らず生計を賄い、引退後は繰下げによって増額された年金を一生受給できる安心感が得られるという公的年金の保険としてのメリットは、高所得者であろうと享受できるようにするべきではないかと思うからです。

これに対して、在老の問題点は、せっかく長く働いて年金を繰下げても、在老による支給停止に相当する部分は、繰下げ増額の対象にならないということです。これでは、ちょっとかわいそうではないでしょうか。

「公的年金は保険」という精神に反して、働いてしっかり収入があるのに年金を繰下げずに受給しようという人に対しては、潤沢な給与所得と年金所得に対してしっかり課税をすれば良いと思います。

このように考えれば、下の記事の最後に述べられているような、公的年金が保険であるということと、在老の廃止が、矛盾するということは全くないと思いますが、いかがでしょうか。

厚労省はことあるごとに年金は「貯蓄ではなく保険だ」と繰り返している。想定外に長生きしてしまうリスクに備えるための制度という説明である。65歳以降への繰り下げ受給のススメに躍起になっているのも、その表れだ。にもかかわらず、世間水準に照らして収入面で恵まれている高齢者の年金を増やそうとするのは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものではないだろうか。

財政的には、在老の廃止はマイナスですが、適用拡大など他の改革案とセットにすれば、十分吸収できるものだと思います。

(2020年10月9日8:10AM 追記)

在職中の減額制度は維持して、繰下げた場合は全額を繰下げ対象にするという仕組みも考えられますが、経済的合理性に従えば、減額された年金を受給するより繰下げするはずなんですよね。ただ、在老停止逃れの裏技もあるようですし、給与収入以外は停止の対象外というのも公平性に欠けるような気がします。したがって、高所得で年金を受給している人に対しては、公的年金控除の縮小など、課税強化で対応すれば良いのではないでしょうか。

#COMEMO #NIKKEI

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