寄付つき仕組債でSDGsを謳う本末転倒
少し前ですが日経に下のような記事が出ていました。
仕組債という、一般生活者にとって全く必要のない、はっきり言って百害あって一利なしの金融商品を、このように取り上げることの見識を疑ってしまいますね。
以下に記事の内容を見ていきたいと思います(囲みの部分が記事の抜粋)。
新生銀行はこのほど、寄付つきの仕組み債の販売を開始した。日経平均株価が一定の範囲で推移すれば高い利回りが得られる債券で、投資家が購入すると元本の0.01%相当の金額が自動的に慈善団体に寄付される。寄付つきは、公募の仕組み債では国内初となる。
仕組債は、リスクが高いだけでなく複雑で、手数料も不透明な、一般生活者の資産形成には全く不向きである金融商品なのに、それに寄付をつけて販売することを「国内初」と持ち上げるってどうなんでしょう。
記事の文脈で見ると、「国内初」というのはポジティブな印象を与えますが、実際はその逆で、これまで見たことがないようなひどい抱き合わせ販売、あるいはトンデモ金融商品と言えるのではないでしょうか。
仏金融大手ソシエテ・ジェネラルが発行体となり、債券は22日に発行する。寄付はソシエテが負担するため、投資家の元本は毀損しない。ジェンダー平等の推進を通じて国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に取り組む慈善団体ケア・フランスに寄付する。
この手の仕組債は、購入→(早期)償還→再購入→(早期)償還→再購入・・・・・、という形で株価が大きく下がって損失を被るまで回転売買をさせて手数料を稼ぐという、全く持続可能ではない金融商品で、SDGsとは正反対のものです(冒頭に載せた、銀行のホームページのスクショにつけたコメントのとおりです)。
償還までの期間は約1年半、利回りは年率2%。日経平均の終値が設定時の69%を下回ると、償還価格が日経平均に連動するようになり、元本割れのリスクが高まる。また、日経平均が上昇し一定の水準を超えると繰り上げ償還になる。
この仕組債は、日経平均が3割以上、下がらなければ国債などの普通の債券と比べて高い利回りを得ることができます。現在は、日経平均は27000円に近いので、これが19000円を下回るほど下がらなければ、大丈夫ということになります。しかし、満期や繰り上げ償還で戻ってきたお金で、再び仕組債の購入を薦められるので、これを繰り返しているうちに、いつか株価が大きく下げてしまい、それまで仕組債で稼いだ利息以上の損失を被ってしまうという「仕組み」なんです。
仕組み債は高利回りを確保したい個人に人気の商品だ。自動的に寄付する仕組みをつけることで、社会貢献やSDGsに関心のある個人の需要を取り込むだけでなく、関心が低い層の意識を高める狙いがある。
日経は、こんな風に仕組債の購入を安易に薦めるように取られかねない記事を書くのではなく、仕組債の怖さを伝え、それと寄付を合わせて一般生活者に販売しようとする金融機関の営業姿勢が本当に顧客本位なのか、ということを問いただすべきではないでしょうか。
仕組債は、銀行の窓販で問題となっている、外貨建て保険以上にリスクが高く、複雑な商品です。これを金融機関が発行することも、販売することも顧客本位と言えるものではなく、SDGsの看板を掲げている金融機関は、仕組債に関わるビジネスはやめるべきではないでしょうか。
最後に、仕組債の問題点を詳しく解説した小生のコラムを載せておきます。ご興味があればご覧ください。