「ガフロコン事件」 がヒットボックス、レバーレスに与えた影響 Ver.2022/5/28
ガフロにぃは悪くない!
ガフロコンを悪の代名詞として使うな!
格闘ゲーム向けと言われ、理論値最強なんて言われてるヒットボックスとその派生であるレバーレスコントローラー。
その転機となったガフロコン事件。騒動の中心となった2019年の大会、その後のレギュレーションと、2021年時点での状況について、ちょっとまとめるてみた。
1. 2011年にはヒットボックスが話題に
2011年、まだスト4AEが主流の時代に、ヒットボックスが誕生!
キーボードプレイヤーなんかは早くも注目してたとか。
2. (おまけ)ときど選手の情熱ボタン事件?sako選手も?
2014年、アルカプの大会で、フルスケジュール選手が斜めボタンを使用して問題になった。キーボードやパッドで出来ない「斜めボタン」はマクロ扱いに。この件は明確に禁止にされた。
移動の一部をボタン化し、レバー(もしくはパッド)でその移動を無効化していないと、ゲームとしてすごく有利な挙動になってしまう。
その事を気付かされる事件となった。
で、同じく2014年。ときど情熱ボタン事件が起きる。詳しくは「ときど 上ボタン」で検索。豪鬼の特定の技用に、上ボタンを増設してたって話。
このボタンをつけると、レバーでは超難易度の技が、比較的簡単に出せてしまう。
しかし、この事件、なんでこんな名前に?実は、事件の前後にときど選手が情熱大陸に出演したので、一部で情熱ボタンという言葉が流行してしまったらしい。
結局、ときど選手の主張ではエキシビジョンだけの利用だとも?あるが、詳細は不明のままうやむやになってしまった。
翌2015年には、sako選手が辻式の為にボタン増設し、物議を醸した。
辻式は、特定の攻撃ボタンの1F後に別の攻撃ボタンを押すと、入力猶予が1F緩和されるテクニック。スト4では必須のテクだが、辻式のためだけにボタンを増設するのはチート行為と批判された。
結局、ボタンの増設に対し、大会やメーカーが何も規定をしなかったのが、2019夏の事件に繋がることになる。
事件の問題点の半分は増設ボタンということに注目して欲しい。
3. 2018年「カナダのえいた」CeroBlast選手が話題に
左手レイアウトがキーボードチックな、ヒットボックスタイプのコントローラを使う、ケン使いの強豪CeroBlast選手の活躍が話題になった。
当時から「あの波動拳は挙動が見えない」と、話題になっていた。
4. ガフロ選手が国内でヒットボックス型コントローラを使用
強豪と噂されていたガフロ選手が、ナッシュからバイソンにキャラ変えし、ヒットボックスタイプの自作コントローラで頭角を現した。
そのコントローラは
・ヒットボックスレイアウトを参考に自作
・タメ、ステップ用にボタンを増設
・brook社基板の「左右同時押し後優先」仕様を利用
という特長を持っていた。
ガフロ選手は念のため、大会に出る度に運営にコントローラの説明をし、2019年のあの事件までは特に問題はなかったとの事。
同コントローラに注目が集まると、コントローラーの販売も行なった。
通称「ガフロコン」。当時は違法ではなかった。
5. ふ〜ど選手が配信で話題にし、ウメハラ選手も興味を
そして、徐々にトッププロ達もガフロコンに注目し始めた。何人かがガフロ選手の作成したガフロコンを購入。特に、流行りに敏感なふ〜ど選手、タメキャラを使ってるウメハラ選手、レバーが苦手で歩きガードに活路を見出そうとしていたカワノ選手は、本気で練習を始めていた。
6. 左右同時押し後優先の恐ろしさ(この項は長文注意)
そもそも、ヒットボックスの操作について、世間的に、誤解もある。
タメなしでソニックが出る→デマ
斜め押したら昇竜拳が出る→デマ
変なデマが横行した。
そんなことはない。
レバーと違って、右から左、下から上に入力した際、ニュートラルを必ず経由するということがない。そのくらいだ。
あと、移動がボタンである限り、左右や上下、相反する要素を同時に押せてしまうため、そこをなんとかする必要がある。
実際に、この同時に押せてしまう件については、どちらを優先するか、はたまたニュートラルにすべきか。後で問題になる後優先設定には何があるのか。何が起きたのか。
スト4やスト5は、キーボードやパッドでもプレイが可能となっている。
ゲーム側は、キーボードや、アナログと十字キー(デジタル)で、右と左を同時に入れた場合、どうするか。下に入れてる時に上の入力を後からしたらどうすべきなのか。左右や上下の信号を同時にゲームが受け取った際、ゲームはどういう挙動になるのか。
後ろはガード
前は歩き
なら、積極的行動は前!
という理由(だと勝手に個人的に思ってるだけ)で、前が優先される。この記事では以降前優先設定と呼ぶ。
同様に、上下では上が優先される。この記事では以降上優先設定と呼ぶ。
格ゲーをキーボードやパッドで操作するという時代。同時押しの優先順位については、ストリートファイターについては、完全にゲーム側の都合で、前優先、上優先という挙動が生み出された。
上記の都合に対し、方向キーが独立したボタンになっている、ヒットボックス(レバーレス)コントローラとしてはどう考えるべきか。
実は、ストリートファイター4、5以外のゲームは、ほとんどが左右、上下の同時押しについては、ニュートラルになる。
上記以外のゲーム、例えば最近出たGBVSは、上下も左右もニュートラルとなる。
さまざまな格ゲーが、同時に来る信号に対して色んな仕様で作られている。キーボードに近いヒットボックスタイプのコントローラーも、その作りの関係上、どれかの仕様に寄せる必要がある。
ただ、ストリートファイターシリーズは人気があるので、前優先、上優先の考え方は無視できなかったようだ。
上下は、何も考えなくても上を優先にすればいい。これはヒットボックスタイプではスタンダードとなる。
左右は、キーボードと同様に、前優先にしたい。したくても、コントローラからはゲーム内の敵の場所なんて分かりっこないので、どっちが前かわからない。なので、ニュートラルにしよう。
この一連の、方向ボタン同時押しに対する機構が、SOCDクリーナーと呼ばれる機能になる。
そもそもなんで、コントローラは両方の信号を流さないのか。
レバーの代わりだから。レバーでは左右、上下が同時に押されるという状況が発生しない。
PCに繋ぐと分かるが、アケコンのレバーは、デジタルハットの代わりとなる。
ハットは、8方向の位置の情報を持つ。左右、上下に対し、両方の信号を流すという概念がない。
ちなみに、両方の信号を流すと、一部の古いゲームでは誤動作が起きる。そもそも同時に信号が来ることを想定していない。壁に張り付いて離れないとかね。
だから、バグ無く動作させるには、コントローラーでSOCDクリーナーが必要となる。
純正ヒットボックスは、左右同時押し対してはニュートラルを採用した。上下は上優先とした。
しかし、キーボードやパッドで前優先が強いキャラが居ることを知っているゲームファンが「左右に対し、あとから押した方を優先したら、前優先並の強さを手に入れられる」と気づき、デジタル回路で作成。
この記事では、以降後優先設定と呼ぶ。
その後、Brook社での基板でも、2017年4月以降のファームウェアでSOCDクリーナーにこの後優先を採用した。後優先とニュートラルの仕様を、ジャンパーピンでどっちも選べるようにした。ガフロコンではこのBrook社の基盤を採用した。
この辺の情報はハメコ。さんのツイートでもまとめられている。スレッドを追いかけてもらうとなかなか読み応えがある。
前優先、後優先だと何が出来るのか。
①後ろにタメて、後ろ押しっぱなしで前を一瞬押すと、後ろタメの技が出て、直後にまたタメられる
②後ろを押しながら、前に入れて歩いて、相手が動いたら前を離せばガードが最速で間に合う
③上記①も②も、レバーではニュートラルを経由することがほぼ100%なので、比較すると数フレームほどズルい
後優先の凄さをまとめた動画もあるので一通り見てもらいたい。
後優先設定にすると、具体的には、ガイルのソニックが簡単に鬼連射出来る。ガイルのCAも同様に簡単に、かつ高速に出せるようになる。
まぁ、純正なんかの左右同時押しニュートラル設定でも難易度は高くなるが同様のことが出来る。後優先ではとにかく簡単で高速だ。
また、この設定にすると、歩きガードも強化される。これはカワノ選手の得意技となった。
とりあえず、トッププロでガイル使いのウメハラ選手に、このガフロコンという武器は強すぎる!と、一部の選手が気づいてしまった。
そして、満を辞して、ウメハラ選手が公式の大会で(ガフロ選手の作ったコントローラをベースに、左右ボタンや上ボタンキックボタンを増設しまくった、後優先設定の)超攻撃的、上ボタンとKボタンを増設しまくりのガイル仕様ガフロコンで参加することが決まった。
2019年カプコンプロツアー、アメリカ イリノイ州大会「Combo Breaker 2019」である。
7. ウメハラ選手だけが後からガフロコンでの参加を断られた
まず、下記のツイートが、界隈で一気に注目された。
えっ
ってみんな思った。
ウメハラ選手、前日の配信で、大会関係者に許可取ったって言ってたよ?
ガフロ選手も同じ大会ガフロコンで出てるよ?
そんな中、下記のツイートもRTされ始めた。
(こっちの発表のが時系列的には前だけど、話題に上がったのは多分後)
なんだよCPT精神って!(この年の格ゲー界の流行語となった)
さすが世界のダイゴウメハラ。かなりの問い合わせがあったのだろうね。
ちなみに、同じ大会での、カワノ選手のツイートは下記となる。レバーが苦手でヒットボックスにしたかったという話だったので、急遽増設ボタンなし版で参加したらしい。
で、後からウメハラ選手が事情説明をしてくれた。やはり「あのDaigoのコントローラはやばい。何がやばいかはわからんが止めなきゃあかん!」って判断だったらしい。後優先の問題とかそんなの全然関係ないというか、運営も理屈とか分からずとりあえず禁止にさせてくれとお願いしてきたみたい。
8. コンボブレイカーでの事件に対し、報道のタイトルミスリードが酷かった
ありえん。
その後のニュースサイトのタイトルが悪意に満ちてる。
「ヒットボックス 禁止」でググるとマジやばい。
上記の見出しで、純正ヒットボックスまで誤解を受けた。いまでもこの影響を受け続けている。
純正ヒットボックス、および、左右同時押しニュートラルのヒットボックスタイプコントローラは、調べた限り一度も使用禁止になってない。
なのに、ヒットボックスはハードチートだの大会出禁コントローラだの、一部から酷いバッシングを受けてる。今でもこのバッシングは続いている。
9. 一連のコントローラーの件に対し、CPTのレギュレーションが発表された
コンボブレイカーの後、正式に新しいカプコンプロツアーの大会規約ができて、他のカプコンの大会、他のメーカーのゲームの大会も、こぞってこの規約準拠となった。
移動ボタンについては
・アナログ、デジタルは1系統ずつのみ
・アナログ信号の「デジタルスイッチ化」禁止
・デジタルは4方向について1スイッチずつまで(増設移動ボタン禁止)
・左右同時押しは、両方有効にするか、ニュートラルのみ(後優先の禁止)
・上下同時押しは、上優先か、ニュートラルのみ(ただし、上優先はいままでの文化として残してるだけなので、後で禁止になる可能性を示唆されている)
攻撃ボタンについては
・〇×△□ L1 L2 R1 R2は一つずつの利用(増設攻撃ボタン禁止)
ガフロコンのハードチート要素を禁止し、純正のヒットボックスの仕様であれば問題ないよう、上手くまとめた規約になっている。
10. ウメハラ選手、カワノ選手のその後
ウメハラ選手は、コンボブレイカーの直後にヒットボックス社に純正をプレゼントしてもらい、それベースで練習。CPT準拠のレバーレスを使い続け、2019年秋頃からレバーレスで大会に参加。2020年CPT日本代表出場枠(2名)をかけた大会で優勝!2021年シーズンも大活躍!
カワノ選手も同様にヒットボックスタイプを使いこなして、2019〜2020年と大会に出場しまくってる。
そして2020年10月21日、ヒットボックス社からスポンサー契約を受けたと発表!
そして2021年トパンガチャンピオンシップ優勝!
EVO 2021 online 東アジア地域も優勝!
2021年シーズンのタイトルほとんどで上位に居続ける快挙を成し遂げた。
レバーレスのプロは、確実に結果を残している。
11. ガフロ選手のその後
まず、速攻でコントローラの販売は中止したらしい。せっかく少しビジネスになってたのにね。
コントローラの販売については色々あったらしいけど、それよりもプロ契約の方が深刻な問題になった。
結局、カプコンのレギュレーション発表の少し後に、失意のまま引退。
が、事件から半年以上経った2019年12月、Twitterで「実は、CPTのレギュレーションの件は知らなかった。知ってたら引退しなかった」と発言し、プチバズった。
今でもコントローラの販売は行ってるとか。2021年あたりから徐々に大会参加にも復帰しているらしい。
12. ヒットボックスの一連の誤解は解けてない(と思う)
ニュースサイトの見出しの影響もあり、未だに、定期的に「大会で禁止されてるよね?」とかツイートを見かける。
ニュースサイトがいけないのはわかってるんだけど、ねぇ…
13. 2020年オフシーズンになってプロ、強豪がこぞってヒットボックスにチャレンジ
2020年のCPT選抜大会が終わって、一気にプロ選手、強豪のヒットボックスへのチャレンジが始まった。
リンタロー
なりくん
ヤナイ
ガチくん
シュート
ジョン
ときど
ももち
藤村
えいた
ナウマン
ジョビン
Punk
等々(敬称略)、全然状況把握が追いついてない。
2020、2021年は、もう猫も杓子もヒットボックス!って感じ。
とはいえ、やはりレバーに慣れた人にはなかなかハードルも高く、2021年7月時点で、半分くらいはレバーに戻ったみたい。
残り半分は?
流石、プロ、猛者と言われる人達。
結構な数の強豪が移行したみたい。
ときど選手、藤村選手は完全移行っぽいね。
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