見出し画像

関係人口とサクラチェッカー

 関係人口には、ドライな立場である。マスコミ受けもよく、政治家受けもよく、行政受けもいいが、中身は無いよね、という立場である。定住人口はゼロサムゲームであるが(A市住民かつB市住民ということはないが)、関係人口はそうではない(A市関係人口かつB市関係人口かつC市関係人口かつ……がありえる)。理念的には、関係人口は無際限に増えていく。結果をアピールしたい人々にとって、関係人口のこの特性は魅力的だろうが、「増えるしかない(減ることがない)人口概念」に真面目に取り組む必要がどこにあるの?という立場である。

 さて、Amazonで買い物をする人に対して、Amazonレビューが与える影響は絶大である。同じタイプの商品がズラッと表示されるAmazonにおいて「どれが良い商品なんだろう?」ということを判断するとき、消費者は真っ先にレビューを参考にする。

 レビューの数と星の数は商品ランキングに直結し、商品ランキングは売上に直結する。会社がレビュアーに商品を無料で配りレビューをしてもらう(レビューの数と星を確保する)なんてことはまだマシであって、むしろお金を払って「サクラレビュー」を書いてもらうことがまかり通っている。このような状況は、消費者にとって迷惑極まりない。消費者が読みたいレビューは、購入者が実際にその商品を使ってみたときのレビューであって、商品を使ったわけでもないのにお金をもらったから絶賛しているレビューではない。

 このような状況に対応するものとして「サクラチェッカー」というサービスがある。商品のURLを「チェッカー」に入れると、様々なデータから、レビューの「サクラ度」を算出してくれる。「この商品、なんか評価高いけど本当かな?」というときにこのサービスを使うと、その評価の真偽が分かるという優れものである。

 ところで、関係人口の指標はどのように決まっているのか。統一的な指標はないと思われるが、KPIとしては移住定住センターへの相談数、○○ツアーへの参加者数、××フェスティバルへの参加者数、ふるさと納税の寄付者数、といったものがよく使われている気がする。

 ここまでの文脈でだいたい察してもらえたと思うが、これらのKPIは、行政が相当額のお金を出して政策的に作り出した数字である(しかも多くの場合はコスパ度外視で)。そして、行政はこの数字を使って「うちの地域の関係人口はこれくらい増えました!」とか、「うちの地域はこれくらい興味を持ってもらっているんです!」とか言っている。定住人口が実際に商品を購入した(している)人の数だとすれば、関係人口として出てくる数字は、だいたいサクラだろう。サクラチェッカーにかけたら、いったいどれくらいの人が「本来期待される関係人口」として残るのか。

 関係人口の概念が、作り出された当初の意図とは異なった意図で概念が使われているのだ!とは言うことができるかもしれない。しかし、関係人口がここまで流行ったのは、概念がそれ自体として優れていたからではなく、自治体の基本的指標である「人口」と極めて親和性が高かったことに求められるだろう。冒頭に戻るが、マスコミや政治家や行政にとって、「関係人口」という言葉は使いやす過ぎるのである。

 誰か「関係人口のサクラチェッカー」を作ってくれないだろうか。自治体HPのURLを入力すると、様々なデータからその自治体の関係人口の「サクラ度」を算出してくれるようなサービス。うーむ、こんなサービスを作ったら、社会的に抹殺されそうだ。



いいなと思ったら応援しよう!