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映画「きみの色」聖地巡礼の旅 - 1日目(長崎市内)

映画「きみの色」の聖地巡礼をしてきた。作品の舞台は長崎県である。映画の感想を書くと長くなるので、今回は旅の振り返りだけにしておきたい。まず最初に、聖地巡礼をするきっかけとなり旅の同行者でもある、みらぼさんに感謝…!

注意:以下、ネタバレを含みます。あまり聖地巡礼の参考にならなさそうな話が中心です。

山田尚子監督が描かなかった長崎


旅のテーマとして「山田尚子監督が描かなかった長崎」というものがあった。きみの色は、登場人物の背景や負の側面など、描かれなかったものが多い作品である。

長崎といえば原爆投下を連想する人もいるだろうが、平和祈念像は劇中に登場しない。作品のテーマとはかけ離れているし、地元の高校生が遊びにいく場所ではないのであろう。それでも、描きたくなってしまうくらい象徴的なモニュメントである。トツ子=太陽=原爆=ファットマンという見立ては考えすぎか。

原爆投下という痛ましい出来事を描かないことで、安土桃山時代から江戸時代にかけてのキリスト教弾圧という別の悲劇が浮かび上がってくる。登場人物たちもそれぞれ「隠さざるを得ない」気持ちを抱えている。

明確に描かれてこそいないが、登場人物たちは、さまざまな問題に直面していた。主人公たちの過去や現在のネガティブな側面を、もっと悪意に満ちて描けば、ラストのライブシーンでもっとカタルシスがあったに違いないのに。

存在しているのに描かないというのは、もうそれは描いているのと同じことである。描かれていないことで、受け取る側に委ねられる余地が大きい。あと、関係ないけど「描く」と「猫(ねこ)」は似てる。ぜんぶ「猫」に見えてきた…。

山田監督、脚本の吉田玲子さんは描かないことを選んだ。描かれていないものは、それぞれ鑑賞者ごとに補ってほしいということだ。描かれないことで描かれる「差分」を埋めて、この作品の鑑賞を終わらせるため(もしくは続けるため)、現地に行かなくてはならなかったのだ!

聖地が広域すぎる


きみの色の聖地は、長崎市、五島市、南松浦郡、佐世保市にまたがっており、1泊2日で巡礼するのはとても難しい。「きみの色 アニメーションガイド」によると、スタッフは5日間かけてロケハンしている。

長崎市ではなく長崎県フィルムコミッションが協力していることもあり、各自治体に配慮したことで広域になってしまったのでは?と邪推している。長崎はいいところ多いから、どれも紹介したくなるのはわかる。

長崎空港から市内まで


ということで、今回の旅は長崎市内と五島市(久賀島)に絞った。

いくぞ長崎
ついたぞ長崎

長崎空港から長崎市内までリムジンバスで40分くらい。料金は(2024年現在)1200円。Suicaで乗れた。ちなみに、ルイ君はラストシーンで有川港から佐世保港に向かったと思われるので、飛行機は利用してなさそう。進学先は長崎県内?

長崎県営バス

ノープランの旅である。とりあえず出島や繁華街に近そうな新地中華街のバス停で降りる。

長崎日大高校デザイン美術科 卒業制作展


出島に向かっていると、「長崎日大高校デザイン美術科」「卒展やってます」という看板を持って歩く高校生が2人。みらぼさんが「どこでやってるんですか?」と声をかけると、会場まで案内してくれるらしい。

どんな作品を作っているのか、進学はどうするのか、おすすめのカフェ、など話を伺いながら会場に向かう。たぶん聖地巡礼とは関係ない長崎県美術館に到着。

はじまりとおわり

展示されていた作品のひとつ「はじまりとおわり」。これを見かけて、みらぼさんと盛り上がる。虹色のカーテン?惑星の軌道?船で旅立つ人と岸壁で見送る人をつなぐ紙テープ?ついつい拡大解釈してしまう。

みらぼさんと「これを見るために長崎にきたのかもしれない」と初日午前中のうちに満足する。この作品だけではなく(主人公たちと同世代である)高校生たちの作品には染み入るものがあった。

長崎浜市商店街方面


今回の旅は「作中と同じ構図で写真を撮ることにこだわらない」というテーマもあった。こだわりすぎると、見落とすものがありそうだから。作品のフレームから外れて、周辺こそ観察したい。そもそも、まだBlu-rayが発売されていないので、パンフレットや資料集で確認するのには限界がある。

観光通

この路面電車の駅、作中で「303」と書かれた路面電車が停車していた記憶がある。若いひとも多かったので、このあたりが繁華街なのであろう。

アルコア中通り


昼飯の場所を探しながら、しろねこ堂があるとされているアルコア中通りに向かう。眼鏡橋から近く、観光客向けの店もあるが、ブティックや美容院なども並んだ地元の商店街である。「たまこまーけっと」だ。

カステラアイス

きみの色ポスターが掲示されていたニューヨーク堂のカステラアイス。「バニラは搾りたてありますよ」ということでお願いする。美味かった!

招き猫や猫の置き物が置いてある店舗が多い。昼ごはんを食べた中華屋にも看板猫がいた。この商店街にある古書店が「しろねこ堂」と名前を付けるのは違和感ない。

皿うどん
しろねこ堂がありそうなエリア

このあとも街のいたるところで猫に遭遇した。作中において「猫」がなにを象徴しているのか。捻らずに考えると「自由」だろうか?ルイが進学後も「しろねこ堂」としてバンド活動を続けているなら、家業を継がない未来だってあるのかも。

平和公園


山田監督が描かなかった長崎のひとつ平和公園に向かう。アルコア中通りの近くから平和公園方面に向かう路面電車(3号系統)が走っていたので乗り込む。路面電車便利!

長崎原爆資料館

まず、長崎原爆資料館。欧米からきたと思われる人たちが真剣に見学している。長崎を舞台にした作品であったとしても「(容易に)描けない」時代背景があることを、あらためて思い知らされる。

このような「街の記憶」は、作品をつくるうえで意識せざるを得ないし、きみやルイの行動や言動に投影されているかもしれない。

平和祈念像

平和祈念像。思ってたより大きいんだろうなと思っていたサイズの、さらにその1.3倍くらい大きい。「右手は原爆を示し左手は平和を顔は戦争犠牲者の冥福を」である。

鍋冠山公園


初日最後の訪問地は、鍋冠山公園からドンドン坂のエリア。平和公園からすこし距離があり、山道も険しそうなのでタクシーで向かう。

ここで致命的すぎるトラブル!なぜか、ここから翌日までカメラの設定がISO12800に設定されていたのだ!ぜんぶザラザラである。サブのコンデジでも撮っててよかった…。夕暮れどきの長崎の街をみながら「最高のプランでしたね」みたいに話していたのに…。こんなミスをしていたとは…。

あまりに悔しいので最終日に鍋冠山を再訪した。ここからの写真は最終日に撮った写真も含まれます。

長崎市内を眺める
三菱長崎造船所
遠くに軍艦島

鍋冠山公園からは、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」でもある、三菱長崎造船所のジャイアント・カンチレバークレーンや第三船渠などが見える。とおくには端島(軍艦島)も。

自分は、このような産業景観に関する写真やコラムを中心とした同人誌「テクノスケープガイド」を発行しているので、鍋冠山公園は外せなかったのだ。きみの色と関係ないけど、これも聖地巡礼である。

ただ、産業革命といえばマンチェスターであり、マンチェスターといえばNew Orderだ!きみの色にすこしだけ繋がっている。

ドンドン坂


鍋冠山を下ってドンドン坂へ。長崎が坂の街だと実感する。有名なグラバー園もこのエリアだ。こんな見晴らしのいいところに邸宅を構えることができた、グラバーのすごさよ。

ドンドン坂
しろねこ
小曽根乾堂(こぞねけんどう)通り

きみとトツ子が奉仕活動のためゴミ袋を持って歩いていた小曽根乾堂通り。観光スポットを外れると閑静な住宅街で、たしかにトツ子の高校がこのあたりにありそうな雰囲気。

初日終了


朝から歩きどおしの身体で急坂を下るのは過酷であった。膝が笑っている。ここで限界!タクシーを拾ってホテルに帰還する。みらぼさんとは別々のホテルなので、1時間休憩してから夕食のため集合することに。

刺身の盛り合わせ

さすがに土曜日、飛び込みで数件断られてから、鉄板焼きもある居酒屋に落ち着く。五島で獲れた魚の刺身がうまい。本日の振り返りや、翌日のスケジュールを整理して解散。

宿に戻りながら、主人公たちの今後を考えてしまった。トツ子は県外の人間、卒業後は福岡に帰ってしまう可能性もある。ルイは進学。きみは将来どうするのであろう?長崎市内は観光客に溢れて活気があるように見える。この街で、どのように暮らしていくのだろうか。

聖地巡礼2日目は主人公たちがバンド練習をしていた「旧五輪教会堂」のある五島列島の久賀島に向かう。7時40分発のジェットフォイルに乗るため6時起床予定だ。帰宿してすぐに就寝。

ということで、2日目はこちらから!

聖地巡礼報告会


みらぼさんとXのスペース上で報告会をしました。文章だけではフォローできないことも喋ってますので、よろしければ以下のツリーから録音や資料をどうぞ!


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