映画館ってモーレツ
サポートライブのサウンドチェックが終わり、時計を見ると16:10。
もしかしたら間に合いそうだ。
実は気になる映画が渋谷で上映されている。
楽屋のメンバーに一言断りを入れて、僕は1人さっと地下鉄に飛び込む。
Googleマップの経路検索で、渋谷の何番出口に出ればいいかもリサーチ済みだ。
あっという間に目的地。さすが東京。
そして到着してみると、なんとお目当ての映画館は、僕タカハシコウスケが音楽を担当させてもらった「TOKYO COL-CUL COMEDY」もこの夏に上演された東京カルチャーカルチャーの入った建物だったノダ!
カルコメ観劇の時には使わなかったエレベーターに乗って8階で降りると、既にお客さんがチラホラ。
こじんまりしてそうだけど、中はとても綺麗。
公開予定作品のポスターを眺めたり、フライヤーラックから選んだ数枚を手に取っていたり、カウンターテーブルでケータイをいじっていたり、公開中作品の紹介コーナーのポップの写真を撮っていたり、みんな思い思いに上映までの時間を過ごしている。
ロビーの壁掛け時計を見ると、上映開始10分前だ。うんうん、ジョーデキ。
チケット窓口には既に3組並んでいるので、僕もその列に続く。
チケット窓口の方からは「〇〇(作品名)、一枚」「〇〇、高校生、大学生で二枚」って感じの会話が聞こえてくるのだけど、その会話からふと上映案内モニターに目をやると、彼らが買っているチケットの映画は揃いも揃ってどれも既に上映開始時間を過ぎてる作品だ。
あまり映画館に足を運ぶ機会がない僕にも、全席指定、各回入れ替え制というのがナウなルールである事は知ってる。
それでもみんな何故途中から劇場に入るのか…(まだ小さかった僕が父に映画館へ連れて行ってもらっていた頃は自由席だったし、途中から観始めても本編終了後そのまま劇場内に居座っていれば次の回を観ることが出来ていたけれど…)みんなこぞって途中から鑑賞するなんて、不思議過ぎる…見損なった作品の空白をいつどうやって埋めるんだろ…?
なぁんてぼんやり考えているとあっという間に僕の番。
飛び込みでチケットを一枚購入して、トイレでしっかり用を足してから、既にCMの始まっている劇場内へ。
自分の席も確認。幸い混み合ってはいない。これならゆったり鑑賞出来る。
いよいよ開始!ところが、映画が始まってからしばらく経つと、段々と尿意が向こう側からやって来る。じんわり。。。
目を細めると、なんとその尿意はニコニコしながら手まで振ってやって来るではないか。何故だ?上映前にちゃんとトイレ行ったのに!
鑑賞しているのは性的にセンシティブなシーンが多々ある作品だったから、途中でトイレに立とうものなら周りの人に変な誤解をされないか心配だし(流石に誰もそこまで気にしないか…)、第一ココは家じゃない。一時停止なんか出来ない。安くないチケット代も払っている。我慢だ、我慢しろ…!
そこからはニコニコ手を振って駆け寄って来る尿意から決して目を離さず耐えた。鼻先同士が触れそうになる距離までやって来たが、我慢した。
上映終了後の男子トイレで、隣のおじさんの微かな視線には一切動じず、それはそれは深く小さく息と声を壁に向けて漏らしながら、僕はいつもの倍以上の時間をかけて用を足したのであった。
ところで、肝心の映画はと言うと、とてもさびしくて、ささくれ立ってて、でも潜在的にとても前向きでせつない女性がしっかりと描かれていて好感が持てた。
久しぶりに訪れた映画館。やっぱりロビーからあの特殊で独特な空気がそこにはあって、沸々とモーレツに刺激的だった。
また、モーレツをもらいに映画館に来よう。ライブハウスのある青山一丁目に向けて、渋谷の街を歩きながら思う。
勿論、次は事前トイレをモーレツに徹底して。