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なぜ今、Well-Beingが注目されているのか ―国際的な価値観の転換
●2030年から「SDGsからWGsへ」移行
ウェルビーイング学会が3年前に発行したウェルビーイングレポート日本版によれば、国際社会の尺度の変遷を俯瞰すると、1930年以降はGDPの時代、2015~2030年はSDGsの時代、2030年以降のSDGsの次の尺度は感染症と武力衝突の脅威を共に実感した国際社会の総意として、国連生誕100年(2045)までの国際社会の物差しは、人と社会に寄り添うことのできるウェルビーイングへと移行するという。
ちなみに、新型コロナウィルス感染症の対応に当たるWHOが、国際機関との議論に基づいて2021年にディスカッションペーパーを発表し、「ウェルビーイングを国際アジェンダの中心概念として捉えるべきである」と主張した。
一国の観点から見ると「GDPからGDWへ」、国際目標の観点から見ると「SDGsからWGs(Well-being Goals)へ」の移行である。
ウェルビーイングの頭文字の「W」が最上位の価値観として位置づけられ、人と人、人と地球の動的な良い状態を目指す視座に立ち、「負の遺産を将来世代に残さない」という姿勢から、「正の遺産を将来世代に繋いでいく」という積極的な未来姿勢へと発想を大きく転換させることが、次の世代の新しい尺度に求められる役割である。
●幸せを測る標準と日本の順位
福井県立大学の高野翔准教授によれば、現在の国際基準のウェルビーイングや幸福度の測定方法は、1961年にハードレー・キャントリルが開発した“キャントリルの階梯”と呼ばれる主観的ウェルビーイングの測定方法を主に採用している。
人生をハシゴと見立て、0段目はあなたにとって「最低の生活」、10段目はあなたにとって「最高の生活」。
あなたの生活は今、ハシゴのどの段階にいるかを各個人が自己評価する方法である。
ギャラップ世論調査では、この測定方法を用いて、
⑴今現在、ハシゴの何段目に立っているか
⑵5年後には、ハシゴの何段目に立っているか
の2つの設問によって、現在と未来の主観的ウェルビーイングを尋ねている。
そして、⑴の現在が7段目以上且つ⑵の将来が8段目以上の人々を「ウェルビーイング実感が高い」、⑴の現在が4段目以下且つ⑵の将来が4段目以下の人々を「ウェルビーイング実感が低い」とし、個人レベルでは人々の生活満足度や充実度を、集団レベルでは社会の健全度を見える化した。
例えば、国連機関が実施している世界幸福度調査の世界順位も、この測定方法の結果に基づいて公表されている。
ちなみに、2019年の結果では、日本は155ヶ国中58位で先進国の中では下から2番目であった。
翌年の結果でも153ヶ国中62位と低迷し、北欧諸国が上位を占めている。
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