水岡不二雄著『児相利権一「子ども虐待防止」の名でなされる児童相談所の人権蹂躙と国民統制』の警告

「こども基本法」が浮上した背景には、過去5回、国連の児童の権利委員会(CRC)から日本政府に出された国連勧告がある。日本の左派NGOや日教組、日本弁護士連合会などが強調している国連勧告の中に、彼らにとって都合の悪い勧告が含まれている。児童相談所を中心とした「社会的養護」利権にかかわる問題である。

国連勧告とその背景

 まず、この問題に関する2019年3月の国連勧告(日本の第4,5回合併定期報告書に関する総括所見)を抜粋しよう。

<家族環境>
 「家族を支援し、強化すること」「子供の遺棄および施設措置を予防する」「親との個人的関係および直接の交流を維持する子供の権利が定期的に行使できることを保障する」
<家庭環境を奪われた子供たち>
 ⑴ 多数の子供たちが家族から引きはがされているとの報告があり、その引きはがしは司法令状のないままですることができ、しかも児童相談所に最大2ヶ月収容されることになること
 ⑵ 多数の子供たちが、不適切な水準にあり、児童虐待の事案が報告されており、しかも外部による監督と評価の機構がない施設に依然として収容されていること
 ⑶ 児童相談所がより多くの児童を受け入れることに対する強力な金銭的インセンティブを有する疑惑があること
 ⑷ 施設措置された子供たちが、その生みの親との接触を維持する権利をはく奪されていること(以下、略)
<子供の代替的養護に関する指針(国連総会決議)に対する強い要求>
 ⑴ 子供が家族から引きはがされるべきか否かの決定に際して、義務的司法審査を導入し、子供の引きはがしについて明確な基準を設定し、そして子供たちを親から引き離すのは、それを保護するため必要で子供の最善の利益にかなっている時に、子供とその親を聴聞したあと、最後の手段としてのみなされるのを保障すること
 ⑵ 子供の速やかな脱施設化および里親機関の設置を保障すること
 ⑶ 児童相談所において子供たちを一時保護するやり方を廃止すること(以下、略)

 このような国連勧告が出された背景には、「児童被害を撲滅する会」など、児童相談所に家族を破壊された被害団体が国連の同委員会に2回提出したレポートが影響を与えたものと思われる。反日左派団体は国連勧告を自分たちの主張を正当化するために利用し、このような児童相談所の家族破壊に関する国連児童の権利委員会の事実認定と勧告が出ると、児童相談所の拡大・強化を支持する日教組や日弁連などは、従来の国連に対する態度を、手のひらを返したように無視する戦術を展開している。
 児童の権利条約第18条には、「締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。父母又は場合により法廷保護者は、児童の養育及び発達についての第一次的な責任を有する」と明記されている。

家族破壊による「子供の商品化」

 児童相談所は、警備な冤罪「虐待」事案を口実に家族から切り離した子供たちを、児童養護施設などの「社会的養護」施設に流し込むが、虐待死のような凶悪事案は一向に根絶されない。児童養護施設に強制入所された子供たちには、児童虐待防止法第12条によって面会禁止処分が加えられることもあり、子供は家族から断絶され「人工孤児」となる。
 これにより、社会的養護を提供する児童養護施設や特別養子縁組などの利益集団が、家族から切り離された子供たちを使って経済的利益をむさぼっているのである。ちなみに、NPO法人は特別養子縁組1件で200万円の利益を得るという。一方、子供たちは、児童養護施設職員による性的暴行に晒されている。「子供の最善の利易」の保障が求められている児童養護施設が利権のとりことなって、家族破壊による「子供の商品化」に拍車がかかっているのである。
 もともと、児童福祉法の下で利権化した児童養護施設の業界は、戦争孤児が成人した後、空きベッドを埋めるため「子供よこせ」運動を展開していた。児童相談所はもともと敗戦直後に戦争孤児をケアするためにできた行政機関で、戦争孤児が成人するとともにその本来の機能を失った。しかし、その後も存続し、経済の高度成長期には不登校児など細々と扱っていたが、1980年代冒頭の臨調行革の中でリストラの嵐に翻弄された。
 そこで、厚生省が「児童虐待」に着目し、これを児童相談所に担当させることにして、息を吹き返した。戦争孤児時代の児童福祉法第33条をそのまま使い、児童の権利条約第9条1項には以下のように書かれているにもかかわらず、この条項に違反して、軽微な冤罪の「虐待」事案で、家族から子供を引きはがし拉致を強行し、これによって全国で家族破壊が広がっている。

 「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りではない。このような決定は、父母が児童を虐待しもしくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。」

人権侵害が横行する児童相談所

 児童相談所の「一時保護所」では、子供たちを学校に通わせず、性的暴行、向精神薬投与など数々の人権侵害が横行し、そのため国連児童の権利委員会から前述したように閉鎖勧告が出されたのである。児童相談所の年間予算には「一時保護見込み数」(通称「拉致ノルマ」)が組み込まれており、予算額を達成できるだけの数の児童を家族から引き離す経済的インセンティブ(人々の意思決定や行動を変化させるような要因)を持つことは国連児童権利委員会も指摘している。
 児童相談所に「拉致」された後、多くの場合、子供たちは児童養護施設に送り込まれ、家族破壊が長期化し、子供が「家に帰りたい」と訴えても帰さない。その意味で、児童相談所は「社会的養護」利権への「取児口」(水岡不二雄・南出喜久治『児相利権:「子ども虐待防止」の名でなされる児童相談所の人権蹂躙と国民統制』八翔社、参照)の機能を果たしている。二階俊博前自民党幹事長の言う「児童相談所10倍化」計画が実行されれば、職員の定員を満たすために職員の質が著しく低下し、既に悪化の一途をたどっている児童相談所職員による問題行動に拍車がかかることが懸念される。

水岡不二雄一橋大名誉教授の警告

 それ故に、水岡不二雄一橋大名誉教授は児童相談所は増設ではなく廃止し、刑法犯罪に類する凶悪虐待事案は警察に移管すべきだと言う。児童相談所から「一時保護」の権限を奪い、純粋な育児支援機関に衣替えしないと、子育てをする家族は、わが子が奪われるのが怖くて行政の子育てサービスを利用できなくなると水岡名誉教授は警告する。
 数値比較で日本の「社会的養護」が遅れていると批判する人々は、日本の制度自体が著しく国際人権規範から立ち遅れている現実を決して見ようとはしない。この現実を厳しく批判した国連勧告を無視する背景には「社会的養護」利権への忖度があることは明白である。
 自民党の24条改憲案には、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される」と明記されており、高市早苗政調会長が構想する「家族基本法」の制定こそ喫緊の課題といえる。実親養育中心主義を明確に規定し、児童相談所が家族に介入し、子供を連れ去りが「親子の絆」を蹂躙している現状を改革しなければならない。

 

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