「判検交流制度」は「三権分立」違反
法務省法制審議会家族法制部会の委員には、法務省民事局長、最高裁事務総局家庭局長、法務省大臣官房審議官、東京家庭裁判所判事、同部会幹事には、内閣法制局参事官、法務省民事局参事官、最高裁事務総局家庭局第二課長などの裁判官(判事が検事に身分を変え行政官となる「判検交流制度」による行政出向者を含む)が多数含まれている。
同部会委員には「子供の利益」よりも、「(成人)女性の利益」などを優先する者が多く含まれ、審議が歪《ゆが》められている。例えば、福島瑞穂議員らと共闘する左派活動家の赤石千衣子氏は、「私のミッションはひとり親の声を届けていくということだと認識しております」と明言し、「安倍政権に女性たちからレッドカード」と書かれた横断幕を掲げて国会を包囲したデモ行進・集会に参加し発言している。
また、日本弁護士連合会副会長の原田直子弁護士は、「女性の側からの離婚事件を多く担当しているので、どちらかというと当事者的な発言になるかもしれません。…法規範は、(両親が)高葛藤で協議ができないケースの規範ともなるので、そのような事案に共同で養育せよと言っても難しい」(令和3年3月30日、第1回議事録)と述べている。
さらに、私が平成18年5月に東京都男女平等参画審議会委員に就任(現在まで17年継続)した折に、上野千鶴子氏らと共に800人の反対署名を集める中心的役割を果たしたお茶の水女子大学の戒能民江名誉教授(ジェンダー法学会理事長・夫の戒能通厚氏は「九条科学者の会」呼び掛け人)も、「私はジェンダー法学研究なのですが、具体的にはDVを始めとする女性に対する暴力と法の関係について研究してまいりました。その立場から…発言したいと思います」(第1回議事録)と述べている。
法務省に出向している裁判官は97人(平成28年)もおり、その一人である金子修民事局長(当時は司法法制部長)が審議会委員の決定に大きな役割を果たしたために、前述した委員の他にも、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションと共同でインターネットモニター調査を行って大々的なキャンペーンを行った早稲田大学の棚村政行教授やジェンダー学者、裁判の利害関係者などが多数含まれているのである。
法務省の民事局の幹部はほぼ全員裁判官であり、民事局長、民事局参事官、同総務課長・民事第二課長・商事課長・民事法制管理官及び民事局付(16人)を含む22人に及んでいる。さらに、法務省大臣官房審議官・参事官・会計課長・法制部参事官・法制部付・刑事局付や人事擁護局長・同局付・訴訟局長・同訴訟企画課長・民事訟務課長・行政訟務課長・訟務支援管理官・訟務局参事官・同局付(17人)・法務総合研究所教官・法務局長・同訟務部長・同部付(21人)など97人の裁判官が法務省の要職についている。
さらに見過ごせないのは、外務省に出向している裁判官も12人おり、領事局政策課ハーグ条約室や総合外交政策局、北米局、国際法局、国連日本政府代表部、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部などの子供の連れ去り問題と直接的な関わりの深い部署の要職についており、アメリカ、中国、カナダ、オランダなどの日本国大使館書記官も含まれていることである。
ちなみに、米国務省は2018年5月、国際結婚破綻時の子供の連れ去りに関する年次報告で、離婚などで国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めたハーグ条約の「不履行国」に日本を認定している。国連の「児童の権利委員会」も2019年2月、日本政府に対し、外国籍の親も含め離婚後の共同養育を認める法改正や別居親との接触を続ける方策を実現するよう勧告した。
『我、国連でかく戦へり』の著者である藤木俊一氏によれば、この国連勧告に対応している外務省の担当官に前述した要職についている裁判官がいるために対応が遅れ、国際的な「子供の拉致国家・日本」という非難を浴びているのである。
このような「判検交流制度」によって行政に入り込んだ裁判官が令和2年12月1日現在で159人おり、これにメスを入れ、著しい「三権分立」違反の構造を断ち切らない限り、子供の連れ去り問題の根本的解決はできない。