「包括的性教育」の歴史的背景・推進団体と問題点一クビー『グローバル性革命』による

   ●[性主流化]の政治的移行

 「グローバル性革命」は現在、社会の微視的な構造の段階まで降りてきた。 以下は、全世界の性主流化と LGBTI 政策執行の主なステップである。

1985 年:ナイロビで開催された第 3 回国連世界女性大会で性主流化が政治的 戦略的に導入された。
1994 年:スウェーデンで性主流化が政策のすべての次元で導入された。 1995 年:北京で開催された第 4 回国連世界女性大会で「性主流化」という用語 を使用するように圧力を行使し、これが国連の指導原則として採用され た。 ジェンダー正義が民主主義の構成要素であり、すべての国が、女性 の平等とジェンダーに対する国家政策を実施する義務があると宣言する 北京の行動綱領に 189 カ国が署名した。
1996 年:ノルウェーで性主流化をすべての政府省庁のための凡部署的な任務と して指定した。
1998 年:欧州委員会は性主流化の発展の報告書を発行した。
1999 年:アムステルダム条約が発効した。 欧州共同体条約第 2、3 条は加盟国 に積極的な平等と差別禁止政策を実行する義務を付与した。第 13 条 1 項 は、「性的志向」を根拠に差別することを禁止したが、「性的指向」という 概念が初めて国際法に導入された。
1999 年:ドイツ内閣は性主流化を「指導原理であり、様々な分野にまたがる重 要な政治的課題であると宣言した。
2003 年:すべての政治領域と主導的な研究領域と知識を収集する領域との専門 家の教育分野で性主流化を支援するために、「ジェンダー能力センター」 (Gender Competence Center)ベルリンのハムボルト大学で開所された。 GCC の第 1 代は、2011 年にドイツの憲法裁判所の裁判官に任命された。 2007 年:「高等教育でのジェンダーの側面」というプロジェクトは、省主流化ド イツの高等教育システムの融合させ、「ジェンダー予算」戦略が採用さ れた。
2010—2013 年:「同性愛嫌悪に対抗した行動綱領」がドイツの 連邦及び地方政府の政策の一部となった。
2013—2014 年:ドイツの左派/緑の党が主導権を握っている連邦州は公教育の中 で全ての年齢や教科科目における LGBTI のライフスタイルに対応するよ うに教える方向に転換した。 ドイツ連邦政府内閣の決定で性主流化が政治の指導原則がされた後、 これに応える法律が、ドイツ連邦州で可決された。 

●「親の養育権」を明記した世界人権宣言

 世界人権宣言(第 16 条 3 項)と欧州人権憲章、そして多数の国家の法律が 親の手に子供の養育の権威が付与している。 なぜなら、原則的に、親は子供を愛し、彼らのための責任を負い、彼らの幸福のために犠牲にする存在であるか らである。
 欧州人権憲章第 1 追加議定書第 2 条には、以下のように記述されて いる。「 誰も教育を受ける権利を否定されてはならない。 国家は、教育と教えに関す る機能を遂行することにおいて、親が自分の宗教的・哲学的信念に基づく教育と 教育を実施することができるように保障するために、親の権利を尊重しなけれ ばならない。」
   民主的な観点からも包括的性教育は正当化できない。  左翼の主導者は、 「制度化への行進」、つまり革命的な目的を達成するために立法化を試み、政府 の財政支援プログラムを利用することができるよう推進した。 これは西欧のすべての国家で起きたことである。 わずか数十年で国連や欧 州連合などの国際機関は、伝統的価値体系を転覆させるための権力の中心地と なった。
 彼らは、結婚と家族のための社会的・文化的、法的、道徳的前提条件 を埋めてしまうことができる財源と文化革命のノウハウを持っていた。 これは、 西欧主流メディアは、このアジェンダを支持し、彼ら自身が文化革命の目標の ために世論を操作する役割に大きく貢献していたので可能となった。

性の価値を転覆したキンゼイの核心的役割

 性の価値転覆の主な役割は、犯罪者であり、サドマゾヒ ストであったアルフレッド・キンゼイが主導した(『グローバル性革命』2 章参照)。彼は、 性教育教科書で重要な「性科学者」として扱われている。 ミリアム・グロスマン博 士は、『あなたが私の子供に何を教えているのか』(You’re Teching My Child What?)という優れた著書で性教育の偽りと危険性について、そしてアル フレッド・キンゼイの核心的役割について、次のように記述している。
 「性教 育におけるキンゼイ博士は、自動車界におけるヘンリー・フォードのような存在 である。彼は人間の性の新しいモデルを構築した建築家である。これは、現代社 会では伝統的道徳は無意味で破壊的であるという彼の信念に基づいたモデルで ある」
 1956 年、キンゼイが死亡した後、彼の後継者ポール・ゲブハルトはインディ アナ大学のキンゼイ研究所を導き、キンゼイに精通したワーデルポメロイと共 にサンフランシスコの最初の性学科と性教育の主要な教育機関である「性高等 研究所」を設立した。

性愛化を主導した国際家族連盟と「性の権利章典

 その後、間もなく、家族計画連盟の元役員であったメア リー・カルデロンが「包括的性教育」を最初に提唱した米国「性情報と教育委員会」を設立した。 彼女の側近であ るレスター・コケンダルは 1976 年に、「性の権利章典」を著述したが、これは国際家族計画連盟とユネスコの性革命アジェンダに影響を及ぼしており、 1990 年の国連の児童の権利条約の前身とされる。
 「性の権利章典」は、子供が親の価値観に関係なく、出生時から全ての性 的な情報を得ることができる権利と性的活動に参加する権利がおり、自発的で あり、合意によるすべての形態の性行為をすることができる権利があると主張 する。
 わずか数十年前に歓楽街でも目の当たりにすることができ、子供たち が知るべきではない不自然で、歪み、異常で、忌まわしい性行為が今となっては 義務教育の教材となってしまったのである。 ドイツでは、国際家族計画連盟のドイツ支部である連邦保健教育センター (BZgA)と性教育研究所が数百万ドルの予算で学校や幼稚園での性愛化を主導 している。

エイズによる「包括的性教育」の正当化
 
  公教育での包括的性教育を正当化させた一つの重要な原因は、1980 年代、後天性免 疫不全症候群(AIDS)の出現であった。実際、ドイツの政治家たちには、「国民 の福祉を増進し、それらを害悪から保護する」と自分たちの宣誓を実践すること ができる非常に簡単で容易な機会があった。 彼らは国家の権力を利用して、結 婚生活を除く性的節制および配偶者に対する貞操がエイズとその他のすべての 性病予防に 100%効果的であることを理解させる機会があった。
 また、同性愛 に比べて異性愛は、エイズにかかる確率を減らすことができることを国民に理 解させる機会でもあった。 しかし、彼らは、エイズに触発された警告のメッセ ージを最も若い年齢の学生を避妊の専門家にするために使用され、性病が爆発 的に広がっているにもかかわらず、コンドームの使用を通じた「安全なセックス」 という偽りの認識を植えつけるために利用した。
 最近の性教育担当者は避妊具セットを持って学校を訪問し、子供たちにプ ラスチック性器にコンドームを装着させる練習をさせ始めた。 今、彼らは入り 口に足を踏み入れた。 グラフィックスと立体資料、映画、ロールプレイ、性行 為に対して明らかに言葉で表現を強要することにより、伝統的道徳基準を無力 化させ、子供の羞恥心の感覚を破壊し、すべてのタイプの性行為をするように、 特に自慰行為をように子供を刺激した。

●「包括的性教育」の主役国際家族計画連盟の驚くべき年次報告書

 「包括的性教育」と中絶および性規制緩和の主役を担ったのは、全世界 180 カ国に支部を置 いた国際家族計画連盟である。この団体は、2010 年の年次報告書では、次のよ うに報告した。
•2 千 2 百万件の妊娠中絶
•1 億 3 千 1 百万件の避妊手術
•2 千 5 百万件の HIV 関連サービス
•3 千 8 百万組に保護を提供
•6 億 2 千 1 百万個のコンドーム配布
•8 万件の不妊手術を若者に施行
 国際家族計画連盟は、全世界的に数百万件の妊娠中絶手術を施行するだけで なく、違法な部分中絶手術を通して得られた胎児の体の一部を販売したりした が、これは 2015 年 7 月からシリーズで放映された潜入ビデオを通して明らかに なった。

世界的な「包括的性教育」推進団体

  全世界的に子供や青少年の性愛化を促進させる包括的性教育推進団体は次の通りである。

・青少年のための代弁者たち
・グートマーハー研究所
・国際家族計画連盟
・全国教育協会
・人口委員会
・性教育フォーラム
・米国性情報と教育委員会
・ユネスコ
・国連人口基金
・世界性の健康協会
・青少年仲間教育ネットワーク

   上記のすべての機関は、世界的な性革命の代理人たちとして男性と女子の結 婚に基づく家族という社会的基盤を破壊するために、性的な道徳規範の解体を目指す「  包括的性教育」を推進したが、「包括的性教育の重要な7要素  」には、以下のようなものが含まれている。

●「包括的性教育」の重要な7要素

⑴ ジェンダー:ジェンダーと性の違い、ジェンダーに対する偏見、固定観念と 不平等の兆候と結果
⑵ 性と生殖に関する健康と HIV:コンドーム使用法、他の形態の避妊法(緊急 避妊法を含む)、合法的で安全な中絶
⑶ 性的権利や性的市民権:性と生殖保健に対する権利に基づいたアプローチ、 使用可能なサービスと資料にアクセスする方法、様々な性同一性の支持・選択・ 保護・安全で健康で楽しい方法で性行為を自由に表現して探求する権利
⑷ 楽しさ:若者たちの性に対する肯定、ジェンダーと喜び 、自慰行為、情欲と 関係性の多様性、最初の性的経験、喜びに伴う不名誉な烙印に対する対処
⑸ 男性と女性に対する様々な種類の暴力探求:加害者であり、暴力の予防の同 盟として男性/少年
⑹ 多様性への肯定的な視野:差別を認め、若者たちが単純な寛容性を越   え、 より進むことができるよう支持する。
⑺ 異なる関係(例えば、家族、友人、性交、ロマンチックな関係など)

クビーが列挙した「包括的性教育」の疑問点

   これに対するクビーの疑問点を列挙すると、 第一に、本当に親になるか否かを自ら決定することが、全世界の若者たちが希 望する最大の願いであるのか? 決してそうではない。 世論調査は非常に異 なることを述べている。 殆どの若者たちは、安定した家族を望んでいる。
 第二に、すべての年齢層の若者たちが本当に性と生殖に関する権利、特に自慰 行為を通して情欲の器官として、自分の身体を知って行くように、大人たちから 指導を受ける権利があるのか?彼らは男性と女性という固定観念なしに、彼ら が望むいかなる方法をもって、これらの性欲を満たす権利があるのか? 決して そうではない! そのようにすることは、親の権利と宗教の自由を損なうもので ある。 なぜなら、すべての宗教は、若い世代に伝えなければならない性道徳の 価値を教えるためである。
 第三に、包括的性教育と「安全な性的関係」というメッセージが HIV やその他 の性的関係を通して感染する病気から人々を保護してくれたのか? 決してそ うではない。性愛化は梅毒と淋病の発生率を再び高め、多くの若い女性を永久的 に不妊にする性感染症の爆発的な拡散を生んだのである。
 第四に、このような性教育を受けた子供たちは、性的羞恥心が破壊されてい ない他の子供よりも性的暴行から自分をもっと保護することができるのか? 決してそうではない。
 このような子供たちは親交と性的な接近の違いを区別 することはできない。 特に情緒的に困難を抱えている子供たちは、なおさら のことである。 最後に、全世界の若者たちが自分のまだ生まれていない子供を殺害できる 「権利」を持つ必要があるのか? 決してないのである。 彼らは生命とすべて の個人の尊厳性を尊重するように育てられなければならない。





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