NY総領事館主催ラウンドテーブル講演(2017年8月25日)


 第三国における歴史問題の一つとして全米各地に設置されている慰安婦像・碑問題について問題提起したい。私たちは昨年「歴史認識問題研究会」を設立したが、慰安婦問題、歴史教科書問題が第三国でも関心を集め論議を呼んでいる。
 これらはいずれも日本のマスコミが事実をゆがめた誤報によって中国、韓国の反発を招来し、歴史問題が外交カードとして利用されてきた。慰安婦像・碑は全米各地に設置され、ユネスコ「世界の記憶」遺産として、「日本軍『慰安婦の声』」が9カ国によって共同申請され、まもなく国際諮問委員会の下部機関である登録小委員会で登録が勧告される可能性が高い。
 私は全米各地に設置された慰安婦像・碑の現地調査を行い、それによっていかに平穏な地域コミュニティーに不毛な対立と亀裂がもたらされてきたかについて関係者ヒアリングを行い、実態調査を踏まえて、関連著書を2冊出版しました。
 慰安婦像・碑の設置をめぐって、全米各地で公聴会が開催され、激しい議論が展開されてきました。特にカリフォルニア州のグレンデール市周辺では、慰安婦像・碑の影響が子供にまで及び、歴史認識問題に起因するいじめに発展した事例が2014年5月9日、いじめられた子供の母親グループによって、「グレンデール慰安婦像問題と在米日本人の状況報告」と題して、日本の国会議員に配布されました。
 更に昨年9月1日に、同グループの代表がロサンゼルスで中曽根弘文参議院議員と面会し、安倍総理への嘆願書を手渡し、総理に届けられました。翌日に前述した報告書の改訂版が公表され、これらの事実を踏まえて、私は日本の月刊誌『WiLL』11月号に、「総領事、なぜ子女を助けてくれないのですか」と題する論文を敢えて寄稿しました。
 更に昨年10月31日に、ニュージャージー州の女性グループ「ひまわりJAPAN」が同様のいじめ被害報告を公表し、本年1月12日、「NY/NJ地区に発生している歴史問題を原因とするいじめ等の問題報告」がニューヨークとロサンゼルスの総領事館宛に提出されました。同報告は1月18日、同グループから片山さつき議員にも手渡され、政府・外務省に届けられました。
 これを受けて、2月16日に自民党国際情報検討委員会・外交部会・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会合同会議が開催され、海外子女のいじめ対応に取り組む必要性が確認され、歴史認識問題研究会がいじめのアンケート調査を行うことになりました。
 このような動きを受けて、日本政府は2月22日付で米国連邦裁判所に意見書を提出し、「グレンデール市の慰安婦像は確立した外交方針への妨害であり、逸脱である」と主張。慰安婦像脇の碑文に「20万人の女性が強制的に連行され、性奴隷となることを強制した」などの歴史的事実に反する文言が明記されていることに抗議しました。
    慰安婦碑文は2007年の米下院の慰安婦対日非難決議に基づき、「20万人の慰安婦が日本軍によって強制連行され、性奴隷にされた」と書かれていますが、日本政府の見解は、次の通り。①慰安婦数の確定は困難であり、「20万人」というのは具体的裏付けがない数字である②日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」は確認できなかった③慰安婦が「性奴隷」であるとの表現は事実に反し不適切である。
 ちなみに、ソウル大学の李栄薫名誉教授は昨年8月、慰安所は事実上の公娼制として運営されていたこと、「強制連行」という主張は大部分が口頭記録で客観的資料としての信憑性が貧弱であること、慰安婦性奴隷説について再検討がなされる必要があること、朝鮮人慰安婦20万人説も根拠がなく、最大5000人程度と見るのが合理的であると指摘しています。

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