ガブリエル・クビー『グローバル性革命一自由の名によって自由を破壊する』⑵

キッシンジャー「人口減少戦略」報告書

国連で最も強力な影響力を及ぼす国である米国の主要な関心事は世界人口減少 であり、今もそうである。そのようになった原因は 1974 年に発表されたキッシ ンジャーの報告書である。この報告書は新しい人口減少戦略の伝記となった。 1974 年、ニクソン大統領の安保補佐官であり、ロックフェラー家の友人であ ったヘンリー・キッシンジャーは、「国家安保研究メモ 200」を作成したが、そ の当時、その報告書は極秘文書であった。その報告書では「アメリカの安保と国 際的な利益のための世界人口成長の意味」という題が付けられていた。キッシン ジャーはジョンD.ロックフェラー三世の人口委員会と緊密に協力したが、この 戦略的な文書で彼はアメリカの国家安保は後進国の人口調節の処置を導入する ことに左右されると主張したのであった。

中絶・避妊プログラムを推進した国際家族計画連盟・国連人口基金

 このようなグローバル戦略を実行することにおいて国連の最も重要なパートナ ーの一つは国際家族計画連盟(IPPF)であった。1974 年、国際家族計画連盟は ブカレストで開催された第一回国連コンファレンスにおいて既にアメリカ代表 団の一部として参加した。しかしこのカンファレンスは計画したように成功的 ではなかった。なぜなら、ソ連地域の国家と共にバチカンと第三世界の国家がこ の処置を「避妊を通じた帝国主義」であることを明らかにしたためであった。
 アメリカは開発援助と中絶及び不妊施術プログラムをパッケージにすること に全く厭わなかった。これを実行する機関は国連人口基金(UNFPA、過去の国連 人口活動基金)であった。例えば、UBFPA はペルー女性たちが自分たちの同意な しで、しまいには、知ることができないままに不妊施術を受けるようにし、中国 の残酷な一人っ子政策を導入することに相当寄与したのであった。 しかし、開発援助と中絶及び不妊施術プログラムをパッケージにして様々 な国に対して脅迫することは十分ではなかった。なぜなら、このようなものはた くさんの抵抗を呼び起こすからである。

アメリカの「避妊による帝国主義」

 それで、そのようなプルグラムが貧しい 国に対する人道主義的な援助としてみられる戦略が必ず必要であった。また、ア メリカの「避妊による帝国主義」を高い出産率で苦しめられている貧しい女性た ちの緊急な必要に応える人道主義的な対策として作ることができる洗練された 言語学的な技術が必要であった。 「健康、選択の自由、女性の権利の強化、満たされない必要、質的なサービス、 生殖保健」のような単語は人口減少戦略を広めるために用いられた言葉である。
 この戦略によると、地球上のすべての女性はアメリカと国連の機構を通して生 殖保健サービスを提供することによって、何人の子供をもつことを望むのか を選ぶ必要がある。この用語は避妊薬、「完全な」堕胎、そして不妊施術を隠す ための「トロイの木馬」である。 他の方式で同意を得ることができない明白な目的を達成するため曖昧で肯定 的な単語を使用することは巧妙な悪知恵である。万一、生殖保健が「完全な肉体 的・精神的・社会的福祉の状態」を意味しているとすれば、だれがこれに対して 論争することができるのか。

国連世界女性会議(北京)最終文書

 1995 年、北京で開かれた国連世界女性会議の最終 文書である行動計画では、以下の引用された用語の定義があらわれるが、 この定義がいかに巧妙であるかを見せている。 生殖保健とは人々が満足し安全な性生活をすることと出産能力をもっており、いつそ してどれほど頻繁に出産することができるかを決定する自由をもっていることを意味して いる(Section 94)このような定義は女性が中絶を通して自分の生殖潜在能力を統治することがで きる自由な選択権があることを意味しているのか?
 以上の定義を心に刻みながら出産に関する権利は、既に国家の法律で、国際人権文書と その他、これに同意する文書から既に認められた人権を含んでいる(Section 95)。 上記の条項に言及されている国際人権文書ではどのようなものがあるのか? 生殖保健は人間の性に対する知識不足と不適切であり質の低い情報とサービス等のような 要素のために世界人口の中で多くの人々に知らされていない… 特にほとんどの国々で青少年たちは情報の不足と関連機関に対する接近性が低く弊害が生 じている(Section 95)。
 ここで言うサービスとは中絶手術を意味し、「被害を受けやすい青少年たち」 の「情報不足」とは西欧式性教育をすべきであることを意味しているのであるか。  女性の人権は性と生殖に対する健康、脅威、差別、そして暴力からの解放を含み自分の性 と関連した問題を自由に責任あるように統制して決定することができる権利を含んでいる (Section 96)。 女性の決定できる自由とは性的関係をもつことができるパートナーの数と性 的指向や中絶までに拡大することができるのか?
 
国連人口会議(カイロ)一中絶・コンドームに反対する教皇との闘い

 1994 年、カイロで開かれた国連人口会議では「生殖保健」に対する大きな局 面の転換が起きた。会議の準備期間中、このような広告があらわれたのである。 「教皇が産児制限を禁止するー数万名が飢餓に陥る」。 このような非難は2011 年にも教皇ベネディクト 16 世を攻撃の目標として多少修正された形態としてあ らわれた。「教皇がコンドームに反対する。―数百万人が AIDS で死ぬ。」当時、 アメリカの副大統領であったアル・ゴアはこの会議の主要な人であった。彼は第 三世界のすべての問題が人口増加にあると主張したが、それは、即ち、産児制限 と中絶制限を意味した言葉であった。 イスラム国家を除外して、彼の最大の敵は、教皇パウロ 2 世であった。教皇は 自分のすべての権威と影響力をもって毎年全世界 4 千万名以上の胎児の命を奪 う中絶を防ぐために集中したのである。しかし国連とアメリカの財団、そして彼 らが行った全世界的なメディアのキャンペーンは中絶を支持したので 教皇のメッセージは大きな成果を生み出すことはできなかった。 人口関連政策はアメリカの行政部の政治的な支援によって、大小の資金援助を受けながら持続している。ロナルド・レーガン とジョージ W・ブッシュ大統領が生命神話的な政策を支持した反面、ビル・ク リントンとアル・ゴアは生命に反する政策に尽力を注いだのであった。しかしバ ラク・オバマ大統領と彼の国務長官であったヒラリ・クリントンほどフェミニス トや同性愛問題のために急進的に戦ったアメリカ行政部はなかった。(10 章参照)

クリントン「グローバル保健計画」一世界の富豪が中絶を支援

 2010 年 1 月 8 日に開かれた国際人口開発会議においてクリントン国務長官は 新しい「グローバル保健計画」を発表した。「私たちはアメリカの外交政策の核 心となる新しいプログラムである『グローバル保健計画』を始めました。私たち は何よりも妊婦と児童の死亡率を低くし、数百万の望まない妊娠を防ぎ、HIV 感染を防ぐための努力の一環として全世界の保健を増加するために 6 年間 63 億 ドルの新規資金を投入します。この計画は疾病と戦い健康を増進するための新 たな接近方法を採択します」。
 このような人口調節プルグラムの背後には全世界の最大の富豪たちがい る。2009 年 5 月、デービッド・ロックフェラー三世、ビル・ゲイツ、テッド・ タナ―、ジョージ・ソロス、マイケル・ブルームバーグ、ワーレン・バフェッ トのような数十億ドルの富豪たちがニューヨークに集まり、世界の最も大きな 問題が、人口過剰問題であることに意見の一致を示した。この世には貧しい 人々が非常に多いので彼らはそのような貧しい人々の数を減らすことを望ん だ。生殖保健サービスは、そのような目的を遂行するための一つの方法であっ た。この目的のために彼らは「善のクラブ」(The Good Club)を設立したので ある。このクラブの会員として 363 億ドルの資本をもったビル&メリンダ・ゲイツ 財団は貧しい国の人口減少を目標とするプログラムに集中していた。ビル&メ リンダ・ゲイツは低額のシステムであるシノプラントⅡの生産のための資金を 支援していた。この薬は「ジャデル」という薬の中国複製薬で、皮膚の中に移植 され、最大 5 年間、女性の妊娠を防ぐことができる。 2012 年 7 月 11 日、億万長者であったメリンダ・ゲイツは家族計画サミット に参加するためにロンドンを訪問中、イギリス政府との面談をもった。この寄付 者たちの会議において裕福な国々は、貧しい国々の女性と少女の避妊と不妊プ ログラムに必要な資金として 21 億ユーロを募金した。このプログラムを実行す るパートナーとしては、世界最大の中絶機関である国際家族計画連盟と国連人 口基金であった。

●「グローバル人種主義」を批判した人口調査研究所長

 2011 年 5 月、国連人口基金は新しい人口成長予測値を発表したのである。彼 らは 2050 年まで全世界の人口は 93 億1千万人になり、2100 年までに 100 億1 千万人になると主張しながら、今が人口を減らす時であると主張したのである。 人口調査研究所の所長であったスティブン・モシャは、女性たちが避妊薬を要 求しているという国連人口基金の主張は、一言で偽りであり、実際に女性たちは 自分と家族のためにより良い保健体系を切望していると言った。
 「彼らのこのよ うな訴えは生命を救うことよりも、地球上の人口を減らすことだけに関心をもつ 国連人口基金や他の機関の人口統制論者たちから無視された・・・・国連人口基 金やその他の人口統制機関は人口過剰という幽霊で人々を脅かし募金したため に世界的に出産率が減少した理由について真実を報告することをためらうので ある。彼らは私たちに貧しい開発途上国で子どもが多く生まれるということだ けを言うのである。このような論理は、裕福な人たちだけが子どもを生むことが できるという主張をするようなもので、これはあたらしいグローバル人種主義 である。私たちは人口調節プログラムに対する資金支援を中断しなければなら ない。その代わり、私たちの関心をマラリア、発疹チフス、そして HIV/AIDS15の ような本当の問題に向けなければならない」

●「性同一性・異性愛の解体」を目指し、生命尊重派を排除

  エジプトの首都カイロで国連人口会議が開催された翌年の 1995 年に国連は北 京で世界女性会議を開催した。このような行事はマーガレット・ピータスーが 言った「選出されない者たちへの権力移動が行われる」代表的な事例である。 大義的民主主義において政治権力は選挙を通して移譲され立法府によって統制 されるが、グローバル政府においては国際的な官僚主義と非政府機構(NGO)間 の協力を通して作用する。このような NGO らは世界的にとても活発に活動して いる財団から不透明な資金援助を受ける急進的な少数者たちの特殊利益団体の 場合が多いが、彼らはこれを「参与民主主義」と呼んでいる。
 北京で開催された国連世界女性会議は急進的なフェミニストたちが掌握した 会議であった。彼女たちの長期的な目標は「性」という単語を「ジェンダー」に 変えることである。彼女たちには以下の単語は次の3つの目的を達成するため に必ず必要である。
・男性と女性の実質的な平等
・男性と女性という性同一性の解体
・規範的・強制的な異性愛の解体
 デール・オリオリは『ジェンダーアジェンダー』(The Gender Agender)という 本の中でどのようにフェミニストたちが国連の世界女性大会を戦略的に、そし て操作された方法で押し通して行ったかを詳細に記述している。この行事は 女性環境開発機構(WEDO)と国際家族計画連盟が準備し開催しているが、主に反 生命団体だけが参加の許可を得たが、生命と家族の保護を主張する団体は許可 を得ることができなかった。従って、女性と男性の相互補完性、女性の特別 な使命としての母性、または家族を代表する人たちは少数に過ぎなかった。

フェミニストに屈服したバチカン・イスラム代表団

 オリ オリが記述したフェミニストたちの方法とは以下のようである。
・偽造された翻訳文
・「根本主義者だ」という式の名誉棄損
・投票方式の変更
・最後の瞬間に行事 1 日延長
 行事延長で貧しい国から参加している代表団らは飛行機チケットを再び購入 することができないために予定された会議期間後には出国しなければならず、 最終投票から排除された。結局、バチカンとイスラム代表団らの強力な反対にも かかわらず、行動綱領は満場一致で採択されたのである。 結局、家族保護を訴えた諸団体は連合して「私たちは同意することはできない」 という題目のチラシを配布した。
 北京の行動綱領は先進国と開発途上国に住ん でいる殆どすべての人たちの価値と文化、伝統と宗教的信念に対する直接的な 攻撃であった。この文書は人間の尊厳性と尊重せず、家族を破壊しようとし、結 婚を完全に無視し、母性の重要性を最小化し、性的に堕落した態度をもたせ、同 性愛とレズビアン主義、性的淫乱と児童の性的関係を助長し、子どもに対する父 母の権利を剥奪しようとした。 しかし、家族のために共にした団体の連合は フェミニストたちに勝つことができなかった。

●「性主流化と生殖保険」という新しい概念一中絶が人権?

  依然と人権憲章の道徳的な権威をもっている国連の傘下、北京の行動綱領を法 的な拘束力をもつ国際条約に転換し、社会的な現実にしようとする文化革命的 な戦略が試みられている。 しかし問題がある。彼らは古い葡萄酒を新しい皮袋に入れることに成功し、人 口統制という長きに亘る目標を選択の自由、人権、そして健康という高尚な価値 を付けた「性主流化と生殖保健」という新しい概念をもたらしたのである。
 それにもかかわらず、彼女たちは中絶を国際的に認められる人権の一つである と宣言しようとした目標には到達することができず、北京の行動綱領を支持す るいかなる合意も導出することができなかった。なぜなら大部分のカトリック とイスラム国家はバチカンと共に強く抵抗したためであった。それで、これから は個別国家政府が「性及び生殖保健」に対するプログラムを実行することができ るように圧力を行使することができる機会を探す時であると判断している。
 生命を生かす権利から生命を死なす権利を得て新しい国家的な権利を創造す ることはどのように可能であるのか。どのように中絶が人権であると宣告され、 多くの国家がそれに追従するようにすることができるのか。どのように主権国 家とその国民たちの抵抗を避けることができるのか。どのようにこれらすべて が合法の下に成し遂げることができるのか。これらが彼女たちの関心事である。
 グレン・コブで開催されたネットワーク担当者会議 での答えは簡単である。それは、ネットワーキングを通して「グローバルな 活動家たち」が集まることは可能である。国際的な活動家たちが共に集まらなく ても統制されずにチームを形成することができる。このことが 1996 年、ニュー ヨークのグレン・コブで起きた。国連人口基金の高位人事たち、国連人権高等理 事たち、女性の向上のための国連の部署ら、そして国際家族計画連盟と生殖権利 センターなどのような選ばれた NGO らが国連で最も影響力のある人たちと共に 集まったのである。
 彼ら彼女らの考えは人権を規定した国連の条約の中でどれ も中絶、或いは生殖権利を人権として規定してことがないにもかかわらず、人権 という名で人口減縮戦略をより一層強化することであった。事実、国際条約は主 権国家の合法的な代表たちが一つ一つの単語に気を付けながら用いて合意して 制定した文書であるがために、むやみに再解釈、或は拡大解釈することができな いにもかかわらずである。一方、国連加盟国の人権政策執行内容をモニタリング する監視機構として以下のようなものがある。
・人権委員会
・女性差別撤廃条約
・児童の権利条約
・市民的及び政治的権利に関する国際規約

●「ソフトな規範」を「強固な法律」に変える

 グレン・コブに集まった彼らは「変えることができるソフトな規範」を「変える ことができない強固な法律」に変えることに条約監視機構、或は遵法委員会と 呼ばれる機構を積極的に活用することに合意したのである。このような監視機 構らはより一歩進んで法的拘束力のある条約を発展させてアップデートして再 解釈したりもした。このような機構らは執拗な反復を通して性及び生殖保健に 対する権利を既に存在している人権条約の拘束力のある要素という間違った印 象を作り出すことに成功した。
 人権委員会の再解釈の例として次のようなものがある。
・移動の自由は中絶のために海外に行くことができる自由を主張することに 使用。
・私生活の自由は妊娠と中絶に対して決定することが出来る自由を主張するこ とに使用。
・表現の自由は年齢に関係なくすべての女性たちが「生殖保健サービス、避妊、 性教育」に対する情報を得ることが出来る権利を合法化することに使用。
 このような機構らのネットワークは国連のエイジェンシー、国連のプログラム、 監視機構、NGO らで構成され、リレー式の協力を継続するように企てられた。 条約監視機構は技術と財政が豊富であった。会員国らが条約監視機構の構成員 を指名するが、この構成員たちはそれ以上、会員国らに責任を負う必要がない。 戦略の核心は人権条約が要求していると主張されたものを個別国家が遵守して いるかに対する報告書を要求することができる委員会の権限を最大に活用する ことである。
 委員会らは個人から請願を受けることができ、独立的に加盟国を調査するこ とができる。そうなれば、各国はそのような状況を改善するためにどのような 措置をしたかに関する報告書を提出しなければならない。 条約監視過程において、NGO らの影響力は持続的に増加している。
 NGO らは国 連加盟国の各委員会の勧告事項を遵守しているかを確認する個別国家次元で監 視するする監視者の役割をしている。各国は地方の NGO らをこのような過程に 含ませるよう圧力を受けている。NGO らは女性差別撤廃委員会のような委員会に 代替報告書を提出したりもした。また他の NGO である生殖権利センターには 45 名の専任者が活動しているだけではなく、他の NGO 及び寄付者たちと緊密なネ ットワークを形成している。
 生殖権利センターは国連人口基金から資金援助を 受け、追加として様々な団体から毎年 1000 万ドルの援助を受けている。 国連の機構らと各国別に活動を行っている NGO らは国家の民主主義的な意思 決定の過程を無視して、中絶、青少年の性愛化、LGBTI 権利と関連した課題を実 行することをためらう国家に対して巨大な圧力を行使する。
 このような国家に は、マルタ、リトアニア、ナンビア、ウガンダ、ハンガリー、そして最近では フィンランドが含まれている。 NGO のロビイストたちは、委員会に「生命に対する権利」を「中絶に関する権 利」に変えるための論拠と戦略を提供する。彼ら彼女らは妊婦の死亡率を減少 させることにおいて産婦人科的な医学や衛生及び産後ケアー施設の改善を要求 しない代わりに中絶に対する禁止をなくすことによって女性の健康が「安全な 中絶」(生殖保健サービス)を通して増進することができると主張する。

●「堕胎を合法化」するための戦い

 母胎に 生きている胎児を殺すことができる女性の権利を承認する拘束力のある国際条 約はどこにもない。それにもかかわらず、このようなことが持続的に強調され このための圧力を行使しているのである。 このような圧力は思考の混乱、戦略の曖昧さ、主にバチカンを対象とする敵 への卑下を通して行われ、各国の多様な状況に段々と強くなっている。堕胎が 禁止となっている国においては、まず、とても制限された場合に限って治療的 な堕胎を合法化するための戦いが起こる。
 このために肉親から性暴力を受けた 9 歳の少女が妊娠の危機にさらされている等のメディアの口に合う特別な事例が 引き合いに出される。彼らは、「だれがこの可哀そうな少女に堕胎を禁じる無慈 悲なことをしなさいと言えるのか」と訴える。 時には、NGO 出身の信望の厚い法曹人が各国の最高裁やヨーロッパ人権裁判所 のような最高裁判所の裁判に至るまでこの件で戦う。そうすれば、高等裁判所 では会員国と下級裁判所に対してかつて有効であった法律を損なうか、翻すこ とになるまでに新しい法律解釈の指針を課すのである。

国連は「希望の光」から「グローバル性革命」の急先鋒に変化

 2016 年 12 月 19 日、国連総会は新しい職責を作るための投票をした。それ は性的指向とジェンダーアイデンティティ(SOGI)の独立専門家という職責で あるが、84 対 77 という小差でその職責を設けることになった。 バンコク出身 の国際法教授であるビット・ムタンルブホンは、SOGI の世界的な権利を向上さ せるための国連の最高の支配者になる。 彼の最も緊急な任務は LGBTI に対する 暴力を終息させることであるが、彼の目的はこれをはるかに越えることである。
 それは同性愛の非犯罪化、精神医学の専門家が同性愛やトランスジェンダーを 精神疾患の一種と扱わないようにすること、個人の主観的な性同一性が公的な 法律文書に反映されることを可能にすること、社会のすべての次元において SOGI の宣伝活動を通じて子どもたちと社会を洗脳させることである。国連 193 ヶ国会員国に圧力を加える重要なメカニズムは「汎世界的定期検 証(Universal Periodic Review)である。これを通して、国連は加盟国に SOGI の権利に関する 1,300 以上の勧告を出した。 これらの勧告は、主にカナ ダ、オランダ、スペイン、フランスなどの加盟国の少数のグループから提出す ることである。
 汎世界的な定期検証は「性権利主唱」、或は ILGA のような同性 愛運動家団体によって乱用されたが、それはグローバル LGBTI 運動の「西部開 拓」のようであった。 なぜなら、議論的な問題に対して満場一致、或は多数 の支持さえも要求せず、無条件にまず問題を提起する方が勝者になるからだ。 イデオロギー的な誘惑、生殖保健プログラム、児童の性教育、コンドームの 配布などと共に入ってくる財政的な支援とつながっている国内政治家たちに対 する圧力、そしてすべての種類の文化的活動が次の段階が可能になるように その雰囲気を作って行くのである。
 女性差別撤廃条約(CEDAW)のハンガリー人の会員であるクリスチナ・モルバ イは条約監視機構らが論争が多い社会的な目的を強制するために定期的に自分 たちの領域を超えていると公開的に非難した。ここでは堕胎に対する権利、売 春の合法化、児童と青少年に対する性教育の拡散、少女たちを対象にした避妊 広報、開発途上国におけるコンドーム無料配布等が含まれている。 第二次世界大戦以降、国連は全世界の人々の希望の光であった。しかし、現在、 国連は危険な文化革命の先鋒となっているhttp://www.un.org/esa/gopher-data/conf/fwcw/off/a--20.en(2014. 1 


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