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台本全公開!2025年1月9日体験型ミュージカル『ホンジツ島のマジックアワー』


2025年1月公開!ミュージカル『ホンジツ島のマジックアワー』台本



1.大陸


舞台を囲むようにして客席が配置されている。舞台はこの世のどこかにある、人里離れた島、ホンジツ島。時間は夜。島人達は明日行われる年に一度のお祭りに向けて、綱引き用の縄を編むなど準備を進めたり、酒を交わしてそのまま眠りについている。

照明は暗く、間接照明程度のランプがところどころあったり、島人達の腰にランタンがぶら下がっている程度。

開場中は、お客さんは「明日の祭りのためにやってきた観光客」として扱う。島のルールとしてスマホ禁止を呼びかけたり、縄作りを手伝ってもらったり。一箇所では、島に伝わる伝説を語り聞かせる紙芝居などが開催されている。

舞台美術は基本的には、三角や四角のブロックや、パネル、木の板などだけで、それを積み木のように組み合わせることで、家を表現したり、ベンチや、時には波や風、木々や灯台などを表現する。

所々に隣の島から流れ着いたブイやペットボトルなどの海ごみが溜まっている場所がある。

客席のそこらに、島のモニュメントのパーツ(積み木)が散らばっていて、キャストの導きのもとそれをお客さんが舞台の真ん中に積み重ねていくことでモニュメントが完成したら、開演する。

そこに旅から帰ってきた風のアロンソが大きな荷物を下ろす。


M1 「Awakening of the island 」

アロンソ 「マジックアワー! マジックアワー。マジック・アワー。マジックアワー。うーん、いい響きだねぇ。マジックアワー、知っているかい? それは太陽が海の向こうに沈む時。そして! 海の向こうからまた顔を覗かせる時。この世界は、同じ光に包まれる。全てを繋いでいくような温かい光。早起きすれば朝にも拝めるんだけど、みんなは大体、夜の始まりにこの光に包まれる。マジックアワー。全てが繋がる時間。」


ダンサーたちが出てきて、道や景色を表現する。


アロンソ 「あたしは世界中を旅してきた。時には何千何百という選択肢の中から一つの道を選んだり、永遠と続く一本道を全力で走ってみたり。時には誰も踏み入れないような抜け道に入ってみたり。その先に待っているのは、思いもかけないような絶景・・・の時もあれば、コンクリートに囲まれた行き止まりだってある。」


アロンソ 「まるで人生そのもの。人生は、アテのない旅のようなものだ。」


ダンサー、ハケ。

登場人物たちがゾロゾロとアロンソの周りに集まってくる。


アロンソ 「果てしなく、儚く、そして予想がつかない。」


アロンソ、水筒から水を一口のむ。


アロンソ 「そんな旅の中、あたしはある日この島に訪れたんだ。この島の名前は・・・。」

全員 「ホンジツ島。」

アロンソ 「これは、繋がることを恐れた島がマジックアワーに同じ方向を見つめるまでのお話。」

アロンソ 「登場人物? それは、君と、君と、君、君たち全員だ! えっ? 私にはできないよーって? 大丈夫! (親指を立てて) 君ならできる。」

アロンソ 「さあ、まずは! みんなが生まれるもっともっともっと前に島の火山が大噴火するところから始めようじゃないか! さあ火山が爆発するぞ!」


シロハラクイナが二羽噴火の予感を察知して、辺りを慌ただしく飛び回っている。

火山の爆発が起こる。お客さんにも火山や火山灰が覆い被さる。

視界が少し晴れてくると、キラキラと光るものが島の浜辺に埋まる。ロボットだ。

そこに一艘の船が島に到着する。バードのようにも見えるが、この船は島に初めて訪れた開拓者たちのようにも見える。



2. 港の前 朝

シーンはいつの間にか祭りの日の朝のホンジツ島に。あたりには酔っ払ったまま寝ている島人がちらほら。


M2 「Thanksgiving 」

シロハラクイナが二羽、祭りの朝を祝福するように、あたりを舞っている。

そこへ島町のパトリオが三線を演奏しながらやってくる。


パトリオ
$${\textit{「朝日がのぼり 降り注ぐ富}}$$

$${\textit{大地に芽吹くは 天まで伸びる}}$$

$${\textit{よだれ滴る緑と 黄色い葉}}$$


$${\textit{朝日がのぼり 降り注ぐ富}}$$

$${\textit{漁師は旅立つ どんぶらこっこ}}$$

$${\textit{よだれ滴る虹色と 灰色サンゴ}}$$


$${\textit{年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島}}$$


$${\textit{平穏こそが ホンジツ島」}}$$


曲は彩りを増し、島人たちが起きてくる。

各々持っているもので音を鳴らして、音楽を奏でていく。

島人たちは、祭り用のシャカシャカなるフリフリ(マツケンサンバのやつ)をお客さんの1/10くらいに渡して一緒にサビでは振ってもらう。客席中がシャカシャカなるイメージ。

演奏が盛り上がり、パフォーマンスは次第にアクロバティックになっていく。


島人たち
$${\textit{「朝日がのぼり 島人が集まれば}}$$

$${\textit{手には盃 叫ぶよカリー}}$$


$${\textit{年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島」}}$$


 一同、ポーズ拍手


島人 「船が来たぞー!」

スレッター 「おっ、そろそろ新たな設計図が届く頃だな。」

パトリオ 「スレッター爺さん、またガラクタが島に増えるのかい。」

スレッター 「ガラクタじゃない。夢のかけらだ。」

パトリオ 「あの信号機だって赤しか光らない。」

スレッター 「光があるだけいいじゃろ! この木々に囲われた島じゃ、ろくに光も入ってこない。」

パトリオ 「海の向こうなんて見えなくていいんですよ。」

スレッター 「それに若造。」

パトリオ 「パトリオです!」

スレッター 「若造のパトリオ。」

パトリオ 「そんでもって島長です。」

スレッター 「若造のパトリオそんでもって島長。よーく覚えておけー。夢っていうのはな、いつだって何の変哲もないガラクタから生まれるんだぞ。」

パトリオ 「はいはい。あまりこの島に変なものを増やさないで・・・あっ、ちょっと!」


スレッター、船の方に向かう。


リベル 「あの船・・・人が乗ってる!」

パトリオ 「はぁ。また観光客か。」

リベル 「あっ、お父さん。」

パトリオ 「いいかリベル、あんまりよそ者とは仲良くするんじゃないよ?」

リベル 「はい。ねー、あの船にママ乗ってるかな?」

パトリオ 「ほら、祭りに戻るぞ。」

リベル 「・・・はい。」


お客さんも交えてお祭り騒ぎが始まる。


パトリオ
$${\textit{「朝日がのぼり 降り注ぐ富}}$$

$${\textit{足の裏には 島のかけら}}$$

$${\textit{何にもないから 何でもわけ合う」}}$$


一同、ストップモーションに。


パトリオ
$${\textit{「果たして島に 新しい風を吹かせるべきか」}}$$


 一同、祭りの綱引き用の大綱を持ってくる。


全員
$${\textit{ 「年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島}}$$


$${\textit{東が勝てば 平穏が訪れ}}$$

$${\textit{西が勝てば 改革が}}$$

$${\textit{果たして今年はどんな年か}}$$


$${\textit{東 東 東 東}}$$


$${\textit{年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島」}}$$


バードが船の上からスマホ片手に島を眺めている。


フロム 「ほー! これがホンジツ島かぁ!」

バード 「ねー。帰りたーい。」

フロム 「なに言ってんだ。今日からあの島で暮らすんだぞ。」

バード 「汚れたくないよ。」

船乗り 「ボク? 携帯は島では使えませんよ。」

フロム 「ほら携帯ばっかいじってると、友達できないぞ!」

バード 「いらないよ! どうせ仲良くなれないもん。」

船乗り 「携帯使えないから、ママとパパから離れちゃダメだよ。」


目の前を親子が通り過ぎる。


フロム 「ほら! (大袈裟に頼もしそうなポーズをして)バードには父ちゃんがついてるぞ!」


 他の乗客にぶつかる。


フロム 「あー、すいません!」

バード 「いいよ。もう。」


スマホを投げ捨てる。


バード
$${\textit{「朝日がのぼり 新しい朝}}$$

$${\textit{毎日同じ さみしい朝日}}$$

$${\textit{出発の合図さ 一人っきりの1日の」}}$$


汽笛の音がなる。


フロム 「バード! 先に降りてなさい。」


リベル
$${\textit{「毎年変わらず」}}$$

島人たち
$${\textit{「東が勝つ」}}$$

スレッター
$${\textit{ 「今年こそは」}}$$

島人たち
$${\textit{「東が勝つ」}}$$

全員
$${\textit{ 「さあ 島の運命が決まるぞ」}}$$


一同、大きな綱を準備する。島の神席のお客さんにも手綱(てぃーんな)を渡す。

東に男の島人(パトリオ、スレッター、島人5人)、西に女性の島人(リベル、ボヤジュ、島人5人)。明らかに東側に忖度があるような配置だが、この島では平穏を守るべく、忖度が暗黙の了解で行われている。


全員
$${\textit{「年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島」}}$$


東側がリードしていく。


全員
$${\textit{ 「年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島」}}$$


アロンソが面白がって、座っている島人たちを西側に連れて行って引き始める。

バードは地図を持ってぐるぐる回っている。

西側に傾き始めたの気づいて、スレッターはしれっと綱から手を離している。


全員
$${\textit{ 「年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング ホンジツ島」}}$$


ちょうど綱が真ん中まで戻ってきた時に、バードは遠くの方で何かが光り輝くのを見つける。

次の瞬間、バードは東側の島人にぶつかり、ドミノ倒しのように東の引き手が倒れていく。

西側が勝利する。


アロンソ 「勝ったぞー!」

リベル 「えっ、嘘。西が勝っちゃった。」

スレッター 「やったぞ! リベル。改革の時がついにこの島にやってきた!」


島人たちは、初めての出来事に驚きつつも、革命の訪れにワクワクと喜びを分かち合う。

パトリオと数人の島人は集まり、深刻なことが起きたと深刻な顔をしている。


リベル
$${\textit{「風の声に耳たてて}}$$

$${\textit{信じ 前に進む}}$$

$${\textit{この海を越え 向こうの世界}}$$

$${\textit{今年は見れるの」}}$$


綱をみんなでモニュメントに巻き付け、飾りつける。お祝いの踊りを踊る人も。


全員
$${\textit{ 「年に一度のお祭り騒ぎ 綱をひけ}}$$

$${\textit{サンクスギビング}}$$

$${\textit{サンクスギビング}}$$

$${\textit{サンクスギビング}}$$

$${\textit{今年は島に 改革が}}$$


$${\textit{サンクスギビング}}$$

$${\textit{ホンジツ島!」}}$$


一同ポーズ、拍手。


パトリオ 「(バードに)きみ、よくもやってくれたね。」

バード 「あっ、えっあの・・・。」

フロム 「あー! すいません。うちの子がご迷惑をおかけしてしまい。」

パトリオ 「おかげで祭りは台無しだ。」

バード 「あっ、その・・・」

スレッター 「祭りの結果はいかなる場合も覆らない! これは先祖代々受け継がれてきた掟だ! もちろん知ってるな?」

パトリオ 「それはそうですが・・・!」

スレッター 「それもこれもない! 掟は掟だ! 改革の時だ!」

フロム 「あのー、本当にすいませんでした。」

パトリオ 「これがどれだけ重大なことかあなた分かってないでしょう!」

フロム 「すいません。うちの子ほんとおっちょこちょいでして。ほらバード、ごめんなさいだ。」


バードにスポットライト。一同ストップモーション。


バード
$${\textit{「いつも見てた 人のざわめき}}$$

$${\textit{無音の世界で}}$$


$${\textit{聞こえるのは ただ心の叫び}}$$

$${\textit{大丈夫 大丈夫じゃない」}}$$


「僕を見て。」

「ごめんなさい。」


アロンソ 「少年よ。」

バード 「えっ?」

アロンソ 「旅を楽しめ。」

バード 「旅を?」


フロム 「バード? バード! ほら、ごめんなさいだ。」

バード 「・・・ごめんなさい。」

フロム 「いいかげんしっかりしなさい。そんなんじゃまた友達できないぞ。」


バード、そっぽをむく。


パトリオ 「全く、これだからよそ者は。」

スレッター 「若造のパトリオそんでもって島長!」

パトリオ 「そんでもっては余計です!」

フロム 「あのーシマチョウっていうのは、あの焼肉のあれですか・・・」

二人 「うるさい!」

フロム 「すいません。」


アロンソは興味深そうに口論を聞いている。


スレッター 「今年はこの木々に囲われた島に改革が訪れる。いよいよこの島が変わる時がきた! わしはこの時が来るのを何十年も待ち続けてきたんだ。」

リベル 「わたし西側が勝ったの初めてみた。」

スレッター 「わしも初めてじゃ。今年は何かが起きるぞ〜!」

パトリオ 「はあ、今年は何かが起きるのか〜。」

リベル 「何かが起きる。」

バード 「何かが起きる・・・。」


バード
$${\textit{「いつも感じる 何かがぼくを}}$$

$${\textit{待っている}}$$


$${\textit{見ようとすると 離れていく}}$$

$${\textit{教えて どこなの}}$$

$${\textit{ボクの居場所」}}$$


バードは遠くの方でさっきも力強く光っていた光を見つける。その光はどこか不気味でもあるが、嫌じゃない感じがした。


バード 「なんだ、あれ。」


バードは光の方向に進んでいく。


スレッター 「さーて! そろそろわしは帰って、この天才的な頭脳を使って島に改革を呼び込む発明を生み出さねば! (フロムに)君! さっきは怒鳴って悪かったな。よかったら後ほどわしのラボによりなさい! 大発明の数々を見せてあげよう!」


スレッター帰っていく。


パトリオ 「やれやれ。さっ、あなたたちも観光したらとっとと帰るんだぞ。」

フロム 「あー、いや、実は転勤でここにきまして。」

パトリオ 「転勤? どんなご職業で?」

フロム 「先生です。」

パトリオ 「はー。 そういえば先生が変わるんだったね。では、よろしく頼みますよ。」

フロム 「はい! 任せてくださいよ〜。 さっ、いくぞバード。(バードがいないのに気づいて)あれ、バード? バード!」

パトリオ 「はぁ、これだからよそ者は。」


 パトリオ、フロムはバードを探しにいく。


ボヤジュ 「何かが起こるね〜。」


ボヤジュ、家に帰っていく。



3.朝日の昇る浜辺


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