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本の紹介📚|言葉の展望台

言葉とはなんて曖昧なんだろう。
何気ない日常のありふれたコミュニケーションの中で、ふと感じる違和感やモヤモヤはないだろうか。
発言が自分の意図と異なるとられ方をしたり、知らず知らず相手に何かを強いてしまっていたり。
会話の背後には、話し手と受け手の立場や関係性、意識や価値観、言葉の発せられた状況や文脈など、実に様々な要素が渦巻いて、言葉の外に強い力を発生させる。言葉が言葉の通りの意味で交わされている場面なんて無いのではないかと思うくらいに。それは時に目に見えぬ暴力ともなり当事者を傷つけ悩ませることもある。
筆者はこうした日常のコミュニケーションに潜む言外の力学を見逃さず、哲学的な分析を通じて丁寧に解きほぐしていく。その視線がとても繊細で優しく、引き込まれてしまう。
誰もがこれだけの解像度を持って言葉を扱うことができればもっと世界は優しくなれるかもしれないが、あまりに日常に当たり前にありすぎる営みがゆえに、そこに生じる歪みに気づくことは難しい。だが、知ろうとし考えることはできる。
本書は言語やコミュニケーションを哲学的に分析する評論である一方で、筆者の日常や感情を描くエッセイでもある。扱われるエピソードは筆者が実際に日々感じた疑問や痛みでもあり、時に哲学的な批評では捉えきれないリアルな”気持ち”が綴られる。
その生きた想いがあるからこそ、このコミュニケーションに潜む問題は他人事でなく、私たち自身の問題として心に響き、考える原動力になる。

言葉の展望台
三木那由他|講談社

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