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本の紹介📚|星を継ぐもの

今さら何を語るまでもない、SFの金字塔。それでもあえて紹介するのは本作が真摯に”サイエンス”であると感じたからだ。
私のような素人が科学の定義に触れるのも恐縮だが、科学とはおおむね「観測された事象に対して、観察や実験といったアプローチを用いて正しいと思われる因果関係や法則などを見出していく」ようなものだと理解している。
世の中のSFを見ると、単に宇宙船やロボット、未来といったいわゆる”SF的な”ガジェットやシチュエーションを扱うもの(それはそれで大好きだ)も多いが、そんな中で本作はとびきり魅力的な謎の事象に対して、科学的なアプローチを通じて迫っていく過程そのものを軸にしている。それがとびきりワクワクするのだ。
ある日、月面の調査中に発見された宇宙服を着た遺体。しかし、その遺体はどこにも所属しない人間で、測定によると5万年前に死亡したものと判明した。無論、そんな昔に人類は宇宙に到達しておらず、宇宙服のような技術も存在しない。しかし遺体は紛れもなく人間である。
この謎を解明するため、物理学者ハントは様々な分野の科学者のチームを率いて調査を進めていく。解剖学、分子生物学や遺伝学、言語学などを通じ、遺体はどこから来て、5万年前に何が起きていたか、様々な仮説を戦わせ、データを蓄積し、解釈を重ねながら真相に近づいていく。そしてたどり着く真実のストーリーはあまりにダイナミックで、人間の強い意志の力が成し遂げたドラマでもあった。
緻密な科学的プロセスで進行するサスペンスと、壮大で熱いドラマのコントラストが爽快で、サイエンス的な面白さとフィクション的な驚きが強く結びついたまさしく「サイエンス・フィクション」。
読み終わるとこれ以上ないと思えるほど秀逸な「星を継ぐもの」というタイトル回収にも震える。

星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン|創元SF文庫

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