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KIRINキャリア教育活動(Day3, 4, 5)
前回の記事では、キリンビール仙台工場キャリア教育活動のDay1, 2についてまとめた。今回は、Day3からDay5までの内容と、このキャリア教育を通じて感じたことについて紹介したい。
Day3 とれいち仕込式
前回、収穫直前のホップ畑を見学させていただいてから約1ヶ月半が過ぎた9月中旬、この日仙台工場で行われたのは「とれいち」の仕込み式である。
この日は、遠野からキリンへとホップのバトンが渡される日。夏の猛暑や台風を生き抜いて遠野で立派に育ったホップを、今度はキリンがおいしいビールに仕立てる。
仕込み式は、遠野市長、遠野ホップ農業協同組合長をはじめとする産地の皆さんや、とれいちを販売する小売、流通関係者、メディア等が参加する広報イベントである。
遠野産ホップやとれいちにちついての説明、関係者の挨拶の後、工場内へと移動し、ホップの投入式が始まった。遠野産ホップIBUKIが手作業で仕込窯に投入されていく姿を沢山のカメラが見守る。
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仕込み式でとれいちの完成に期待を膨らませながら話す参加者の皆さんを見て、ホップ畑からとれいちを見守ってきた私はとても嬉しい気持ちになった。実際にホップをつくる農家の方や、キリンでとれいちの製造に関わる皆さんにとっては、ビールを飲んでいる人たちの喜ぶ顔を見たときの嬉びは相当なものだろうと想像する。
Day4 営業同行
11月5日、ついに待ちに待ったとれいちの発売日がやってきた。
この日は営業のKさんに同行させていただき、6軒のスーパーマーケットを回った。
スーパーでは売り場担当の方と相談しながら、とれいち売り場の立ち上げ、メンテナンスのお手伝いをした。お客様の導線を意識しながら、ぱっと目を引くように並べ方やポップを工夫する。
Kさんは、過去の商品の余ったポップや空き箱を巧みに使って、限られた時間の中で手早く工作を行っていく。
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営業の仕事を見ていて一番印象的だったのは、スーパーの方に売り場の相談をしているときだった。売り場には、お客様が多く通る場所や目に入りやすい場所がある。新商品や特に売りたい商品はそのベストポジションを狙うのだが、ここで大切になってくるのが、売り場担当者や他社とのコミュニケーションである。
メーカーの仕事は商品を作るところまでで、それを売るのはスーパーなどの小売店の役割だと思っていたが、実際の営業の仕事はもっと小売店やお客様に近く、密にコミュニケーションを取りながら行われていた。
進んで品出しを手伝ったり、他社にもフレンドリーに接するKさんの姿勢はとても印象的で、私の営業のイメージとは少し違っていた。
こうして日頃から関係を築くことで、徐々にお願いを聞いてもらえるようになるそうだ。
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とれいちを並べている間にも、とれいちを手に取ってくださるお客様がいたり、売り場の方からもとれいちはよく売れるから楽しみにしていたという声を聞くことができた。岩手県産ホップを使っているということで、東北の方に愛されている商品なのだと肌で感じることができた。
Day5 東北魂ビールプロジェクト品評会
仙台工場では、東北のクラフトブリュワーとタッグを組み、東北魂ビールプロジェクトという東北のクラフトビールを盛り上げるプロジェクトを行っている。このプロジェクトは、おいしいビールで東日本大震災の恩返しをしたいという思いから、2011年に東北のブリュワーたちによって立ち上げられた。キリンはこのプロジェクトでビールの成分分析を担い、ブリュワーが定量的なデータをもとにビールを分析する手助けをしている。
この日は、14のブリュワリーが集まり、フレッシュホップ「IBUKI」を使ったクラフトビールの品評会が行われた。キリンの分析値をもとに、ブリュワー同士がビールの出来や製法について意見交換を行った。
私たち学生も試飲させていただいたのだが、IBUKIのフレッシュホップという同じ原料を使っているのに、14種全てが異なる味わいであることに驚いた。ビアスタイルの違いや、ブリュワリーごとの設備、醸造のくせでバラエティに富む仕上がりになるそうだ。改めてクラフトビールの多様さと奥深さを感じることができた。
品評会で驚いたのは、ブリュワー同士が原料や製法をオープンにしていることである。自分のビールの肝とも言える情報をライバルに教えてしまっていいのかと驚いたが、ブリュワーさんいわく、「ブリュワー同士はライバルではなく、一緒に高め合う仲間」なんだそう。
こうしてみんなでおいしいビールを作ろう、日本のビールを盛り上げようという雰囲気こそが、クラフトビールの一番の魅力であるように思う。
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最後に
私がこのキャリア教育に参加したのは、将来どんな仕事に就きたいか、どんな人生を歩みたいかということを考えるためであった。8月から約4か月間様々な経験をさせていただき、そのヒントを得ることができたように思う。
参加前は自分に何ができるのかが分からず、働くことを恐れる気持ちがあった。しかし、「とれいち」に関わる方々が自分の仕事に誇りを持っていきいきと働く姿を見て、働くことがとても楽しみになった。
そしてもう一つ大きな収穫は、ビールが好きになったことである。
作り手の思いやこだわりを知ったことで、味や香りだけでなく、そのストーリーを含めてビールを楽しめるようになった。また、とれいちやクラフトビールを通じて沢山の方々と関わることができ、ビールを中心としたコミュニティのおもしろさを知ることができた。
最後に、このキャリア教育活動でお世話になったキリンビールの皆さん、遠野の皆さん、クラフトブリュワーの皆さんに心より感謝いたします。
普段関わることのない年代や職業の方々とお話しする機会は、大変貴重なものでした。
来年もとれいちの発売を楽しみにしています!!