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スキャナカメラmodel:【S】を製作しました
挨拶および製作背景
2024年、私は写真家として再び活動を本格化させるべく、新たなスキャナカメラを製作しました。それが、mode:【SEPA】です。
このカメラは、GT-F500をベースにした機台を使用し、Hasselbladのデジタルバックに対応したスキャナカメラとして仕上げました。
しかし、この【SEPA】は製作には成功したものの、安定稼働せず、実際に撮影できたのは数回のみでした。最大の理由はメイン基板の故障です。そのたびにGT-F500のメイン基板を入れ替える必要があり、安定運用には程遠い状態が続きました。
この故障モードは、スキャナカメラ化していないGT-F500の個体にも同様の症状が確認されており、基板のコンデンサ容量抜けなどが原因ではないかと推測しています。このため、GT-F500をこのまま使い続けても良い展開は望めないと判断するようになりました。
私の扱い方が悪いのも問題ですが、恐らくメイン基板が非常に脆い気がします。GT-F500ではなく、GT-S630型で作り直そうかと思います。今年は厳しいので、来年から頑張ります。 https://t.co/mqlDShW0Zw
— Takahashi Toshio (@takahashi1040) August 27, 2024
もちろん、コンデンサの容量抜けが原因であれば、コンデンサを交換することで解決できる可能性はあります。しかし、日々の仕事に忙殺される中で、細かい確認や修理に割く時間が取れませんでした。
さらに、憧れだったハッセルブラッドのデジタルバック化を実現したものの、重量の増加という新たな問題が発生しました。取り回しが予想以上に大変であることに気付かされたのです。具体的には、前回のSEPAはカメラ本体だけで約1.2kgの重量があり、これにハッセルブラッド本体やPlanar 80mm F2.8を組み合わせると、総重量は約2.7kgに達しました。この重さは、実用的とは言い難いものでした。
さらに追い打ちをかけたのが、「時間の流れを撮影する」というスキャナカメラのコンセプトについて、すでに先人が同様の試みをしていたことを知った瞬間です。この事実に衝撃を受け、改めて自分の方向性を見直す必要があると感じました。
世の中には、自分と同じことをやってる人はいるんだなぁと実感。私がやりたいことは視覚体験ではないですが、広義では同じなのかもしれません。https://t.co/khUP8LtYgE
— Takahashi Toshio (@takahashi1040) June 8, 2024
もちろん、先人が作り出した作品は映像から生成されたものであり、私が求める【写真表現】という範疇とは異なります。しかし、スキャナカメラ【SEPA】について振り返ると、前作である【Integration】から機能的なアップグレードは見られず、「写真作品を作るためのカメラ」というよりも、「ハッセルブラッドにマウントできるカメラ」という意図が強かったことは否めません。
機材の完成度を高めることに重点を置くのは決して間違いではありません。しかし、表現者として、「このままではいけない」「もっと表現の幅を広げたい」という強い意識が私の中で芽生えました。
その結果、新たな発想のスキャナカメラを作るための準備段階として製作したカメラが、スキャナカメラ【model "S"】です。
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【S】の真意
今回のモデル名を【S】とした理由は、以下の4つの意図に基づいています。
Second品:2024年度2作目のスキャナカメラであること。
Smallな筐体:重量と体積を抑えたコンパクトな設計であること。
Simpleな筐体:シンプルで無駄のない構造であること。
Subsequent:次につながる、あるいはつながった機体であること。
1〜3についてはすでに説明した通りです。
特に4について補足すると、これは先日投稿した「スキャナのサーキットベンディング化」へのつながりを意識したものです。今回のモデル【S】はシンプルな仕様に留めましたが、次回作ではこのサーキットベンディングを組み合わせた製品を目指したいと考えています。
特徴の一つとして、レンズをHasselblad VシステムからNikon Fシステムに変更しています。
この仕様変更は、イメージサークルが小さくなるため一般的にはデチューンと捉えられるかもしれません。しかし、レンズシステムを小型化することでカメラ全体の小型化に大きく貢献しており、今回のモデル【S】のコンセプトである「Small」をより際立たせるものとなっています。
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ただし、マウント部分を変更することでHasselbladレンズも使用可能です。ただし、その場合はやはり重量が増加してしまいます。そのため、本機種については個人的にNikon Fマウント仕様で運用するのが最適だと考えています。
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特徴の2つ目は、ピント合わせの機構です。【SEPA】をHasselbladマウント仕様にした理由の一つが、「ピント合わせや構図合わせを簡単にするため」でした。この利便性はぜひ引き継ぎたいと考え、今回のモデルでは新たな工夫を取り入れました。
具体的には、背面カバーを取り外し、ピント調整時だけフォーカシングスクリーンを設置する仕組みを採用しました。フォーカスを調整する際にスクリーンを取り付け、調整が完了したらスクリーンを外して背面カバーを装着するという流れです。どちらもマグネットで簡単に脱着できるため、位置ずれの心配はありません。
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この方法は、スキャナカメラ(2次元センサー)ならではの特性を活かしたもので、自分でも良いアイデアだと思っています。ただし、逆像になる点やイメージサークルの全体を確認できないため参考程度の調整にはなりますが、それでも十分実用的な仕上がりだと考えています。
サイズはほぼ同一ながら、筐体の重量が200g減少しました。また、【SEPA】ではHasselblad本体が必要でしたが、【S】では不要となり、全体的に大幅な軽量化を実現。レンズにもよりますが、約1.7kgの軽量化に成功しました。
この軽量化のおかげで、普段使用している大型の三脚だけでなく、トラベル三脚でも対応可能になったと考えています。もともと折りたたみ式のトラベル三脚で運用することを目指していましたが、耐荷重的には問題なさそうです。(ただし、トラベル三脚は安定性に欠けるため、しっかりとした三脚の方が安心なのは言うまでもありません。)
カメラが重いので、こういった折りたたみ三脚が役立ちます。
おわりに
今回のスキャナカメラは、「次につなげるベース機」として製作しましたが、その目的はしっかりと達成できたと感じています。ただ、正直なところ、これまでのスキャナカメラと大きな違いがないため、現時点では作例となる作品をほとんど撮影していません。
次回、このカメラをサーキットベンディング化したモデルと組み合わせることで、改めて作品として昇華させたいと考えています。その時こそ、新しい表現に挑戦できると期待しています。
★最後に宣伝です。
2024年11月23日、24日に開催されるOgaki Mini Maker Faireに、DIY Camera Teamとして参加します。
本作品は先ほど書いたように、過去のOgaki Mini Maker Faire 2018で得たサーキットベンディングの知識を活かして制作したものです。そのため、この作品のお披露目をOgaki Mini Maker Faireで行いたいという思いが強くありました。製作がなんとか間に合い、無事に皆様にお見せできることを嬉しく思っています。
それでは、来週の会場で皆様にお会いできるのを楽しみにしております。
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