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【実録と懺悔】カスの乗り換え案内

これは懺悔です。お許しくださいという思いを込めて書いています。

先日、用事があって東京のビルが立ち並ぶ、もうそれはそれは天まで届くようなモノがいっぱいいっぱい並ぶところに行ってきた。
歩道橋から望むビル群に、この景色ってすっごく「トォキヨォ」だなぁ~なんて思いながら用事をこなし、普段は行かない洒落たカフェで遅めのモーニングを食べ、雨穴さんの「変な絵」を読みいざ帰ろうと駅に向かった。

東京の中でもそんなにビルがない土地に住んでいる俺は、新鮮なビル風を喰らいテンションアゲアゲだった。
駅のホームに並んでいたそんな俺の元に、1人の女性が近づいて来る。
スマホを見ながら困っているような雰囲気だったので、電車の乗り換えで困っているのだと察した。
しかしこっちもこっちで東京に来たばかりで乗り換えなんて専用アプリ無しではまともに分からないし、しかもそんな質問をされる経験はハジメテ。

「すみません。ちょっと…

と女性が尋ねてきた途端、ホームに電車が通る。

「ンゴオーーーーーーーシュゴオーーーーーーーガタンガタンゴトンゴオーーーーーーー」
耳をつんざくでっかい音が、人っ子程度の言葉なんてかき消してしまった。

女性はなにかを語りかけてきていたが、パクパクしている様子が見えるだけで、なんにも聞き取れなかった。 隣から聞こえるうっせぇガタンゴトンとは比べ物にならない沈黙。早く行ってくれ。

電車が通り過ぎると、改めて「すみません、コノデンシャデ イケマスカ」と言われた。
女性が持つスマホには「日本橋」と書いてある。

「なるほど、イントネーションからして外国から来た旅行客か。ならば電車の乗り換えなど難しいだろう。よし!ここはいっちょ漢(オトコ)見せたるか!」

『人生の大半を1本/hしか電車が来ない田舎で過ごし、今も乗り換えをまともに分かっていない人間がなんの自信を持っているんだろう。』

相反する2つの感情に不安が生まれながらも、ここで無視するのは筋が無いと思って、俺がよく使う乗り換え案内アプリで調べあげる。
「絶対に日本橋に届けるんだ…!」

因みにここで俺は、
ここで足を止めさせてはいけない。とにかく電車に乗らせてあげなきゃ。桃鉄で言う、ゴールまで着かなくともとにかくサイコロを振らなきゃ。
という強迫観念に囚われていた。結果的にこの考え方が本当に良くなかった。

まず俺は、今いる駅から目的の駅まで電車が向かうか調べる。

あった。
検索結果には、数分後にこの駅から乗り換えをせずに目的駅まで辿り着ける電車が来る、と書いてある。

これを教えてあげよう。そう思ったが、電車というものには山手線とか、銀座線とかいう名前がついている。
今並んでいるホームにも、もちろん名のついた電車が来る。
しかし、自分自身が今このホームにいるのは乗り換えアプリで「○番線に並べば目的地に着く」と書いてあったからその番号に相当するホームに来ただけのことであって、この電車がどんな名前かは知らない。 なんせあまり来たことの無い駅でもあったから。

しかも東京の駅は同じホームに違う名前の電車が数本来ることもある。
「え???これ何線だ?足元に書いてある案内は緑色?ん?時刻表とか見なきゃ分かんない?え?え?????」
と完全にパニック。それはそれは見ていられない光景だっただろう。電車で困っている人が1人増えただけなのだから。

そんな泣きっ面に追撃をするかのような出来事。蜂が来る。

なんと困っていた女性と俺の元に電車が来てしまった。
減速する電車と裏腹にパニックが加速する俺。

「いや、別に次の電車がすぐ来るんだから焦らなくてもいいじゃない。」
そう思うだろう。 きっと過去に戻れるならそうしてた。
しかし、この時の脳内は1秒でも早くここから動いてもらおう。俺なんかで足止めをさせてはいけない。という考えになっており、「正確に送り届けるための情報を渡す」というメインタスクと「より迅速にこなす」というできたらいいよねタスクが逆転してしまった。

その結果、何故か俺はパニックになったまま「Yes!Yes!」と言ってしまった。もちろん分かっていない。
その女性は「アリガトゴザイマス」と行って嬉々として電車に乗った。

間もなく電車は発車し、ホームから見えなくなった頃に落ち着いて調べたら、女性の乗った電車は日本橋には止まらないことが分かった。

酷く落ち込んだ。
女性が俺を信じて乗って行った先に目的駅が無いことを気づかず、かなりの時間を無駄にしてしまう可能性が大いにあるからだ。
乗り換えに慣れていないということは、日本へ旅行に来ているのだろう。
そんな人の貴重な数分を、ろくでもないパニパニパニック乗り換え案内クソジャパニーズが奪ってしまう。

自分が帰るための電車を待ちながらずっと謝っていた。どうか次に聞く人はとても親切で、頭が良くて、外国語でコミュニケーションが出来て、パニックになんてならない人でありますように。
そう祈るしかなかった。

本当にごめんなさい。

また、俺はこういうことがあるととても考え込んでしまう人間なので、「もしもこれが仕事だったら…」なんて思う。

今一度自分に言い聞かせたいのは、世界は思ったよりゆっくり回っているということ。
日常においてものの数秒で答えを求められる瞬間なんてのはあまりない。
もしもそんな状況に陥ったらそれはその過程自体が間違っている。そんなの俺がどうこうの問題じゃない。

だから、ゆっくり考えちゃおう。マジで深呼吸しちゃおう。
そして次に乗り換えを聞かれたら、こう言おう。「アイドンノウ」と。




俺が死んだとき、地獄への片道切符を渡されるのは確定しているだろう。JR冥界地獄ライン、発車いたします…

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