振り返りまたは反省
iGEMのアドカレです。12月15日分です。書くぞ書くぞ!
はじめに
2024年のUTokyoの代表をしておりました高橋と申します。本名は公開情報であり、秘匿するものではありませんが、意味もなく流布することはおやめください。
また、最初に謝辞を述べさせていただきます。UTokyo 2024の研究を監督し、助言を与えてくださった所属研究室と外部アドバイザーの皆様と、HPに応じてくださいました全ての方々に感謝申し上げます。また、財政面でのご支援をしてくださいました個人の皆様と法人の皆様のお力添えの賜物で今がございます。ありがとうございました。
この記事ではUTokyo 2024の振り返りを行います。私は、代表、wet、HP、財務、雑用を行っていました。
今まで色々な人が真面目な記事を書いている中、アドカレ2の方で私は緩めの記事を書いていました。ここいらで一発真面目な記事を書き、一年を振り返ろうと思います。随筆みたいな感じで進めますが、たまに反省しています。
私の傾向として、記事が長くなりがちで画像がないです。読みにくいですが、ご了承ください。
メンバー集め
主力となる2年生(2024年時点で)を集めるために2023年の11月から2024年の3月くらいまで行っていました。うちの大学ではiGEMの人気はあまりないです。また、忙しそうだとか、難しそうだとかといった理由で避けられます。そういうわけでかなり難航しました。それでも色々あって強力なメンバーが4名集まってくれました。主力メンバーは合計9人です。
プロジェクト考案
UTokyo 2024は実験結果でiGEMを殴ろうとしていました。後になってこの計画は適切ではないことがわかりました。
非常に傲慢なのですが、過去のwikiを読んでいても実験が上手くいったチームが少なく、Top 10になってようやく実験結果が出ているという印象を持っていました。もっと分析するべきだったのですが、実験結果が良ければJudgeの目を引くことができて、多くのJudgeに注目されることで評価されるだろうという算段がありました。プロジェクトを考案する段階で実験がうまくいくかはわかりませんでしたが、とりあえず早めにプロジェクトが決まれば実験できる期間が伸びて結果にもつながると考え、3月までに決定することを目標にしました。
技術から攻めたり、課題から攻めたり、大小さまざま20, 30くらいの案をチームで出しました。トコジラミの駆除と血液に関する問題解決(詳しく覚えてないです)と緑内障の早期検知に絞り込み研究室に持っていきました。
所属研究室で数回の面談をし、プロジェクトを決定しました。それが緑内障の早期検知です。ちょっと時間はかかりましたが3月中旬にはHPを始めることができたので、2023年に比べてかなり良い滑り出しでした。
ちょっと反省をすると、今年のプロジェクトはiGEMに出すものとして対象と手法がよくなかったです。つまり全てですが。おそらく命に関わるような病気の方がインパクトがあります (これは私が緑内障が早期に解決するべき病気ではないと考えているわけではないです)。また、CellでもCell freeでもないので、partを重視するiGEMにおいて邪道です。私は工学的なマインドを持っているので問題を解決できればそこに使われる技術は最適なものであるべきだと考えていますが、iGEMはコンペです。ここは、最適ではないにしろiGEMにおける合成生物学的手法を使用するべきでした。この後もですが、私がiGEMがコンペであることを忘れている結果、求めているものに成果物を近づけられませんでした。
さて、今年のプロジェクトの考案時点での強みは、
1. CellでもなくCell freeでもないので実用化までに乗り越えるべき安全面での障壁が相対的に低く、社会実装が強く意識されているiGEMにおいて、優位に立てると考えた。
2. 過去のDiagnosticsを見ると感度がかなり低く、実験に成功した場合のインパクトが大きいと考えた。
大まかにこの2つです。実験の章でも触れるとは思いますが、実験結果からさらにこのプロジェクトの強みが判明しました。
2'. 実験がかなりうまくいき、iGEMでは過去に類を見ないほどの研究成果が得られた。また、POCTの分野においてもプロの研究成果に負けるとも劣らない感度と特異性が得られた。
3. 緑内障に限らず、さまざまな疾患の検出にも利用することができる。
ちなみに3の応用性は当初考えていなかった面であり、勝手に生えてきました。その反面、今年のプロジェクトで最も有用だと言える部分でもあります。かなり面白いです。
お金の問題
プロジェクト考案と並行して私たちはお金の問題にぶつかりました。お金がないです。流石に出場できないのはまずいので、私はお金を集めることにそれなりに献身しました。多くの方からご支援していただきましたが、同時に私の使える時間と精神的なキャパシティが圧迫されました。この問題は今も相決しておらず、2025年の出場も若干危ういです。一年生をチームに引き入れた以上、iGEMに出場できるだけのお金を集めておきたかったのですが、まだ足りないので私は財務面での活動を今も行っています。
自分たちでお金を集めるのも大事な行いではありますが、これに時間を割けるほどUTokyo 2024に人手はいませんでした。また私は、誰もやらない問題を代表がやるべきだと思っているので、社交的ではない性格を矯正し、いつも垂れ下がっている前髪をかきあげ、文字通り自分の体を削って集めました。ただ、資料作成が下手なので自分たちの活動の魅力を最大限伝えることができず、チャンスを逃していた部分もあり、反省しています。
お金集めによって、自分の能力を多少向上できたことやiGEMの普及活動をできたので全てが悪かったわけではありません。
実験
実際に実験に取り掛かったのは5月に入ってからです。プロジェクトの決定から1ヶ月開いた原因は覚えていません。
wet実験は最初の方はうまくいっていませんでした。途中で先行研究を再現できず、時間と試薬がぶっ飛びました。今年のwet実験はものにもよりますが、一回の実験に数千円かかります。
wet経験者ならおかしさがわかると思うのですが、一回の実験でdNTP (2.5 mM)を180 µL使う時があり、ラボの人たちに引かれました。あと、細胞培養などにかかる時間もないので、一日に5回くらい実験できます。実験って金かかるんだなーと実感しました。関係ないですが、この大学は日本の他の大学よりも使える金が多くあり、環境としてはかなり良いです。
反省点としてかなりの実験ミスをしました。試薬の量を間違える、入れ忘れる、機械の設定を間違える、試薬の納期を見落とすなどです。失敗しないとわからないことや未然に防げたことなど、トラブルだらけです。でもここら辺のミスが多分将来に一番生きると思います。というかここまでミスをしたのに学ばなかったら実験向いてないです。
今年のwet班は4人です。今年の一年生は特に実験技術を持っている人がいたわけではないので即戦力としてwetに投入できませんでした (このことは問題にならないです。新入生を当てにするような計画は立ててないです)。少ない人数でも実験結果を出すために、wet班で履修の相談をし、学期中は研究室に常に2人以上いるようにしました。夏に入ったら開いている日は全て研究室にいました。結局、時間と試薬の問題で呈色反応まではいきつきませんでしたが、8割方終わりました。wet単体の成果だけだと評価されない傾向にあるので、dryと絡めた実験もいくつか行いました。
できたらプラスαになる涙液を実際に使った実験はwiki freezeに間に合いませんでした。iGEMでは動物サンプルを使う場合、所属機関への届出のほかにiGEMへの申請が必要です。Safety formというものを提出する必要があります。所属機関への申請の他にそのformの申請が降りれば使用できます。私たちはヒトの涙液を使用するため所属機関への申請を7月にだし受理されました。ラボの研究とは別のものなので自分で書類を書き、先生方に迷惑をかけながら完成しました。10人くらいの先生方に囲まれて質疑応答があるのですが、私は落とせないタイプの試験があり他のメンバーに代理で出てもらいました。無事に申請は通りましたが、個人的にこの時期が一番厳しかったです (医学系の倫理申請書類を書いた医学部ではないB2と申します)。そしてiGEMへの申請を8月終わりくらいに行いました。iGEMから申請の許可が降りたのが10/2でその日はwiki freezeです (この時に色々ありました。いつか詳細を書く予定です)。本物のサンプルが使えていたらもっと強かったなーと思っていました。ただ、iGEMに出す上では大きな問題にはならないと判断しました。
最初の方のHPで3年ほどかかると言われていたプロジェクトですが、メンバーの努力と多くの方のご支援ご協力によって半年で8割方完成しました。そもそもHPで「かなり時間かかる」って言われたのに実験を強行したのはおかしいかもしれませんが、これしかないと思っていたので突き進みました。統計的処理ができていないという部分が弱いですが、n = 3で統計的な処理をするのは不誠実だと思いやりませんでした。今度やることになりそうですが。
実験結果でiGEMを殴る準備はできました。私たちは体を大きく捻り、拳に力を込め、いつでも殴り倒せる準備をしていました。武闘派集団と申します。本当はwikiを書くのでパソコンに齧り付いていましたが。
wiki
UTokyo 2024のwikiはどのページの分量もかなりあります。情報を適切にまとめて、表現するのではなく、行ったこと全てを載せました。再現性を与えるために、本来は不要である実験結果も載せ、思考の過程がわかるようになっています。全部読まれることを信じてました。
また、この辺りで欲が出てTop 10になりたいと思えてきたので、手を広げることにしました。Contributionをちゃんと書いたり、実験ノートを丁寧になおしたり、アントレプレナーを増やしたりしました。人数に対して分量が釣り合っていないのでメンバー全員が苦しかったと思いますが、なんとか完成しました。8月くらいに3交代制でwikiを書いたら効率的であることに気づき、実践しようと思いましたが、夜型の人間が多すぎて無理でした。また単純作業が多かったので3交代制よりも交代しないほうが効率的だと気づき、疲れたら寝るような生活を送ったり、6徹をしてました。各々の生活習慣と体調が崩壊していき、人間の限界を見ることができました。自慢になりますが、私は2024年の1月からiGEMが終わる2024年の10月末まで一度も一日より長く体調を崩していません。
文章を直す時間がなかったので部分的に読みづらいところがありますが、実験結果をちゃんと載せました。DBTLサイクルをめちゃめちゃ丁寧に書きました。HPやeducationは普通のものが飽きられているというHP committee出身のメンターを信じ、新しい試みを試しました。TOP 10は厳しくてもBest Diagnosticsは取れると思っていました。
結果
結果はGold MedalとBest Diagnostics nominee止まりです。満足していません。登壇したかったし、楯も欲しかったです。一応敗因の分析はアドカレ2の方でしていますが、一番大きい原因はiGEMがコンペであることを忘れていたことです。評価基準が存在し、それに則って評価されます。夏以降のどこかの段階で再度、評価基準を確認し、それに沿うようなwikiを作成するべきでした。コンペなのでルールをよく読んで対策を練るべきでした。
評価基準の一部を誤読していることがわかりました。実験結果で殴る予定だったのですが、実験結果は評価基準の中では地位が低いです。代わりに実社会でどれだけ通用するのか、が重視されています。検出系であれば、どのような感度であれ、検出結果が分かる方が強いみたいです。私たちが時間の都合でできなかった呈色反応を感度を捨てて実行し、強調するべきでした。また、伝わらなければ意味がないです。全ての部分を読めば誰でもわかるような内容にはなっていますが、全てを読みたくなる構成だったかと言われると首肯できません。
今回の結果から評価基準をちゃんと読み、そのツボを押すwikiを書くことが大事だとわかりました。わかったところで来年以降出場する予定はないので、皆さんで役立ててください。ツボを押す = 伝える力が大事だと常々言われていたのですが、やったことを褒めてもらいたい子どものようにはしゃいでしまい、全部載せてしまいました。この分野に近い人なら褒めてくれると思うので、実験結果を論文にまとめBioarXivに上げる予定です。
iGEMの意義
iGEMの意義についてはwasedaのチームリーダーが一番理解していると思います。アドカレに記事があるので皆さん読みましょう。
私みたいなのが意義を語るのは違うのであまり言及しませんが、iGEMはコンペです。そのコンペにおいて勝ちたいのか、コンペを意識せず研究成果を目指すのかはチームによります。両立することだって可能だと思います。ただ、あくまでも教育プログラムであることを忘れてはいけません。コンペでの結果が出なかったからといってこの一年は無駄になりません。今後、研究の道に進むにしろ進まないにしろここでの経験が生きると思います。
一つ言いたいのは、科学の大会なので、科学に誠実な態度で臨み、工学の大会なので、意味のあることをしてほしいです。
終わりに
私はiGEMというコミュニティは好きです。こっちの方面には進みませんが、学部生のうちに研究できる機会を与えてくれたことに感謝しています。実験結果もかなり良く、論文にできそうで助かりました。
でもjamboreeとかcompetitionは嫌いです。めちゃめちゃ参加費高いし、会計報告書は公開されないし、責任感ないメンターを派遣するし、使えない試薬送ってくるし、formは審議すらされないし、間違ったfeedback送ってくるし、ヒューマンエラーを改善しようとしないし、責任逃れをするので。今度書きますが、いろいろあって運営者に対する不信感が募っています。一年間の熱中が最悪な形で返ってきて悲しいです。
来年以降の参加者の皆様はこんなことが起こらないことを祈っています。
ぐちゃぐちゃ書きました。言い訳が多かったと思います。何度も反省している文章になるようにリバイズしたのですが、そんなに反省する理由がなかったのでこんな感じになりました。他の人の記事と違って伝えることもない薄っぺらし文章ですが、肩の力を抜いていきましょう。