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マーケット|トランプ関税で為替の影響は? 2018年は円高に
ストリート・インサイツの経済アナリスト・安田佐和子さんが為替市場のイベントを解説してくれる「イベント・インサイツ」。週初に更新しています。動画版はYouTubeでご覧ください。
トランプ関税、2018年にならえば円高要因か
次に今週のトピックを取り上げます。1月29日のFOMCでは利下げ路線を維持しました。
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パウエルFRB議長は会見で「経済はいい位置にあり、労働市場は堅調。インフレは依然としていくぶん高止まり」との見解を示しています。
声明文ではインフレの表現につき、従来の「インフレ率は委員会の2%目標へ進展してきた」との文言を削除しましたが「これは政策へのシグナルを送るものではない」とも説明。つまり、引き続き利下げバイアスを維持した上で、市場が利上げを先取りしないように気をつけたとも判断 できます。
また、政策姿勢についても、政策金利は中立金利を上回っており、実質的に制約的、” meaningfully restrictive”、一部の日本メディアでは「極めて制約的」と訳されていましたが、この「制約的」との表現を使っていること自体、今後の利下げ余地を示したようにも見えます。
一方で、トランプ大統領はFEDに利下げを要請しつつあります。ただ、 発言を振り返ると、原油価格の下落に言及するなど、まずは前提としてインフレの抑制があるとも読み取れます。したがって、2018年から19年のように闇雲に利下げ圧力を加えているようではないと考えられます。
追加関税、為替市場への影響は
トランプ大統領といえば、 2月4日にカナダやメキシコ、中国に対して関税を発動する方針です。
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関税による米インフレは抑制的
IEEPA(国際緊急経済権限法)と国家非常事態法に基づき、カナダとメキシコからの輸入品に新たに25%、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から発動する大統領令に署名しました。
ただ「最適関税論」に基づけば、インフレは抑制的とも考えられます。
大国が関税を課すと、大国の輸入が減少するなか、その大国へ輸出する国は(減少を補うために)値下げすると考えられ、そうなると大国のインフレが抑制され、大国の利益になるといった考え方があり、実際にそうなる可能性が見えてきます。
ベッセント財務長官が語った「最適関税論」
もうひとつ、ベッセント財務長官が指名公聴会で語ったように「アメリカが関税を10%課す場合は米ドルが4%上昇し、米ドルが上昇すると輸入物価の上昇が抑制される」というシナリオが成り立ちそうです。
米財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏は16日、「最適関税理論によると、報道で飛び交っている10%という(一律関税の)数字を使うなら、伝統的に通貨は4%高くなる」と述べた。
米国が関税を引き上げると輸入品の価格は上がる。国内外の価格差が為替で調整されるならばドル高になる。米国への輸出量や貿易黒字の規模が大きい国の通貨ほど対ドルで下落しやすくなる。
実際、足もとの為替動向を見ると、メキシコペソやカナダドル、そして人民元は対ドルで下落しています。2018年と同じように関税が発動されたとしても輸入物価の上昇はある程度抑えられる見通しです。
そうなると 関税引上げによるアメリカのインフレ上昇より世界情勢の不確実性に注目される可能性がありそうです。
トランプ関税、円への影響は限定的か
円の動向も確認しておきます。2018年3月にトランプ大統領は鉄鋼・アルミへの追加関税を発動し、6月からはカナダやメキシコ、EUに対しても鉄鋼・アルミ関税を発動。7月からは中国に追加関税を発動しました。
そういった流れを受けながら、2018年の円のリターンは対ドルで3.5%の上昇となっています。また足もとでも、2024年の大統領選以降の対ドルリターンを見ますと、マイナス2%程度ながら他の通貨に比べると堅調です。
以上を踏まえれば、「トランプ大統領による関税発動で円は上昇しやすい」、あるいは「他の通貨より下げ幅が限定的になる」と見込めそうです。
以上、今週の経済指標「イベント・インサイツ」、安田佐和子がお届けしました。どうもありがとうございました!
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