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【連載#02】今日、セックスワーカーになりました「デリヘル・ロイヤルキャンディ・はな」

そのオンナは、先月まで場末のキャバ嬢だった。名前は、はな。年齢はハタチだが、ドンキで全身揃えたような田舎っぽい服装と、舌ったらずな話し方から、まだまだあどけなさが残る。
学生時代は引きこもりがちで、周囲が合コンだエンコーだと繁華街に繰り出すなか、部屋でひとりゲーム三昧の日々だった。

高校卒業後に夜の世界に飛び込んだのは、そんな自分を変えたかったからである。
カネを手にして垢抜けたのか、仕事終わりに同僚たちと飲み食いするようになった。初めてカレシもできた。その彼女に、3ヶ月前、ある悲劇が起こる。「お店のルールを破って風紀して、罰金。スタッフと付き合っていたことが店長にバレちゃったんです」

自分で巻いた種とはいえ、時給2千円ほどで働く彼女と、僅かな給与のカレシとのふたりに、計100万円の返済が重くのしかかった。さらにコロナ禍でキャバの客入りは思わしくなく、状況は最悪である。
そこでカレシが妙な提案をする。
「風俗で働いてくれないか、って。ちょうど店長の友人がデリヘルを立ち上げたばかりだから、と」
カレシ公認で、歌舞伎町のデリヘルで働く。このいびつな状況を、悩んだ末に彼女は受け入れた。

ありえない。売り掛けを作って担当ホストに売られたのならまだしも、借金返済のためとはいえカレシに売られる状況を許せるはずがない。
さらに不思議なのは、風紀違反をしたからといって借金を背負う必要があったのか、ということだ。ふたりしてバックレてしまえばいいだけのことだと思える。深掘りするべくカレシやキャバの店長に取材を打診するも、それは叶わなかった。隠したい事情があるのだろうか。

ともかく、彼氏は何食わぬ顔で自車を運転し、面接官の待つデリヘルまで送り届けた。
「もちろんまだ葛藤がありました。でも、最後は”仕事”だと割り切って」

宣材写真を撮り終え、彼女の顔がホームページにアップされると、入店初日に指名が入った。
「最初のお客さんは42歳。Mっ気がある仕事終わりのサラリーマンでした」
ラブホの、鏡張りの風呂場で男のカラダを洗っていると、「咥えている姿を見たい」と言われ仁王立で口でした。男が求めるままお尻の穴舐めにも応じた。抵抗はあったが、気づけばキャバ時代には得られないほどの日当を手にした。

「楽しいまではいかないけど、思ったより大丈夫だった。最初は早くヤメたいと思ってたけど、いまは続けてもいいかな。まあ、とにかく借金を返し終えるまでは頑張ります」
カレシのため、自分のためだと彼女は言った。その健気さに、僕は彼女を指名してしまうかもしれない。


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