思い出のレコード「Superfly」
予備校時代、テレビからの情報はほとんど断っていて、世の中の流行というものをほとんど知らなかった。それでも、雑誌やCD、レコードなんかをたまに買うことはしていた。
96年当時、金沢の街なかにホットソウルカーゴというブラックミュージックやダンスクラシックス専門のレコード屋があった。客が2人も入ればもう満員御礼となるぐらい狭い店内で、当時の自分がほとんど知らないジャンルのレコードがあるもんだから、もう入っただけでクラクラした。
当時はトリップホップというジャンルが流行していて、自分はその総本山であるMO’WAXというレーベルに注目していた。ビースティ・ボーイズのキーボード奏者であるマニー・マークがそのレーベルから12インチを数枚リリースしていて、彼のファーストアルバムがかっこよかったので、シングルも集めていた時期でもあった。
金沢には当時、新譜のアナログを扱う輸入盤屋さんが一軒しかなく、今のようにネットショップも無い時代だから、そこに足繁く通い、情報をゲットするしかなかった。
で、前述のホットソウルカーゴである。そこにマニー・マークのMO’WAX以外からリリースした10インチがなぜか売っていた。値段は5桁以上して、初めて見るそのレコードがめちゃめちゃ欲しかったけれどとても手が出せる値段では無かった。
https://www.discogs.com/ja/Money-Mark-Performing-Chicken/release/942587
店主によると、そのレコードはイギリスに買付に行った時に300ポンドで購入したという。でも彼はマニー・マークのことは全く知らなくて、ディーラーに勧められたから買っただけだけとのこと。ビースティ・ボーイズのキーボード奏者なのに知らないなんて、、、と当時の自分は思ったが。
喉から手が出るほどその10インチは欲しい。ただ高くて買えないから何かブラックミュージックでオススメはありませんか?と尋ねると何枚かオススメをしてくれた中にあったのがカーティス・メイフィールドの「Superfly」だった。
96年当時はロッキング・オン読者だったので、ブラックミュージックやダンスクラシックスなんかはほとんど知らない。知っていてもせいぜい中学生の頃、英語の授業で見た「ウィー・アー・ザ・ワールド」にいたマイケル・ジャクソンやスティービーワンダーくらい。
他にはCDで持っていたのはスライ&ザ・ファミリー・ストーンぐらいだったかな。当時オザケンがリリースしたアルバム「LIFE」の元ネタとして買ったものだ。
カーティス・メイフィールドの名前はたぶんロッキング・オン・ジャパン誌上でコーネリアスのインタビューに出てきたいたから覚えていた。当時事故で車椅子生活をしているという情報を何故か知っていた。なので、迷わずこの「Superfly」を購入した。店主によると「これはオリジナルの見開きジャケででなかなかレアだよ」とのこと。それでも予備校生のお小遣いで買えるくらいのお値段だった。
まだ96年はタランティーノの「フォクシー・ブラウン」が公開前で、もちろんブラックスプロイテーションのリバイバルが起こる前だった。こういった映画のサントラブームが来る前に手に入れることが出来たので、ちょっとした優越感に浸れるアルバムだった。