仕事が途切れないマーケティングライターの制作術 #009 【人は想いの2割も言葉にできない】
「これを伝えたかったんだ」と評価される仕事
今回は「相手が言語化しきれていない内容を読み取り、言語化する能力」について解説していきます。
良いマーケティングコンテンツ(記事)とは何か?との問いには、集客力が高いとか、ターゲットに即したリードが取れるとか、コンバージョン率が高いとか、答えはいろいろありますが、私は「言葉になっていない想いを言語化できていること」だと思っています。
その真逆のアプローチは「相手が話したことをそのままテキストに起こす」だと思います。もちろん、それがよく書けていると評価されることもあります。でも、それは誰でもできることですよね。
でき上がった記事を見た取材相手や、発注したクライアントが「そうそう、これを伝えたかったんだよ」とか「今までうまく表現できなかったけれど、初めて言いたいことを伝えられた」と評価されるような仕事をしないといけないのです。
では、どうやって相手が言葉にしていない想いを言語化するのか、それについて解説します。
比喩や擬人化で「わかり合える言葉」に置き換える
最大のポイントは、前回書いた「相手の懐に潜り込んで想いを聞き出す」取材のテクニックです。深い信頼関係を構築すると、相手は「この人に自分の想いを理解してもらいたい」という思いが働き、何とか言葉にならない想いを言語化しようとしてくれるものです。
ただ、その言葉は正しい文脈を持っていなかったり、単語がうまく当てはまらなかったり、表現が間違っていたりするので、そのまま理解しようとすると、意味を間違えてしまう可能性があります。
そういうときは「わかり合える言葉に置き換える」テクニックを使います。いわゆる「比喩」や「擬人化」です。例えば、ある装置を自由自在に使いこなすことで拓ける世界観について「その装置には喜びがあるんです。使いこなすとか、楽しんでるとか、そういうことじゃなく、自分が変わる感じなんです」みたいな話を相手がしたとします。それを受けて「それって、自分の肉体が拡張してしまう感じですか?例えば、スパイダーマンが蜘蛛の能力を得て驚異的な跳躍力を手にしたみたいな」とか、そうすると、その言葉そのものに共感できなかったとしても、「そうそう、そういう身体能力の拡張に近いですね」みたいな会話になり、どんどん感覚や想いが言語化されていくのです。
私は、人間は、自分が思っていることの2割も言語化できていないと思っています。つまり、8割は、冷凍の食材みたいに自分の中に存在しているものの、うまく解凍できず、調理もされず、本当は世界中の人たちを幸せにできる最高の料理になるかもしれないのに、食べてもらえないままになっているのです。
マーケティングライターには、相手の言葉や表情から、その人の中にある言語化できていないけれど、伝えたい思いがあるか見極め、想像力を最大限に働かせて、それを引き出すアプローチをすることが求められていると思っています。
言葉を鵜呑みにしないで想像力を働かせる
大切なのは、目の前に出てきた言葉を鵜呑みにしないことです。その言葉は、なぜこの形で発せられたのか、前後の文脈とミスマッチがないか、なぜこの単語が使われたのか、想像力を働かせて推理します。そして、その推理をどんどん相手にぶつけていくと、次第に水面に潜んでいた何かが顔を出します。それを見逃さず、会話を繰り返すことで、その何かを言語化できるのです。
日本人って阿吽の呼吸で分かり合えると言いますよね。だから、日本人は想いを全部言葉にしなくても、相手はわかってくれる、そういう幻想があるのかもしれません。
でも、言葉にしないと伝わらないんです、日本人だって。逆にいうと、言葉にすればものすごく伝わるんですよ。そこに、我々の仕事が求められる理由があると思っています。
究極の能力「イタコ化」で相手とシンクロする
私の感覚ですけど、言葉にならない相手の想いを言語化する秘訣は、同化です。相手の考えを完全に自分の脳とシンクロさせるということです。
私が尊敬しているコンサルタントは、それを「ブレインコピー」と呼んでいます。
もう少し違う表現として、私は「イタコ化」と呼んでいます。
自分の中に相手の人格を落とし込み、相手の立場でものを考え、言葉を発する。それができれば、きっと相手から喜ばれるコンテンツを作れるはずです。
次回は「コンテンツ全体の企画・デザイン・ディレクションができる」について解説します。
よろしくお願いします。
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