世界最狂のお祭りに賛歌しよう!

バーニングマン/始まる


エントランスへ向かうと、ゆったりとした髭を蓄えた、30歳位のロマンス
グレーのオジサマが、ピンクのひらひらのワンピースを着て、忙しそうに
車両誘導をしていました。少し、ショックでした。

会場入りして、時折吹く強風に耐え得るようにしっかりマイテントを建てる為に、
30cmはあるペグを地中深く打たなきゃイケなくて、バカデカイハンマーとかが
必要で、隣のキャンプへ借りに行くと、100点満点の笑顔でココロ良く貸して
くれたのは、普通に全裸の、穏やかそうな老夫婦でした。少し、ショックでした。

私はアメリカという国へ来たつもりで間違えてバーニングマンという星へ
来てしまったようです。


バーニングマン(以下、マン)というイベントは、サンフランシスコから車で
11時間ほど北上した砂漠地帯で毎年8月の最後の週に、一週間ぶっ続けで
行われるパーティーです。

砂漠なので、一週間分の水や食料を自ら用意しないと、食べるモノが無くて
大変なコトになります。

砂漠なので、夜は眠れない程寒いし、昼は日射がギラギラと強く、激しい
気温差に対応する為の、様々な準備をしないと大変なコトになります。

但し、実際のトコロ、お金での売買などが一切禁じられているこの「マン」と
言う場所。欲しいモノがあれば「物々交換」か、「もらう&あげる」で
手に入れるコトが可能です。ていうか、何でもほとんど誰かに「もらえ」ます。
何故かと言うと、マンでは物事全ての原理が「シェア精神」で成り立っている
からです。
何でも一人じめせずに、みんなでシェアしよう。分け合おう分かち合おう。
そして自分に出来ることは、何でもしよう。助け合う。大げさなコトじゃ
無くて、ソレで喜んでもらえれば、自分もウレしい。という精神です。
だから食べ物だって寝場所だってオモチャだって、望むモノ全てが手に入ります。

ただ、いくらみんなが優しいからって、その優しさにアグラをかいては
イケません。あくまで「シェア精神」で成り立つ場所なので、誰かに優しく
されたら素直にキチんと感謝して、その感謝を相手に伝えて、そしてまたその
優しさを誰かに回さなければなりません。
ヒトに優しくする。という行為は強制されるモノでは無いけれど、マンにいると、
周りがあまりにスマイルしてくるので、せめて自分も返したい。と想って、
自然とシェア精神が身につきます。優しい自分になれます。


そしてマンでは、全てが「自由」です。
ヒトとして、あるレベルでの規律はあるモノの、基本的には何をやっても
OKです。
だから勝手な服着て、勝手なコトやってていいのです。

そしてマンには「全て」があります。
アート作品に興味があるヒトは、周りには腐る程アート作品が展示してある
ので勉強になると思います。パフォーマンスやデコに興味があるヒトも
同様です。踊るのがスキなヒトは、昼夜問わずどこかで音楽が鳴っている
ので一週間の間中、ずっと踊っているコトが可能です。やっぱり笑いが
大事。というヒトには、マンは見るモノ全てが大袈裟で爆笑し続けられます。
突っ込みどころ満載です。ていうか突っ込み切れません。キリがありません。

ちなみに私は羽を背負って天使のカッコをしていました。バカですね。
バカ丸出しだったおかげで、超声をかけられたり、ハグをされたりしました。
(バカって、バカだっていう理由で愛されるよネ!微笑ましいよネ!)
特にお婆ちゃん層に大人気で、午前3時位にフロアで、もらった綿菓子
片手に爆踊りしていると、「まあ、私のカワイイベイビー、こんな時間に
何しているの!?」とか、ブチューとか、されたりしました。
いや、お婆ちゃん。アンタもね。明け方だよ。何でフロアにいるんだ。
元気だなー。とか。

また、何故かカワイイ女子キャミソールを着たオッサン&男前を異常に
沢山見ました。気持ち悪い。とかでは無くて、初めは少し驚いたけれど、
段々慣れてきて、むしろ見かけるとウレしくなったりしました。

その他、フォークで出来たスカートを履くカワイコちゃん。
全裸に亀甲しばりの状態でシャッターを押し続けるカメラマン。
もじゃもじゃヒゲの、でもバッチリメイクのミニスカハイスクール姿のオッサン。
バレエのチュチュを着たオッサン集団。
見とれるほどキレイな全裸に、エナメルブーツ履いただけのエロいお姉ちゃん。
そしてそのブーツを舐める、全裸に赤いマントだけ身につけた坊主。
華僑がスキだから。という理由でクソ暑い中、スーツを着るアジアン。
全身を青色に塗りたくったドレッドのシヴァ神。

まあ、どう冷静に見積もっても、キチガイです。

あまりにキチガイなカッコのヒトが多いので、そのウチ、白いTシャツに
ジーンズのヒトを見かけると、あー普通だー。と安心したりしました。

そしてもちろん男女共に全裸も多く、でも別にエロい。とかでは無くて、
むしろ尊い。清い。神様だ!というカンジで。
どんな手の込んだスゴイ衣装を着ていても、やっぱり全裸が一番パワーが
凄くて、一番突き抜けてエラくて。そして一番キモチ良さげでした。
ええ実際、キモチ良いらしいですしね!

そしてあまりに暴走している巨大な建物&パフォーマンス。
サラリーマンのような宇宙人のような人形が円を作るオブジェ。
「モップでお掃除」という操り人形を使った寸劇。
アラビアのカッコした乳を放り出した女子集団のダンス。
女体をカタチどった貝をモチーフしにした巨大なランプ。
指定された場所を踏むとカワイイ音を奏でる巨大なハープ。
私は見ていないケド、尋常じゃ無い量の炎を飛ばしたり、電気を発電させたり、
もうメチャメチャな出来事が毎日数え切れない程、行われる!

そして夜になればあちらこちらで電飾がでこでこ輝いて闇を祝う。

日本で言う、お祭り、が超ハイテンションで一週間ブッ続けで行われる、マン。

何と言うか、他のヒトのコトバを借りれば、マンはキチガイ遊園地。
マッドディズニーランドだ!!!!

親子連れも沢山いるケド、子供はマンのコトを夏休みの絵日記に書いたり
するのだろうか。
砂漠へ行きました。ハダカのヒトがいっぱいいました。
お父さんとお母さんは踊っていました。僕も踊りました。
おもしろいオモチャと乗り物がいっぱいでした。楽しかったです。
でも先生はきっと信じないだろう。夢だと思うだろう。


この文章だけ読んで、
何言ってるの?この地球上にそんな狂ったトコある訳無いじゃない。
全部妄想なんじゃない?とか思うかもですが、本当にそんな場所なのだから
仕方ありません。

何言ってるの?この地球上にそんな狂ったトコある訳無いじゃない。
ドラッグでも摂取させられたんじゃない?ソレで幻覚でも見たんじゃない?とか思うかも
ですが、まあ普通に正気です。
超真っ当です。完全にシラフです。シラフで狂った世界をサバイブです。

むしろマンではお酒だけでも危険な程、アタマとか思考とか、ブッ飛びます。
常日頃、コップ一杯のビールで吐いていた私は気がつけばウォッカどころか、
ほとんどアルコールの味しかしない70度のロシアのお酒とか笑いながら
飲んでいました。
ソレだけでも十分生命の危険を感じる程、飛ばされました。

しかし更に特筆すべきトビ方をするのは日射病です!!!
暴力的な程に照りつける太陽の下、2~3時間、水も摂らずに、休息も取らずに
ブッ続けで、てこてこお散歩していれば、何だか足元はぶよぶよとおぼつかなく
なってきて、アタマはぐりぐりしてきて、ロレツも弱冠回らなくなってきて、
でもニコニコしちゃって、誰とでも超フレンドリーにスマイル出来て、目に入るモノ
全てに爆笑出来ます。完全にアタマは真っ白なのでオチる要素も全くありません!
相当ヤバいです!!!日射病!!!!

超天然ノンケミカルアシッドです!!!!日射病!!!!!

但し、夜に必ず熱が出るし、状況を理解した上でキチんと休息を取らないと、
カラダはだるいし、アタマは痛いし、吐き気は止まらないし、確実に、オチます。
日射病は普通に大変です。病気です。
あと、ヘタすると普通に死にます。

あくまで自己責任ゲームです。日射病。



そんな風に一週間の間、毎日毎日、誰かとしゃべってしゃべって、フロアで
踊って踊って、建物やオブジェを探検して探検して、イカレたカッコのヒトを見ては
笑って笑って、子供のようにブッ倒れるまで遊んで遊んで。
たまにクラッシュしたり、たまにヘコんだり。それでも毎日ニコニコで。
忘れた頃にカラダが水や食事や睡眠を欲しているのをケモノとして感じて。
生きているんだなぁ。とか、ヒトが生きる上で、砂漠というギリギリの環境で、
想ったりして。

とにかく一週間、寝る間も惜しんで全力で、フルスロットルで、遊びました。
ええ、本当に楽しかったですよ!!!!!!バカ丸出しでした!!!
でもバカな方が楽しいので全然OKです!てへ!!!


バーニングマン/ナカ

3万人の観衆が見守る中、「バーニングマン」の象徴である「人間」をカタチ
どったビルほどの高さの、「巨大な偶像」に、火が付けられます。
ソレはソレは、普通に、大火事。


一週間続くストーリー性のあるパーティー。長いようで短く。
自分で自分を追い込んだりして、もう帰りたい。とか何度か思ったりもしたけれど、
ソレ以上に楽し過ぎて、永遠に続いて欲しい。
むしろココ、プラヤ(バーニングマン会場)にこのまま来年まで住みたい。とか、
本気で思ったパーティー。
でも最終日、20メートルはあるマンが、燃えます。
マンが燃えるコトによって、祭りは終わりを告げます。

何十人もの幻想的な「火の舞」の後、マンに火がともる。

ごうごうと、燃える。ごうごうごうごうと、燃える。
高く高く、空に届いてしまうんじゃないかと思うほど、炎は伸びる伸びる。
まるでイノチを持つように激しく踊る炎に魅せられて私は呆然と
立ち尽くす。
ただただ、炎を見つめる。ごうごうごうごう。

ゆらゆらと踊り狂う炎。
火の粉が舞い散る。私の頭上にも振りかかる。隣のヒトの髪は燃えている。

目に映るソレは凶暴で、近づくモノ全てを焼き尽すような勢いに、私は少し
恐怖を覚え、あとずさり、する。

そして炎がおこって急に地上の温度が上がったので竜巻が起こった!
天に向って唸りをあげる竜巻。そのバカデカイ竜巻が、こっちに来るッ!!
ヤバイってヤバイって!巻き込まれたらマジでヤバイ!
竜巻に巻き込まれると空に吸い上げられちゃうのかな?
ソレはソレでどうなっちゃうのかおもしろそうだけど、でも危険でしょ?
逃げなきゃ!でもヒト多過ぎて逃げるに逃げれないよ!
良く見たらウレシそうに竜巻に向って走ってゆくヒトとかいるよ!
あんたらバカか!

ふと周りを見渡すと、興奮した観衆は両手を上げ声を上げ、まるで
あらかじめ決められていたかのような儀式のように、
ゆっくりとゆっくりと偶像を燃やす炎の周りを回り始めた。
ヒトという濁流に飲み込まれて、私もゆっくりと歩き始める。
炎の熱のせいかな?何だかアタマがじわりとするよ。足元がユルいよ。

一週間、プラヤで過ごして見たモノ、経験したモノ、全ての総合体である
マンが暗闇の中、目の前で燃える。という状況が。そして更に、大きな火が、
炎が、あまりにリアルで、五感とか思考とか、全部全部もってゆかれる。
カラッポになって、クチをポカンと開けて、ただただ炎を見ている。
「わけわかんねー。」とか、そういうコト、思う余裕も、全然、無い。
ただただゆっくりと、炎の周りを、流されて流されて、歩く。

時々、自分の立っている場所が、ひどくあやうく思えて、不安になって、
友達の手を両方の手でぎゅっと握ったりする。
離れないように。離れてしまわないように。
不安で不安で、子供のように、強く強く手を握り締める。


ふと気がつくと、炎を取り囲む輪の外には、またいくつかの輪が出来ていて
爆音にあわせてダンスが始まっていた。

歓喜と、狂気の、ダンス。

踊る輪の頭上には、プテラノドンをカタチどったヒトの何倍もの大きさの人形が
操られ、2羽、戦うように踊っているのが炎に照らされて、闇夜に白く浮かび
上がって見える。

何だか、この世の終わりを祝っているようで、私は、クラクラする。

私は今、グラグラしているよ。グラグラしているよ。
何だか怖いよ。怖いよ。

・・・変だよ!ココ!

一旦落ち着きたいよ。体制を立て直したいよ。センターキャンプ
(以下、センター・総合インフォメーション&休憩所のようなモノ)に戻りたいよ。
アソコなら明るいし、ソファもあるし、ホットチョコレートだって、チャイだって
飲めるよ!
センターにゆこう!センターに!!

私のあまりの動揺っぷりに、友達は2人とも付いて来てくれるコトに。


でも、でもね、道が全く、分からないよ。

いつもだったら夜でも、どれだけ真っ暗でも、会場中央にそびえたつマンから
向って、右の方向にはコレコレこういう建物があって電飾がデカデカ光ってて、
それでマンから向って、左の方向にはコレコレこういう建物があって電飾が
デカデカ光ってて、そしてマンから真っ直ぐのセンターは、空へ向って大きな
大きな明るいライトを何本も何本も照らしているから遠くから見てもスグに
方向が分かるんだ。

でも今日は、炎が明る過ぎて、周りの風景や光がかき消されてしまっているよ。
周りを見ても、ヒトしか、見えない。
全く方向が、分からないよ。

一生懸命に冷静に考えようとするんだけど、考えれば考える程、焦るし、
焦れば焦る程、アタマがぐるぐるぐるぐる、マワる。
しっかりしなくちゃ。
冷静にならなくちゃ。
正気にならなくちゃ!

気がつけば3人で同じトコロを行ったり来たりしている。
コレは危険だ!闇雲に動いても、ムダに体力を消耗するだけだ!
体力の消耗はイライラを引き起こすし、余計に的確な判断が出来なくなるよ!
ダメだダメだダメだ!どうしようどうしよう。どうしたらイイの!?

呆然と立ち尽くす3人の前に、電飾を全開で施し、爆音を放出しまくる個人
所有の、自由に乗ったり降りたりが可能な車(以下、アートカー)が通りかかる。

そうだ!アートカーに乗れば、とりあえず炎から離れたトコまで移動してゆくに
違いない!上手くゆけばセンターまでゆけるかも!

走り去ろうとスピードを上げるアートカーに飛び乗る。


そのアートカーは少なくとも高さが3メートルはあって、その屋根の上に陣取る
コトが出来た私達は、今、という、この状況の全貌を眺める。というチャンスに
恵まれる。


見下ろすプラヤは、
ソレはソレは、天国と地獄が両方同時に存在するようなこの世の果て!


暗闇の中、浮かび上がる沢山の沢山の踊る人達。
ニコニコ笑顔だけど、暗いから、少し、怖い。
爆音のダンスミュージック。そして歓声。
常に常に誰かが叫んでる。発狂?
広く広く果てしない果てしない砂漠。
そもそも果てなんてあるのかな?

眺めていると、頭下の沢山のヒトがアートカーに向って笑顔で手を振って
くれる。手を振りかえす。天皇のように手を振る。手を振り続ける。
少し、ウレしくなったりする。
降りておいでよ。一緒に踊ろうよ!という身振りをされる。
でも私は、夜の闇。という恐怖に取り付かれてしまったので、もう、
動けない。降りれない。

アートカーの進むままに、流れる景色を眺め続ける。
視界に入るモノ全てが衝撃的過ぎて、見たそばから流れてゆく。忘れてゆく。

何だか、スゴイトコロにきちゃったなぁ。と、今更ながらに、想う。


そしてある地点でアートカーは止まり、皆、降りてゆく。
ドコまで来たんだろう。随分長い間アートカーに乗ってた気がするよ。
長い距離走ったんだろうなぁ。センターに近くだとイイなぁ。

アートカーの外付けのハシゴをヒトの手を借りて、降りる。
周りを見渡すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

炎が?また?近くに?見える・・・・・?!

元の位置に戻って来てる!!!!!!!!

ガクゼンとしながらもちょっと笑いそうな、私。
バカだなぁ。って言うか、むしろそんなバカな自分達がイトオシイ。


上から見たからセンターの方向も何となく掴めたし。と言って友達が
歩き始める。私はただ頷いてついて行く。
ずんずんずんずん歩くも、あんまりにもボーッとして歩いていたので、
多分マンからセンターまでは歩いて数十分とか、かかるハズなんだけど、
気がついたら本当にセンターに辿り着いたので、ビックリする。
とりあえずココまで来れば、安心だ。チカラが、抜ける。

「ちょっと炎とかもう一度見てくるね。踊りたいし。」
そう言ってまた炎の方向へ走り去る友達を横目に、とりあえず私は未だ
グラグラしていたのでぼんやりしながら、道に迷いつつキャンプへ戻る。


キャンプへ辿り着くと、何人かが輪を組んでお茶をしていて、私も
ストンと腰を降ろす。

「ウォッカとか、飲む?」スグ近くなのに遠くに聞こえる声。
「ああ、はぁ。すいません。」ぼんやりと答える。
「ビールは?」更に遠くに聞こえる。
「ああ、はぁ。すいません。」やっぱりぼんやりと答える。
「コーラは?」もうドコから聞こえてくるのか分からない。
「あー、・・・はい。はい。すいません。」答えているのは誰?
「お菓子も。」実際は聞き取れていない。
「はぁ。」既に反射で会話している。

随分と時間が経ってから差し出されるコーラとお菓子。
「ああ、ごめんなさい。ムリです。すいません。」
「?さっき、いる。って言わなかった?」
もうダメだ。多分一応会話は成立しているんだろうケド、
もう何もかもが遠い。ていうか私自身が遠い。
一度、テントで眠ろう。
何事か言って、輪を立って寝袋に潜り込む。浅い眠りにつく。


そして深夜、一人目を覚ます。
眠って体力も回復したせいか、さっきまでのぐるぐるが嘘のように、
アタマは妙にスッキリしている。
むしろ、満たされたような、ココロ持ち。
さあもう一度確認しよう。
マンを。自分を。
燃えて無くなってしまったマンへ向ってキャンプを出る。

あちこちで鳴り続ける音。
期待通り、完全にヒライたカオしたバーマー(バーニングマンフリークの
呼び方)で数え切れない程沢山あるフロアはどこもいっぱいだ!
マンは今日で最後なので、みんなハシャギ過ぎな程にハシャいでる!
あんな動きをしてたら死んでしまうんじゃないかと言う踊り方を沢山見る
コトが出来るし、そして沢山の沢山の笑顔!!!!!
みんなの目盛りは完全に振り切っちゃってるよ!!

気がつくと私も音と光の溢れるフロアに引き寄せられて踊っていた。
地面を踏みしめ、背筋を伸ばして、夜空を仰いで、空気を咳き込む程に
吸い込み、五感の全てと、「手の平」と言う第6感。そして「カラダ全体」と言う
第7感の全てを震わせて自分に刻み込む。
この場所を忘れないように忘れないように。

ひとしきり、プラヤを、浴びたよ。

さあ踊ろう!!!!

そしてフロアでは目が合うヒト全てに笑顔でセイハロー!
沢山沢山ハグをして、沢山沢山ほっぺチューをする。
そして交わされるコトバは「ハッピー・バーニングマーン!!」
何て何て幸福なコトバ!!!!

スモークはフロアを浮き立たせて、ブラックライトは眩しくて、レーザー光線は
波を打つ。知らない誰かと手を取り合って踊る。
「調子はどうよ?」なんて、毛皮の下にキャミソールを着た男前に聞かれる。
サイコーに決まってるじゃん!!!!!
「ナンバー1に楽しいとかグレイトとか日本語で何て言うんだ。」
とか聞かれるので「SA・I・KOー!」と教えると、
「PSYCHO?(読み/サイコ・訳/キチガイ)」とか含み笑いで聞きかえされる。
アハハハハハ!!!!SAIKOーはキチガイか!
ソレだソレだ!ソレでイイよ!ソレでゆこう!むしろソレ希望!!
もうココは本当にバカでハッピーでニコニコなヤツばっかりだ!!!
さあ踊ろう踊ろう!!!もう足が吊っても気にしないよ!!!

しかしさっきまでの圧倒的な恐怖は何だったんだろう。
完全に自分のキャパを越えてしまった、あまりに巨大な現実に、カラダが
拒否反応を起こしたのかな。だとしたら何て小さな私のキャパ!
あまりにもあまりにも現実離れしているリアル過ぎる現実。目の前の景色。
しかしハナシがデカ過ぎて、全然ピンとこないよ!

そして実際に足が吊りかかる頃には、闇夜が白々と明けてきた。
さあ、サンライズだ!!!!!



地平線が一望出来る見晴らしの良い場所まで行って、砂漠に腰をおろす。
ウキウキしたキモチが抑えられなくて、砂を掴んだり離したりを繰り返す。
そわソワそわソワする。

さあ段々、明るくなってきたよ。
いつも、もくもく雲さんで溢れているプラヤの空だけど、今日は、正に
雲ヒトツ無いイイ天気!

太陽が、ゆっくりゆっくり、でも急いで急いで、カオを出す。

ぐんぐんぐんぐん。

今日は本当に山から登ってくるような、太陽だ。
ちょっとづつ、ちょっとづつ、太陽がニコニコのカオを覗かせる。
光が溢れ出したよ。
少しづつ少しづつ、光の量が増えてくるよ。
まぶしいよまぶしいよ。もう見ていられないよ。目を手でおおってしまうよ。
ぐんぐんぐんぐん上がってくる!

大きく大きく、丸い丸い、太陽!!!!!!

うゎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

太陽、デカーーーーーー!!!!マブシーーーーーーーー!!!
スゲーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

マンに来てから、毎日仕事のようにサンライズを確かめていたけど、今日の
サンライズはスペシャルだ!!!
むしろ今まで生きてきて見てきた中で、最高のサンライズ!!!!

太陽さん太陽さんありがとう!!!!
うっかり、声を出して太陽に感謝しちゃって、更に太陽に向かって、
ごきげんよう。また明日。なんて大きく大きく手を振って、テントに戻って、
太陽のニオイに包まれて、今度は深い深い眠りにつく。
おやすみなさい。



バーニングマン/終わる

マンの巨大な偶像が燃えた翌日の夜、シャンティーの象徴である、
寺院をカタチどった大きな建物が燃えるのを見てしまって、私は、

発狂してしまった。


マンが燃えて、全ては終わってしまった。終わってしまったのだ。と少し
モノガナシイ気持ちでマンを旅立とうとしていたけれど、違った。

今日の夜はマンよりも、更に会場奥に隠れるように存在する、テンプル。が、
燃える。裏マン。と言える、テンプルが、燃える日だ。

「愛しているよ」「世界が平和でありますように」「笑顔が溢れますように」
「争いの無い世の中でありますように」「みんなみんな、大好きだよ」
高さ何十メートルもある、ちょっとしたビル程の大きさの、大きな大きな
テンプルいっぱいに自由に、または勝手に書き込まれる、各自の想い。
そんな祈りを包んだテンプルも、燃える。
大きな炎を上げて、夜空を明るくして、崩れ落ちるように、燃える。

そんなテンプルを遠巻きに、見る。

テンプルを燃やす炎は、昨日のような恐怖は無くて、ただただ穏やかな炎で。
ソレはまるで、この世に生を受けたコトをつい神様に感謝してしまうような、
地球上の全ての傷を癒すような、地球上の全ての罪を許すような、
優しい優しい、炎。

気がつくとテンプルを取り囲む観衆全てが抱き合って泣いている。
平和と、希望と、夢と、光と、調和と、虹と、鳥と、花と、星と、宇宙と、生命と、
そして、愛を、祈って。そして、感謝の、想い、で。

何だか知らないケド、私まで涙が溢れて止まらなくなって。
カッコ悪いから拭おうかと思ったケド、そんなみっともない私も私だ。と思って
流れる涙をそのままに、そして声を出して泣いているウチに、私はたまらなくなって、
感極まって、ココロの導くままに、更に大きな声を上げる!
もう周りの景色はシャットアウトだ!私は私しか見えない!

キィヤァァァァァァァアァァアァァーーーーーーーーーー!!!!!

私は発狂してしまった!!!


そしてその叫び声に共鳴した周りも、叫ぶ!
傍から見たら、シッ。目を合わせちゃダメですよ!的なキチガイ集団だ。
でも叫ばずにはいられない!!!!声を、上げ続ける!

もうイイんだ。誰かに何か思われてもイイんだ。私は私なんだ。
私がどう思うかなんだ。私は私のココロのままにゆけばイイんだ。
私はテンプルにユルされたんだ。

だから、テンプルに向って叫ぶ!
周りも、叫ぶ!叫ぶ!!叫ぶ!!!

知らないヒト同士の沢山の叫び声は重なって、溶け合って、一つになって、
長い長いレクイエムになる。
まるで永遠かと想う程、長い時間繰り返される透き通った叫び声は、
遠く遠く空に吸い込まれてゆく。
それはそれは、

祈りに似た、歌。


そうして私は笑顔を、取り戻す。
ああ、今まで私を傷つけたヒト、今まで私を苦しめたヒト、私をイヤなキモチに
させたヒト、もうイイよ。もうイイよ。随分長い間引きずっていたりしたケド、
もう笑えるよ。もう笑えるよ。

全部全部受け入れてあげるよ。愛してあげるよ。
全部全部許してあげるよ。愛してあげるよ。

むしろ、キミ達の幸せですら、祈ってあげるよ!!!!!!


でもだからって自分の罪が許されるとは思わないよ。
今まで沢山のヒトを傷つけたよ。今まで沢山のヒトを苦しめたよ。
罪は背負うよ。背負って生きるよ。
同じコトを繰り返さないように繰り返さないように。

今まで自分に関わってくれた全てのヒトにありがとう。
みんながいてくれたからこそ、今の私が、いるよ。
ありがとうありがとうおめでとう。
ありがとうありがとうおめでとう。

そして地球上に生きとし生きる全ての生き物が平等に幸せになりますように。
笑えますように笑えますように。
ハレルヤ ハレルヤ ハレルヤ。

そして気づく!マンが燃えたコトが破壊で、テンプルが燃えたコトが再生だ!
そして後はお花畑に違い無い!!!!!

一人で発見して理解して納得していると、友達と目があう。少し、笑う。

さあ、もう、出発しなくっちゃ。
靴の中に入った砂を出して、襟を正すつもりで履き直す。
新しい、出発だ。


そして私はテンプルが完全に崩れ落ちてしまうのを見る前に、
ゆっくりとキャンプに帰る。

一週間暮らした町はもう随分静かで、帰る車が砂を踏んで跳ばしてゆく。
空を見上げるといつも通り星はキラキラしているけれど、
いつも通りの爆音は、もう遠く遠くにしか聞こえない。
ヒトは既にまばらで、皆どこかさみしげで、もう、終わってしまうんだ。
という想いを、ひしひしと感じる。
私は冷たくなった手をポッケに突っ込んで少し早足で歩く。
吹く風は冷たくて、でも優しくて、頬を撫でる。
せめてみんなが笑えますようにと、少し歌を、歌う。
もう一度、祈る。笑えますように笑えますように笑えますように。



そうして、本当に本当に、マンは、終わったのです。

翌日、出発の際の空は朝から相変わらず高くて、太陽は相変わらず凶暴で、
でも相変わらずの砂嵐を起こして私達を困らせる風は吹いてなくて、
空気は穏やかで、何だか「撤収!撤収!ハイハイ帰るよ帰るよー!!」とか、
バカバカしい程にスッキリしたキモチで、プラヤを後にするコトが出来ました。

来年の今頃は何をしているのか。ドコにいるのか。すら分からないケド、
私はまた必ずプラヤに戻ってくるんだろうな。という予感と期待を抱いて。
随分と沢山の土地を旅した気がするけれど、こんなに衝撃的で、人生ひっくり返る
ような場所って、他に無いです。
「旅してドコが良かった?」と聞かれれば、私は間違い無く
「バーニングマン!」と答えるでしょう。ソレほど素晴らしい場所でした。
だから来年も再来年もその次の年も、毎年毎年、プラヤに帰って、来ます。

ああああ、全てが全てが美しいよ!




さて、マンには、アナタが望む、全てが、あります。
アナタが強く望めば望む程、望んだモノは手に入ります。
前記したような音、デコ、パフォーマンス、ダンス、外国、笑顔、爆笑、
友達、仲間、恋人、そして行動力、瞬間判断力、コミュニケーション能力、
ポジティブシンキング。そして、フラットな、ココロ。
そういうモノ全てを、望めば望んだだけ、手にいれるコトが出来るでしょう。
人生観が変わる!とまでは言い切らないケド、確実にアナタの人生は大きく
転回します。若さゆえの自分探しをするには、うってつけの場所です。
何かに迷っているならば、確実に答えは出るでしょう。

もちろん、ひょっとしたら全部が全部、インスタントかも知れないケドね!

そしてもちろんそんな堅苦しいコトは言わず、わーいわーいとニコニコはしゃいで
遊んでるだけでも十分な程に楽しいですけどネ!!!!

私が探していたモノ。は私が手に入れたかったモノは、マンで出会った友達の
コトバを借りれば、そして恥ずかしげも無く言えば、
「人間」というモノ。でした。
自分をも含めた、人間。
随分沢山のヒトに優しくしてもらって、随分沢山のヒトに助けてもらって、
そしてマンで出会った沢山のヒトに、大変沢山のコトを教えられて、ソレで、
人間ってスゴイな。ステキだな。とか沢山沢山思うコトが出来て、だから、
人間というモノを、もっともっと信じよう!もっともっと愛そう!と、
ココロから思えるコトが出来ました。
人間万歳!!!!
さて、アナタが手に入れるモノは何でしょう。

来年のマンで、私はアナタと笑顔でハグが出来るコトを、楽しみにしています。

ソレでは砂漠で会いましょう!!

サポートしていただけたら嬉しくて小躍りします。あと、アイスを買います。太ります。