頑張れよ私、日本を旅してる場合では【エッセイ】
地元の新聞社の短編小説賞で一席を取ったことは、親戚中に大きな波紋をもたらした。
お祝いの言葉や品々や作品を朗読したCDを頂くなど、なんとまあ嬉しいことの連続だった。
次作は何を書こうかしらん、note創作大賞に応募したいし、どんな話がいいかな……。などと練りまくっているうちに、締切を過ぎてしまった。なんたる不覚。
しかし今は、在住している地方の地域紙の文学賞に応募する作品を書いている。失礼、書こうとしている。
アイディアはできたのだ。ストーリーもほぼ頭の中で完成している。あとは家のパソコンに向かって、ワードを立ち上げ打ち込むのみであるが、そこでスラスラと文章を綴ることができる私ではない。
締切は今月末である。
文章を書き、推敲し、練り上げる作業が果たしてそこまでに終わるのか…? いちばん疑問に思っているのは私自身だ。
2000字のドラマ、地元紙の短編小説賞と嬉しい受賞続きで、ほっとしてしまった感はいなめない。でも書かなければ。この好機を逃してなんになる!ええい!ままよ!
と、昨晩パソコンを開いた時。
「ねぇ、GEO GUESSERしようよ〜」
夫の一言。
GEO GUESSERとは、Googleマップのストリートビューを利用したゲームのことである。世界中のランダムな場所のストリートビューが表示され、例えば看板の文字や建物の感じ、風景、植生などをヒントに、どこにいるのか当てるゲームだ。
日本国内のマップに限定して、2分というタイムリミット付きでポイントを競う、というのが私たちの最近のブームだった。
まあ少しならいいだろう。そう思いしぶしぶ承諾したのが、運の尽きだった。
わーここどこだ!?オホーツクって書いてある?北海道のどこだよ〜!
まったく何にも無い林道に落とされた!四国か!?佐賀だったじゃん〜わはは……
ふと見た時計は、23時を回っている。
兼業主婦の朝は早い。5時に起きなければ、朝やらなければならないタスクが間に合わない。
これはもう寝なければならない。
「ごめん……もう寝るね……」
寝室に向かう私を、夫は「早いね〜」なんて言いながら見送ってくれた。
だったら朝少しでも早く起きて子どもの世話を手伝ってくれよ!と言う言葉を、ごくんごくんと2回に分けて飲み込んだ。
出勤途中のバスの中でこれを書いている。
今日こそは書くぞ。なんてったって明日休みだから、夜更かしし放題だし。GEO GUESSERの誘惑に負けないよう、何ページかでも絶対進めるぞ。
そう考えながらも、昨日見た佐賀の景色は素敵だったな、ほかに景色がいいところは無いかな、そういうスポットを探すのに、GEO GUESSERは便利なんだよな〜なんてぼんやり思う意志の弱い私である。