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廃止されいく定時制高校と、増えていく通信制高校

年末や年度末に近づいてきているからか、だいぶ忙しい日々を送っており、記事更新が目標から遠ざかっていました。。

最近新聞でよく見かけるのは、定時制高校廃止に関するもの。東京都が、2024年8月22日に発表した「チャレンジサポートプラン(案)」において、7校の夜間定時制高校を廃止する方針を打ち出したことがきっかけです。

義務教育ではないけれど、約99%が高校に進学し、中卒での就職は超マイノリティという中で、もはや高校は行くものが当たり前のものという社会になったことは誰も否定できない状況かと思います。

貧困や虐待等で、生活や権利が十分に保障されてこなかった子どもたちを見ていると、かつては定時制高校や、商業高校等の進学が非常に多く、その後、エンカレッジスクールやチャレンジスクールといったものが台頭し、最近最もよく見かけるのは、通信制高校です。

以下は、通信制高校の生徒数と定時制高校の生徒数がどのように推移したかを別の記事でまとまっていたものになります。

引用元: 年々生徒数が増加する通信制高校が担う新たな役割


定時制高校、特に夜間定時制高校が廃止になってきた背景には、少子化というものもあると思いますが、それ以上に通信制高校の存在が大きいのではないかと、子どもたちの様子を見ると感じています。

場所や時間をあまり選ばず学習できる通信制高校は、定時制高校がこれまで担ってきた役割を代替できるものとして位置づけられてきたように思います。

定時制高校の9割は公立、通信制高校の7割は私立


定時制高校と通信制高校の私の感じる最も大きな違いは、運営が公立が主か、私立が主かという部分なのでは?と感じています。

定時制高校:公立: 95.9%  私立: 4.1%

通信制高校:公立: 30.4%  私立: 69.6%

ただし、私立の通信制高校は生徒数が1000人を超える学校が多く、履修登録している生徒数でいうと、公立23%、私立77%となります。

定時制高校と通信制高校の授業料の違い

授業料等については、

東京都の場合、公立定時制高校は、3万2400円(年間授業料)、2100円(入学料)で、年間約3万円程です。

一方で、通信制高校は、年間25万円~ですが、サポート校といって、自学自習が中心となる通信制高校をサポートするための塾みたいなものに通う割合が高く年間50~100万円程追加でかかります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。
https://www.tsuushinsei-navi.com/tsuushinsei/gakuhi.php

一般的な学校の在り方に合わない子どもたちが通信制高校を選択し、時間や場所等を選ばず、自分のやりたいこと、学びたいこと等に焦点をあてて学習するための通信制高校というのは、公立学校や公的な枠組みですべての子どもたちの細かいニーズにこたえられない状況がある中で、より発展的な選択肢として必要なものだと思います。

一方で、現在不登校やいじめ、塾・習い事なしには学校についていけない等、公的な教育が十分に子どもたちの権利が保障できなくなっている中で、高校進学の段階で十分な学力や習慣、意欲などがはぐくまれておらず、選択できるものが通信制高校や定時制高校しかないというケースが度々見受けられます。

そういった子どもたちほど、サポート校なしに通信制高校を卒業することは難しく、非常に高い学費が必要になる現状があります。

生徒数と教員数の問題

さらに通信制高校のマンモス化というもの問題視されています。
最も有名な通信制高校の一つであるN高等学校は、生徒数が17,000人となっています。それ以外でも生徒数1000人を超える通信制高校は2021年時点で30校以上あります。

2021年5月、高等学校(N高)を運営する角川ドワンゴ学園が亀戸労働基準監督署から労働基準法違反に基づく是正勧告を受けました。その際、教師1人で150人の生徒を担任するなど、過酷な労働実態があったことが明らかになりました。
これを受けて、2023年度以降文部科学省は通信制高校の教員の数を、生徒80人あたり1人以上配置することになりました。

一方、定時制高校は平均在籍者数100人程度となっており、規模間も大きく異なります。定時制高校は、教員1名あたりの生徒数は11~15人程度となっています。

定時制高校は通学を基本としている等、通信制高校に比べると不自由な部分もありますが、通信制高校にもスクーリングがあったり、自学自習が難しい子ども向けにサポート校に通学する等、結局通学的なものがなければ、十分に学習についていくことが難しいといった矛盾があります。

通信制高校がコスパの良い教育ビジネスにならないために

定時制高校がよくて、通信制高校が悪いということではなく、その特徴は大きく異なるものであり、通信制高校はあくまで時間や場所を選ばず、自学自習できる子どもたちのための発展的な学びの場であって、家庭の経済状況や子どもの学力等によらず学びを保障するための場としてはまだまだ程遠いことを知らなければなりません。

通信制高校は、1人の教員あたりの生徒数が多く、オンライン化との組み合わせにより、学校自体が沖縄等の地方に分散してあって(スクーリングのためのサテライト拠点が各地にはあります)、家賃等の固定費もかかりづらいことから、相対的にコスパのよい教育ビジネスになる危険性もはらんでいます。文科省が教員1名あたりの生徒数を決めた法律もまだ施行されたばかりで、子どもの学びではなく、コスパから逆算された、高卒資格を取るための教育ビジネスにならないための制度・仕組みもまだ未熟です。

私たちのもとには、学校にほぼ通わず、レポートがたまっていき、学校や教員からのサポートがほとんど得られないまま、在籍だけをし続けている通信制高校の在学生をたくさんみかけます。

定時制高校と通信制高校は、その設立の趣旨や歴史も大きく異なりますし、単純比較をすることはできないですが、全日制普通高校に行けない子どもたちの選択肢としてこれらが大きな役割を担ってきたことは確かです。

まだ通信制高校をめぐる制度設計が未熟な中で、夜間定時制高校の相次ぐ廃止決定は、実はとても大きな意味を持つのではないかと思い、今回この記事とさせていただきました。


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