【映画レビュー】「アメイジング・スパイダーマン2」(2014年) 〜悲劇のエンディングを迎え、打ち切りとなった不遇の作品〜
「アメイジング・スパイダーマン2」(2014 アメリカ 142分)
監督 マーク・ウェブ
脚本 アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー、ジェフ・ピンクナー
出演 アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン、ジェイミー・フォックス、デイン・デハーン
【あらすじ】
両親失踪の謎を探りながらも、恋人・グウェンと協力しながらスパイダーマンとして街の平和を守り続けるピーター。
だが、前作でのリザード(コナーズ博士)との戦いで、警察官だったグウェンの父親を死なせてしまったことに負い目を感じ続けており、グウェンとは恋人関係でありながらも、どこか彼女に対して距離を置いていた。
オズコープ社のマックスはスパイダーマンに憧れる冴えない研究員だったが事故で、電気を操るエレクトロという怪物となって街を襲い始める。
一方。ピーターの友人であるハリー・オズボーンがオズコープ社に戻ってきた。
ハリーは治療法のない遺伝性の病気を患っており、超人的な力を持つスパイダーマンの血なら自分の病気を治癒できるかもしれないと希望を抱いていたのだが、ピーターは蜘蛛の遺伝子が組み込まれている自分の血を他人に輸血したらどのような危険があるのかわからなかったため、ピーターはスパイダーマンの姿で直接ハリーの願いを拒否。
自分を見捨てたと誤解したハリーは、スパイダーマンを憎むようになる。
更に不運は続く。
互いに距離があったためか、グウェンはピーターになにも言わずにイギリスへの留学を決意。
ピーターとは実質的に別れることに。
両親への疑惑。恋人とのスレ違い。友人の誤解で苦悩するピーター。
彼はあるキッカケで両親失踪の理由を知り、ある決断をするのだが、それが悲劇への引き金になってしまう。
【解説】
新時代のスパイダーマン映画としてスタートしたアメイジング・スパイダーマンだったが、残念ながら本作で終了となる。
理由は、スパイダーマン映画シリーズの権利を持っている「ソニー・ピクチャーズ」の期待する興行成績に本作が届かなかった。
※大ゴケしたわけではなく、本作はそれなりの興行成績を出して健闘したのだがソニー側の期待値が高すぎたのだ。
更に当時、2008年公開の「アイアンマン」から始まったマーベルヒーローたちをクロスオーバーさせて「アベンジャーズ」というチームを結成し、戦う『マーベル・シネマティック・ユニバース(略してMCU)』という企画がマーベルスタジオによってスタート。
「ハルク」「マイティ・ソー」「キャプテン・アメリカ」などの人気マーベルヒーローたちの実写映画作品が次々と公開されて大ヒット。
だが、同じマーベルヒーローであるスパイダーマンはソニー・ピクチャーズが権利を持っていたため、マーベルスタジオが制作のMCUに参加することはできなかった。
そこで興行成績が振るわなかったアメイジングスパイダーマンのシリーズ展開をすべて白紙にしたソニー・ピクチャーズはマーベルスタジオと提携することを決定。
2016年。MCUに新たなスパイダーマン(演:トム・ホランド)を登場させ、アベンジャーズと合流させることとなった。
※詳しくは後日更新予定の『MCU スパイダーマン:ホームカミング』にて。
これより、アメイジングスパイダーマンは2作目で終了。
まさに大人の事情による打ち切りである。
【ここから先は、本作の重大なネタバレが含まれます】
映画の終盤。
スパイダーマンへの逆恨みからハリーがグリーン・ゴブリンとなり、スパイダーマン/ピーターと戦うのだが、それに巻き込まれたグウェンが死んでしまうという衝撃のエンディングが待っている。
私はあまり悲劇的な展開に言葉を失った。
ラスト。
グウェンを失ったショックで、スパイダーマンであることを放棄するピーター。
だが、グリーンゴブリンとなり、様々な仲間を従えるようになったハリーはスパイダーマンへの刺客として巨大な装甲を身につけたライノを街で暴れさせていた。
ライノが街で暴れ回る中、以前、悪ガキ達からいじめられていたところを、スパイダーマンに助けてもらった少年がライノの前に立ち塞がる。
どう考えても、少年がライノと戦えるわけがない。
そこに、ショックから立ち直ったピーターことスパイダーマンがライノと少年の前に現れた。
帰ってきたスパイダーマンは少年に言う。
「代役ありがとう。こいつは僕が引き受けるから、君はママを頼んだ」
そう言って、少年とグータッチする。
ピーター/スパイダーマンは街の人々と目の前の巨大な敵を見てつぶやく。
「やっぱり、僕にはここしかないのか」
戦うしかない自分の運命に嘆いていたのか、前向きに自分の運命を受け入れたのか。
どういう思いだったのか、マスクでピーターの表情はわからなかった。
こうして、映画アメイジング・スパイダーマンは終わる。
不遇の作品となってしまった本作。
一人の青年が両親失踪の謎、恋人との関係、友人からの誤解で苦悩した末に、大切な恋人を失ってしまう。
だが、彼はそれでもヒーローとして戦い続ける道を選んだ。
ライノとの戦いから先は描かれなかったが、アメイジングスパイダーマンは未だに人々と街を守るために戦い続けている。