モーモーパラダイスがタイに来た日
今でこそ様々な日本の有名チェーン店がバンコクに進出しているが、それも2010年前後からのことで、それ以前はそこまで有名店はなかった。そんな中で早めに進出してきたのが、しゃぶしゃぶの食べ放題「モーモーパラダイス」だった。2007年にバンコクに登場したのだが、当時はまだタイ人はあまり牛肉を好んで食べる人が多くなかったので、この店の登場は結構斬新だった印象がある。
それ以前にバンコクでしゃぶしゃぶ専門店といえば、ブラカノンの「秋吉」だけだった。秋吉も今は多店舗展開になっているが、当時はプラカノンの店舗のみ。今でこそ日本人が増えてきたが、あのころにプラカノンなんて秋吉以外に用事のないような場所だった。場所としてはかなり辺鄙であったにも関わらず日本人も多く、最盛期は予約なしではなかなか入れないほどだった。
そこに2007年に切り込んできたのがモーパラだ。日本では1993年から始まったチェーン店だそうで。タイ1号店は確か大火災前の商業施設、ワールドトレードセンター内だったはず(当時もうすでにセントラル・ワールドになっていたかも)。
初めて看板を見かけたときは感動したものだ。あのモーパラが来たのか、みたいな。ボクはタイが長いので、大概のチェーン店は行ったことがなくてピンと来ないところがほとんどだ。でも、モーパラは渋谷で一度だけ行ったことがある。19歳のころだったはずだから1996年ごろかな。
渋谷のモーパラには当時つき合ってた子が連れて行ってくれた。今もそうだが、基本的にボクは日本では余程のことがない限りひとりで飲食店に入らない。海外旅行はむしろひとり旅しかしたことがないくらいなのでひとりは平気なのだが、日本はどうしても入りづらく。
だから、日本の料理屋については本当になにも知らない。当時も、今も。そんなときに彼女が安い食べ放題があるというので行った。彼女は大学は観光学科とかで、観光地とか飲食店に詳しかった。でも、好き嫌いが多いというよくわからんヤツだったけれど。
店で食べ始めてもなお、ボクは落ち着かなかった。当時しゃぶしゃぶとかすき焼きなんて高級料理だと思っていたので、この値段でいくらでも食べられるってウソだろ、と。なんらかの詐欺だと思っていた。なにせ、大都会渋谷だし。今でこそ足立区から電車1本で行けるけれども、当時は2回は乗り換えないと行けない場所だった。行けば絶対に芸能人に会う渋谷なんて大都会でしかなかった。人を騙す悪人の巣窟なので、そんなところでこの値段で? と。
なんかそういう思い出もあって、モーパラに来ると複雑な気分になる。もちろん妻にそんな話をしたことはない。
まあ、そんなにモーパラには行かないけどな。最近はセントラル・バンナーだとか、メガ・バンナーにもできたのでより行きやすいのだが、妻がしゃぶしゃぶはいまいちハマらないみたいで。大戸屋もそうだが、日本人が好む日本の味をおいしいと感じないらしい。
渋谷のモーパラで食べたときは確か半分をしゃぶしゃぶ、途中からすき焼きにした(あるいはその逆かもしれない)と記憶している。それでもプラスいくらかって感じで。でも、いずれにしてもすき焼きは本当にすき焼きだったはず。
タイのモーパラはすき焼きを頼むと、しゃぶしゃぶの鍋に黒いスープが入ったものが来て、それをすき焼きとしている。すき焼き用の割り下で肉を煮るとイメージするとわかりやすい。あれだけ日本的な味なのに、なぜかこれだけ「タイ人だからいいか」的な感じがある。それを真似てか、回転ずしみたいなスタイルの鍋物チェーン店「シャブシ」も最近はすき焼きを始めているが、やっぱり黒いスープなんだよね。あれはなんか理解できないというか、納得いかない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?