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本格イタリアンのチェーン店「スクージー」はなぜタイ人に刺さらないのだろう
なんでもあって便利だと思われるバンコクだけれども、実際になんでも揃うようになったのはここ10年くらいの話だ。ベトナムなどと比較すると圧倒的ではあるけれど、今でもないものはたくさんあるし、そもそもだいたい値段が高い。
そんなバンコクも食に関しては東京に負けないくらいだと思う。和食がその最たるもの。ほかにも中華やインド料理もすごいし、フレンチも一流シェフが常駐している。イタリアンもそうだ。
本格的な高級店もあるし、和食より安い食堂スタイルのイタリアンもある。その中でチェーン店になっているのが「スクージー」だ。でもイマイチ、こうタイ人に刺さっていかない感じがする。なぜなのか。
スクージーは1997年にバンコクで創業したイタリアン・レストランだそうで。ピザを中心にパスタとか、日本人が一般的に想像するイタリアンの典型みたいな店だ。97年創業というのは意外と長い。ボク自身が自分の目で存在を確認していたのは2003年。それよりもずっと前にオープンしているようだ。
ただ、ここはタイらしく、その歴史はよくわからない。97年にどこにオープンしたのか。当初はイタリア人が立ち上げたみたいな感じではあるけれど、それ以外の話が全然見えてこない。しかも、そのころと今では経営母体も違うような感じだし。
日本人に有名だったのはスリウォン店だ。ロシア大使館の近くに店を構え、当時は日系企業はシーロム通りに多かったこともあって、ここが知られていたと思う。その後、トンローだとかにも支店ができ、さらにはバンコクのほとんどの商業施設に入ってたのではないかな。それくらい増えていた。
それが今や公式サイトでは9軒くらいしか残っていない。全然タイ人に相手にされていない感じがする。
チェーンなので一見、店自体は日本のサイゼリアみたいな安っぽい感じがしないでもないが、実際に食べてみると本格的でおいしい。ピザもちゃんと窯で焼いているようだったし、パスタも本物って感じ(本物を知らないけれども)。デザートもティラミスとか当時はどこよりもおいしかった。
思うに、タイ人に注目されなかった理由は時代が追いついていなかったことなのではないかと見ている。先日、タニヤのうどん店の話を書いたが、あれと同じで、時代がまだ追いついていなかった。
まず、タイ人は食に関しては保守的であることが大きい。家でも外でもタイ料理ばかり。タイ料理は調味料を多用するから、その味に舌が慣れていることで、ほかの味を受けつけなくなるのではないか。和食ブームのタイも、タイ人が本格的に和食をおいしいと言い出したのはここ最近だし。
だから、ここの本格的な味に一般タイ人がついてこられなかったのではないか。実際、どの店を見ても客はタイ人より外国人ばかり。タイ人客もほとんどが富裕層に見えた。一般的なタイ人がいなかった。
それから、値段の設定だ。公式サイトで見ると1枚350バーツと、ピザの値段は普通というか、ほかの本格店と比較したらむしろ安いかもしれない。でも、多少の値段の変更はあったにせよ、これくらいの水準だと、15年くらい前においてはとにかく高いという印象になる。入り口で避けられてしまうわけだ。
今だと物の価値というのは金額だけでないという感じにタイ人もなっていると思う。でも、10年前20年前はとにかく値段という数字に価値があった。物がいいから高い、悪いから安い、という道理は今も昔も変わらないけれど、当時はとにかく安いものという一般タイ人が多かった気がする。
たとえばだけど、タトゥーなんかはアートであり、値段の問題ではない。100バーツ払ってひどいものよりは、1000バーツでいいものを入れるべきだ。でも、タイ人は高確率で100バーツを選ぶ。みたいな感じ。
スクージーは自宅近くにもあって、よく行った。同じコンドミニアムに女優も住んでいて(日本で言ったら新垣結衣クラス。今だと)、よくこの店で見かけた。でも、いつもガラガラで、案の定、いつの間にかなくなってしまった。
それ以来もう何年も行っていないけれど、当時はとにかく「ここはいい」と思ったもので。もうちょっと展開を我慢して機会を待ていれば、今、結構な人気になったのじゃないかな。タイミングって難しいな。