華僑報徳善堂の救急救命以外の活動
タイは敬虔な仏教徒が多いからか、誰もが積極的にボランティア活動を行う。徳を積むことで来世がよりよきものになると信じているからだ。タイ企業は欧米企業並みに社会貢献活動も行っているほどで、やらなければならないのではなく、やることが普通なのである。
そんなタイなので、あらゆるものにボランティアがある。一般企業はもちろん、寺院で僧侶の托鉢時に荷物を持ってあげる小さなことから、警察や消防までさまざまある。
その中でも代表的なもののひとつに華僑報徳善堂、通称ポーテクトゥング(以下「報徳堂」)がある。救急救命が有名なのだが、実はほかにも社会貢献を行っている。
報徳堂は1900年代初頭に設立された、華僑がタイ社会に溶け込むことを目的とした慈善団体だ。救急救命が現在の主な活動なのだが、それについては下記で紹介した。
報徳堂は慈善団体という括りにあるため、救急救命活動以外にもあらゆる社会貢献を行う。たとえば、災害時には現地に急行し、救援活動を行う。2004年のプーケットの津波、2011年の北部やアユタヤの洪水災害などに隊員らが派遣され、救援活動のほか、被災者に物資を届けた。
タイ人のすごいところは、報徳堂は慈善団体なので当然にしても、一般市民も自らが現地に赴いて救援活動を行ったり、物資を配布することだ。報徳堂のボランティア隊員たちも自分の収入が減ってでも現地に向かうほど奉仕の精神が高い。さすがに仕事を休めず、現地に行けないという人は報徳堂などに物資を預け、それらを代行して届けることもする。
こういった助け合いの精神がタイにはある。ちなみに、2011年の東日本大震災においても報徳堂のほか、様々な慈善団体が義援金を日本に送っている。
ほかにも報徳堂は貧困者層に救援物資などを配布する。年に2回以上、まずは一般市民から米や物資を寄付してもらうイベントを行う。これらは物資そのものを持ってきてもいいし、報徳堂が用意しているセットを会場で購入することもできる。
ただ、こういったイベントには裏の事情もある。報徳堂などの認可された慈善団体に寄付した際に受け取る領収書は確定申告のときに控除として利用できる。富裕層は金で社会貢献をして、金がない人は肉体奉仕で社会貢献をするのがタイなのだ。
こういった物資調達のイベントが終わると、今度は貧困者層を集めて、現金、米やインスタント麺、服などを配布する。イベント時には炊き出しもあるので、貧困者層は家族で集まってきて食事を楽しみ、家族それぞれが物資を受け取って帰っていく。
やや現実的というか、タイの闇の面もあって、そういったイベントが行われると、会場の裏に裏ビジネスの連中がやってきて、貧困者層が受け取った物資を格安で買い取っていく。それがまたどこかのイベントや問屋などに流れていくのだろう。仕入れ値を安くする方法とはいえ、ここでそれをするかねと、思うわけで。貧困者層もまたインスタント麺や米なんかよりも現金の方がよくて売って行ってしまう。現実主義というかなんなのか。
タイは災害が多い国だ。主に洪水が毎年どこかで大きなトラブルになって市民を襲う。報徳堂はそういった際に現場に駆けつける。また、他県の貧困者層にも物資を配布している。近年は高齢者が多くなったので、車いすやベッドなど寝たきりや歩けない人のための器具を贈ることが多い。
今回のウィルス騒動でも報徳堂は密かに動いている。貧困者層が特に打撃を受けているので、彼らに物資を届けているのだ。これらはあまり報道されないので知られていないが、報徳堂はこういった活動もしているのである。