ビエンチャンでスタミナ丼を喰らう
タイの隣国ラオスはベトナム戦争時にアメリカ軍によるクラスター爆弾などの投下で、実は現在において世界で最も不発弾に汚染されている国となっている。そんな状況を取材するために、2011年から数年間、ラオスに通い続けた。それもいろいろあって取材が一段落してしまったので、最近はベトナム訪問にシフトしているものの、当時ラオスで知り合った人とは今も連絡を取り合っている。
そんなひとりが池田さんという、大阪出身の人だ。ビエンチャンのバックパッカーが集まるエリアで「大阪ハックジャオ」という日本料理店を開いている。ここのスタミナ丼が好きで、ビエンチャンに滞在したら必ず1回は食べて帰る。
もう数年ほどビエンチャンに足を運んでいないので、もしかしたら店の外観は変わっているかもしれない。通っていた当時はこんな感じだった。
池田さんとの出会いは人との繋がりがあってのことだ。2011年、ボクが彩図社「東南アジア 裏の歩き方」の取材をするにあたって事前にラオスで当たりをつけているとき、友人が池田さんの店に連れて行ってくれた。
大阪は、ラオスに和食店がほとんどなかった時代に始まった店だ。ビエンチャンの日本料理店の中では老舗の部類に入る。今でこそ日本の食材がビエンチャン市内でも手に入るが、ボクが初めて池田さんに会ったころはごく普通の調味料さえ手に入りにくく、わざわざタイ国内のスーパーに買い出しに行くほどだった。
そんな環境なので、麺類にしたって、納豆にしたって、池田さんは自分で作っていた。まだ和食ブーム以前のバンコクでさえ、食材に困ることはビエンチャンほどではなかった。ビエンチャンの場合は完全にゼロの環境だったのでなかなか大変だったろうが、今もこの大阪はビエンチャンにしっかりと根を張っている。
この店でいろいろと食べてきたが、ボクの中ではスタミナ丼が一番のお気に入りだ。男の料理的な、シンプルでかつボリューミーで。好きなのは特に温度だ。タイもラオスもみんな猫舌なのか、妙にぬるい料理が多い。しかし、ここのスタミナ丼と、セットについてくるみそ汁は鬼のように熱い。だから好きなのだ。
安くておいしく、居心地もいい。本棚に「美味しんぼ」やカーレースのマンガ「エフ」があったり。このあたりもボクの趣味に合っていてすごくいい。
池田さんはサービス精神旺盛で、いろいろとビエンチャンの情報を教えてくれる。ただ、そういった店主がいて、居心地のいい店でもあるので、ビエンチャン中の変な日本人が集まってくるというデメリットもあるが。バンコクもクセのある日本人が多いが、ビエンチャンはその密度が高いので、やや注意が必要だろう。
かつてはこの近くに日本人経営だったか日本人従業員がいるというゲストハウスがあり、そこの食堂の麻婆丼が結構イケた。しかし、2010年代の早い段階になくなってしまい、今、ビエンチャンの丼物と言えば、この大阪のスタミナ丼だとボクは思う。